011
翌日、廊下を一人で歩いている青葉さんを見つけた。
「ねぇ、青葉さんは玲二と付き合ってるのよね」
「え?」
「見てればわかるわ」
青葉さんは、少し困ったような顔をして笑った。
「だからそんなわけないってー。ないない」
「何の話をしてるんだ?」
玲二がやってくる。口調は弾んでいるが、こちらを見る目は冷たい。
「別に何でもないわ。ただ、あなたのお尻にあるホクロが可愛いって話をしただけよ」
「え?」
青葉さんの驚いた顔だけ見て、そのまま教室に戻った。私らしくないことをしている。
青葉さんを見ていると、なぜか余計な事を言いたくなってしまう。同族嫌悪……かもしれない。
別に彼女のことが嫌いなわけじゃないのに……。
教室へ戻るとすぐ、青葉さんがやってきて隼人君と何か話をしていた。どうせさっきのことだろう。今、隼人君に嫌われると困っちゃうな……。
「静香ぁ! いるかぁー!」
その時、郷矢がやってきた。
「郷矢君、どうしたの?」
「ちょっといいか」
廊下を歩いて、人のいないところまで連れ行かれる。
「玲二から聞いたぞ、男とつき合いだしたんだってな」
「……」
「全くお前は本当に好き者だな」
「……用がそれだけなら帰るけど」
「まぁ、待てよな。そんなお前にぴったりの話だ。……なぁ、稼ぐ気ないか?」
「……どういう意味?」
「俺が客集めてやるからさ、お前がさ……わかるだろ?」
「……へぇ、私に飽きたから今度は金ヅルにしようってわけ」
「ばーか。飽きるわけないだろ」
汚い手で体に触れてくる。
「そんなにお金が欲しいなら自分一人で男の相手でもすればいいじゃない。あなたでも需要あるわよ」
「そんなこと言うなよ。俺のためだと思ってさ」
「なんであんたのために、やんなきゃいけないのよ。私は玲二の恋人であなたはその友達だった。それだけでしょ」
「玲二より俺の方が好きだろ? 体は正直だからわかるんだよ。それに、あいつの本命が青葉だって知ってるくせに」
「……」
「あいつ、出し惜しみして青葉の方は呼ばねぇんだよな。ま、お前と顔会わせたら不味いって考えてんだろうけど。……もちろん、俺はお前にしか興味ないから安心しろよ」
「……とにかく嫌よ」
「実はもう客とってあんだよ」
「あんた……何言ってんの?」
「駅に待ち合わせの予定だからさ。頼むよ。商売って最初が肝心だろ」
「嫌だって……」
「仕方ねぇなぁ……」
「……」
「じゃあ、あの時のDVDにして売るしかないよな。金稼ぐには」
「……やっぱり撮ってたんだ。男って本当に馬鹿」
「これで行く理由ができたろ。女って面倒臭いよな」
「……」
「俺がいいって言ってんだから、俺に気にせず稼いで来いって。わかったな」
「……」
郷矢のおかげでクラスの子達が騒いでいた。全くいい迷惑。でも、隼人君がちょっと心配そうな顔しているのが可愛かった。
もちろん、私は郷矢の命令には従わなかった。今は隼人君と信頼関係を築く方が大事なことだ。




