005
それからしばらくは人の目が気になった。廊下を歩いていると視線と冷笑を感じる。
気のせい……というわけでもないようだった。確実に私の動画は広まっているのだろう。
「よぉ、色々大変みたいだな」
話しかけてきたのは郷矢巻勝だ。私の嫌いな男の一人……。
「別に……」
「まぁいいや。それより随分ご無沙汰じゃないか。そっちから会いに来てくれると思ってたけどな」
「……」
「こっちは心配してたんだぜ。体調は戻ってきたんだろう……そろそろいいよな」
「やめて、こんなところで」
「わりぃわりぃ……じゃあ、週末楽しみにしてるぜ」
また、学校での居場所が無くなってくる。だからといって家にいるのも嫌だ。
特に夜のベッドは嫌いだ。
世界に一人だけ取り残された気分になる。かつての自分が今の自分を責め立てるように、己の醜い姿を脳裏に映し出す。思い出したくない過去を暴いて私をあざ笑う。
今がまさにそれだ。
天井を見上げると、これまでの自分のしてきた愚かしい行為ばかりが浮かんでくる。
音の聞こえない部屋に閉じこもっていると、息苦しさの中で体が疼く。
締め付けられる心の渇きを癒すように、手が止まらない。
こぼれ落ちる滴を掬うように舌を突き立て延ばしても、唇をなめても渇きは癒えない。
両手の指先で体中をなぞり続ける。頭からふくらはぎまで何度も往復した。
ベッドのシーツを足でかき乱す。
自分の息苦しい呼吸だけが、部屋で鼓動する。
「もぅ…死にたい……」
何度この言葉を吐き出しただろう。でも死ねない。まだ死ねない。あいつらのために死んでやるなんてできない……。




