003
放課後、帰ろうとする私を黒岩玲二が呼び止めた。
「よぉ、彼氏に挨拶は無しか。病気治ったみたいだな」
「まだ治ったわけじゃないわ……」
「どうせ仮病だろ。でも、ようやく引きこもりから脱出できたみたいで良かったよ」
「……一応、心配してくれてたのかしら?」
「そりゃあ、彼氏として当然だろ」
この男の、にやついた顔を嫌いになったのはいつからだろう。
「私が学校を休み始める前には、別の女の子と付き合ってたみたいだったけど?」
「なんだよ、まさかそれがショックで休んだわけじゃないだろうな。そんな可愛げないもんな、お前には」
「こっちは体調悪くてそれどころじゃないわよ……」
「お前が相手をしないのが悪いんだろ。まさか、俺がいけないって言うのかよ」
「……もう、帰っていい? 私、疲れてるの」
「こっちもこれからデートなんだ。続きはまたな。あとで俺にメール送れよ。お前アドレス変えてたろ」
「変えたんじゃなくて、解約してたの。使わないから」
「とにかく、言うこと聞けよ」
玲二はそう言い残して、どこかへ行ってしまった。まだ、体が本調子でないのか頭が痛い。
貧血で倒れそう……。
「静香ちゃん大丈夫?」
壁によりかかっていると、綾先さんが駆け寄ってきた。
「ちょっと……疲れちゃって」
「保健室で休んでから帰ったら?」
「うん……そうする……」
綾先さんは、保健室まで付き添ってくれた。
「ねぇ、さっき……黒岩君と話しをしてたよね? 仲いいの?」
「別に……去年は同じクラスだったから、それだけ」
「ふ~ん、そうなんだー」
結局、その後私は汐竹先生に車で家まで送ってもらうことになった。
「久しぶりの登校だもん。疲れちゃっても仕方がないわ」
車を運転しながら先生が話しかける。
「すみません……ご迷惑をおかけして」
「そんな迷惑なはずがないじゃない。明日は午前中だけとかでもいいのよ。午後の教科の先生には、私から言っておくから」
「……大丈夫です。すぐ慣れます。……今日、家に寄っていきませんか? 父も早く帰ると言っていました。一緒に夕食でもどうです?」
「……う~ん、さすがに今日は邪魔しちゃ悪いから、また今度にするわ」
「……私、先生のこと応援してますから」
「……ありがと」
興味がない、というのが正確かもしれない。それでも汐竹先生のことは嫌いではなかった。




