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子供の頃、両親の喧嘩を何度か盗み聞きしたことがある。
「どうせ、俺の子じゃないんだろ!」
父が母を罵倒していた。
「だから何度も言ってるじゃない。別の血液型になることが稀にあるんだって」
喧嘩をする度にこの話題で怒鳴りあっていたことが、私をひどく傷つけた。
小学生だったある日、父が病気の検査だといって綿棒のようなもので、口の中を拭ったことがあった。それがDNA鑑定のためだと、何となくわかっていたように思う。
その後、この話題が出なくなり、私は父の子だと確定したのだと思ったし、事実、検査結果はそのようだった。
しかし、高校生になってから知ったのは、DNA鑑定が親子鑑定については不完全なものだということ。
子供は母親の細胞から分裂して生まれる以上、核DNAを除く97%が母から受け継いだもの。だから母との親子関係は問題にならないが、父はそうではない。
本人かどうかなら、一致するかで調べればわかることだが、父親の子かは、結局のところDNAを比べて似てるか似てないかで判断するだけだ。
遺伝法則に明らかに合致しないということはあり得るから、父と親子関係にないということを証明することはできる。
しかし、親子関係にあるということを証明することは不可能だ。医療機関によっては、99%の確率で父親であるという肯定確率計算で鑑定結果を出すところもあるが、それを不正確と嫌う専門家も多いらしい。
例えば、父親に兄弟がいた場合、兄と弟どちらの子かは、それぞれと比較検討して、より似ている方と判断するしかない。
幸い、父に兄弟はいなかった。
しかし、不幸にも、父親の父、つまり私の祖父が母親との間に産んだ子が私だとしたら、血液型の違いも説明がつく。
そのとき、私は父が父ではなく兄だという確信を持った。
もしそうなら、母は、私が祖父との子だと気づいていただろう。一体どんな気持ちで育ててくれたのだろうか。今は母の気持ちが気になって仕方がない。
真相は母が死んだ今わからないが、だからこそ私は父が……いや兄が他の女性とどうつき合おうと興味が無かったのかもしれないし、汚れた私は汚れて当然だと思っていたのかもしれない。
私の様子を確認しにきた、担任の汐竹先生が父のベッドに寄ってから帰宅するとき、そんなことを考えていた。




