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僕らの死亡遊戯  作者: 神話project
第一章 上守隼人~最後の犠牲者~
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 自分の部屋で硫化水素を発生させて自殺した、という内容だった。当然、僕のところへも警察が来たが、僕が彼の家を訪れた時間と自殺の推定時刻とが全くあわないことから、単純にその日の様子を伝えただけだった。

 彼が突然理由も無しに謝罪をしていたことを伝えると、警察も妙に納得しているようだった。


 それから、僕は恭と話をすることはなかった。学校でも彼はいつも通り一人で席に座っているだけだったが、僕の方から話しかけることは全くなくなった。彼は完全に孤独になったはずだが、それでも相変わらずどこか楽しそうにしていた。

 それは全く僕の主観にすぎないことかもしれないが。


 その後、一部週刊誌では、犯人の自殺で事件が解決したと報じた。玲二のパソコンから様々な犯行の証拠が見つかったと。

 刑事に質問を受けた者も多かったらしく、校内でも郷矢巻勝と黒岩玲二の二人が犯人らしいという噂になっていた。


 栞は、かなり落ち込んでいたが、それでもよく僕の方に会いに来た。恋人を失ったもの同士という仲間意識なのか、共通の幼なじみを失ったからか、僕と一緒にいたいと思ったからか、他の理由かそれは全くわからなかったが、僕の前では弱音を吐くわけでもなく、明るくふるまおうとしていたように思う。


 しかし、僕の精神自体はもう限界だった。色々と耐えられない状況に陥っていた。最後に「殺される」のは僕だと僕自身が知っていたからだ。

 僕は確実に「殺される」。そして、死に怯えつつも、どこかでそれに安堵を覚える自分がいる。

 この逃れ得ぬ苦しみから、救ってもらえるという思いとは裏腹に、本当は死ぬまでやっておきたいことがたくさんある。くだらないと思えるようなことさえ、しておかないともったいない気がする。身辺も整理したい。どうせ死ぬなら、わけもわかならないようなことをしても、そう、例えば死ぬ日がわかっているなら、その前日に栞に何をしてもよかったかもしれない。

 でも、そんなことは決して許されない。もはや僕に何の決定権もなく、ただ、死を待つだけだ。これはそういうルールなのだから。


「上守君、大丈夫なわけはないと思うけど。自分の中でため込んでたらダメよ。少しずつでも言葉にして出さなきゃ」

「はい……」

 汐竹先生にも心配されてしまった。これではダメだ。できるだけ平常通りにしないと、いや、恋人と親友を失ったんだから、これでいいのだろうか。

「よしよし」

 汐竹先生は僕を抱きしめてくれた。そしてやさしく頭をなでてくれた。僕は涙が止まらなかった。馬鹿みたいに泣いてしまった。これは僕にとっての旅立ちの儀式だ。

 僕は死を受け入れるにつれて物事への執着を失っていった……。


 そして、とうとうその日がやってきた。今に至るというわけだ。

 日は遙か前に落ち、鬱蒼と茂った森の中で月だけが見える。

 いつのまにか虫は鳴き止み、風が葉の擦る音と土臭い泥の臭いを運んでくるだけだ。

 死が僕に問う、死を受け入れるかと。そして僕は答える、それが運命ならば。


 不思議と落ち着いてきた。直前までの焦りが嘘のようだ。

 死がその残酷な鎌を下ろして、再び僕に甘美な夢を見せてくれる。

 僕はゆっくりと地面に腰をおろし、空を見上げた。地面を這う虫も、顔に触れる草も何もかもが気にならない。

 今、気になることがあるとすれば、静香さんの顔の行方だろうか。しかし、犯人が死んでしまった以上、誰にも見つけることはできない。それに、静香さんもそれを望んでいない気がする。

 僕は独り言を呟くように、また何かを話した。それも今となっては些細なことだろう。ゆっくりと目を閉じ、深い眠りへと誘われていった……。

 これから僕は死者となる。



次回から、白倉静香編です。

本作は、いわゆる「推理物」ではないのですが、事件の裏側に入っていきます。かなり駆け足になっていますが、ご容赦下さい。。

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