011
クラスでは、特に報告することでもなく、黙っていることにした。その代わり、いつも通りクラスでは特に接点がない。結局、白倉さんと話ができるのは、登下校中だけになる。
「あ、きたきた。おっそーい!」
栞が下駄箱の前で手を振っている。横には白倉さんと玲二がいた。二人きりになれる時間は今のところなさそうだ……。
「もしかして、私達お邪魔虫?」
「気づいて頂けたようで幸いです」
栞がいつもの調子で、僕に攻撃を仕掛けてくる。
その様子に白倉さんが笑っていた。
「二人とも仲がいいのね」
「一応、幼なじみだからね」
「へぇー、じゃあ隼人君の小さいころ知ってるんだ」
「もちろん色々知ってるわよ! あのね、隼人は小学二年生のときにね!」
「わぁー! わぁー!」
僕は逃げ回る栞を必死に追いかける。捕まえようとした弾みに、抱きつくような形で……胸を鷲掴みしてしまった……。
「!? ちょ、ちょっと! 隼人!?」
殴られると思ったが、栞は恥ずかしそうに着崩れを直しながら服のシワを延ばす。
「彼女の前で何やってんのよ、もぅ!」
「ご、ごめん」
慌てて白倉さんの方を見ると、口を手で押さえて笑いを堪えているようだった。
「仲がいいのね。ちょっと、うらやましいな」
「誤解しないでね」
栞は、何だか白倉さんに申し訳なさそうにしていた。
「……うん、わかってる」
そうこうしている内に白倉さんは、家の方向が違うのですぐ別れることになってしまった。
それまで、どの辺に住んでいるのかすら知らなかったことが恥ずかしい。朝もわざわざ遠回りをして来てくれていたようだ……。
「ねぇ、隼人君……」
別れ際に白倉さんが耳打ちする。
「え? 何?」
「お別れのキスは?」
「!?」
「は・や・く」
「ふ、二人がいるんだから無理だよ」
二人がいなくても僕には無理だ。
「ちょ、ちょっと。そーいうことは私達のいないところでしてよ。もぅ!」
栞が感づいて抗議の声を上げ時、僕は白倉さんからキスされた。
「隼人君、また明日!」
そのまま白倉さんは帰っていった……。
「もぅ……隼人のえっち」
栞は不満そうにボヤいた。
「べ、別に僕は何もしてないよ」
「はぁー、女の子のせいにするなんてサイテーよ……」
「しっかし、積極的なんだな白倉さんは」
白倉さんの前ではほとんど口を聞かなかった玲二が、ようやく口を開いた。
「そうね。なんか意外な感じ。……白倉さん、隼人にキスする時なんて私のこと見ながらだったよ」
「え?」
僕は思わず声を出してしまった。
「やっぱ、私のこと警戒されちゃってるのかなぁ」
「自意識過剰ー」
「そうかなぁ……」
からかう玲二に対して、栞は本当に心配しているようだった。




