第95話 二つを見る
二十五階層のポータルを登録してから、五人の探索はまた少し変わった。
次の目標は三十階層。
ただし。
そこにいるのはオーガ二体。
それを知ってから、レインは移動中も何度か同じことを確認していた。
「一体に全員集まらないこと」
シリウスが答える。
「分かってる」
「分かってても、今までずっと一体を五人で見てきたからね」
アルスも頷いた。
確かに。
強い相手が出れば。
自然に全員の視線がそこへ集まる。
でも。
三十階層では。
それをやれば。
もう一体が自由になる。
二十五階層までポータルで移動。
そこから先。
二十六階層。
最初の戦闘。
ゴブリン四体。
強くはない。
でも。
レインが言った。
「二つに分けよう」
シリウスがすぐ反応する。
「二対三?」
「うん。僕とアイリス。アル、シリ、リリア」
アルスが少し驚く。
「僕とシリで前?」
「試してみたい」
戦闘開始。
レイン側。
ゴブリン二体。
アルス側。
二体。
今までなら。
全体を見ながら互いに助ける。
今日は。
あえて。
少し距離を取る。
アルスが一体を止める。
シリウスがもう一体。
リリアが二人へ補助。
一方。
レイン。
正面。
アイリス。
後方。
火球。
一体。
レインが残り一体。
短い。
両方。
ほぼ同時。
終了。
シリウスが言う。
「普通にいけたな」
レインも。
「相手が弱かったからね。でも、形としては悪くない」
アルスは少し考える。
三人。
二人。
五人が分かれる。
不安はある。
でも。
できないわけではない。
二十七階層。
ここではウルフ系魔物が六体。
今度は。
三と三。
レイン、アイリス、リリア。
アルス、シリウス。
「え、俺達二人?」
シリウスが言う。
アルスも少し笑った。
「やってみよう」
レインが言う。
「無理ならすぐ合流」
戦闘。
アルスとシリウス。
三体。
一人一体。
残り一体。
交互に見る。
シリウスが一匹を引く。
アルスが一匹を止める。
三匹目。
行き先を変える。
シリウス側。
「一匹増えた!」
アルスがすぐ動く。
自分の相手を追いすぎない。
牽制。
距離を作る。
シリウスのところへ。
三匹。
固まる。
逆に。
見やすい。
「まとめる!」
アルスが声を出す。
シリウスが横へ。
二人で位置を変えながら。
一匹ずつ。
数を減らす。
少し時間は掛かった。
でも。
怪我なし。
一方。
レイン側。
三体。
アイリスが数を減らし。
リリアが支援。
こちらも終了。
合流。
シリウスが息を吐く。
「二人でもなんとかなるな」
レインが答える。
「でも、さっき三匹全部シリ側に行った時危なかった」
「見てた?」
「見てた」
アルスが聞く。
「自分の戦闘しながら?」
「全部は見えてない。でも声と位置は意識してた」
そこだった。
分かれる。
でも。
完全に別々ではない。
二つの戦場。
同時に。
見る。
二十八階層。
罠。
増える。
シリウスが前。
床。
壁。
天井。
途中。
分岐。
右。
魔物。
左。
魔物。
両方。
シリウスが言う。
「どっち行く?」
アルスが魔素を見る。
右。
三。
左。
二。
レインは少し考える。
「両方、こっちに来る可能性ある?」
「音出したらあるかも」
そこで。
レインが止まる。
「じゃあ、わざと両方を動かしてみよう」
シリウスが見る。
「訓練?」
「三十階層の」
全員。
少し緊張する。
まず。
右。
シリウスが音。
反応。
来る。
左。
アルスが壁を叩く。
こちらも。
来る。
五人。
中央。
左右。
二方向。
レインが言う。
「分ける!」
右。
レイン。
リリア。
左。
アルス。
シリウス。
アイリス。
今までと違う。
アイリスがアルス側。
リリアがレイン側。
支援役と攻撃役。
分散。
右。
三体。
レイン。
前。
リリア。
補助。
攻撃手が少ない。
時間。
掛かる。
でも。
耐える。
左。
二体。
アルス。
シリウス。
アイリス。
速い。
一体。
火球。
もう一体。
アルスとシリウス。
終了。
「終わった!」
アルスが叫ぶ。
すぐ。
右へ。
合流。
レイン。
まだ戦闘中。
三体。
一体。
負傷。
二体。
動ける。
アルスたちが加わる。
すぐ終了。
全員。
息を整える。
レインが言う。
「今の、僕の方が遅かったね」
リリアが答える。
「攻撃役が一人でしたから」
アイリスが言う。
「分け方も考えないといけませんね」
シリウスも頷く。
「人数だけ同じじゃ意味ないな」
アルスは記録する。
二人と三人。
ではない。
攻撃。
支援。
索敵。
足止め。
それぞれ。
何が必要か。
相手によって違う。
二十九階層。
ここへ来る頃には。
疲労。
それなり。
でも。
まだ余裕はある。
そして。
ここで。
今までと違う反応。
前。
二体。
両方。
大きい。
アルスが止まる。
「大きいの二つ」
レインがすぐ見る。
「同じくらい?」
「たぶん」
シリウスが笑う。
「練習問題きたな」
アイリスが言う。
「笑ってる場合ですか?」
「でも三十階層の前なら、ちょうどいいだろ」
姿。
見える。
大型ゴブリン。
二体。
どちらも武器持ち。
オーガほどではない。
でも。
一体ずつなら。
今まで何度も倒した。
二体同時。
それが。
今日の意味。
レインが言う。
「分けよう」
一体。
レイン。
リリア。
もう一体。
アルス。
シリウス。
アイリス。
でも。
完全に離れない。
互いが見える距離。
戦闘。
開始。
大型ゴブリン一体。
レインへ。
重い一撃。
レイン。
避ける。
リリア。
補助。
もう一体。
アルス。
正面。
シリウス。
横。
アイリス。
射線。
アルス側。
攻撃。
速い。
でも。
レイン側。
少し押される。
アルスが気付く。
助けに行く?
一瞬。
そう思う。
でも。
自分の前。
まだ一体。
ここを放置したら。
今度は。
こっちが崩れる。
「先にこっち倒す!」
シリウスも。
「分かった!」
アイリス。
火球。
大型の肩。
アルス。
脚。
シリウス。
背後。
一気に。
崩す。
一体。
倒れる。
「終わり!」
三人。
レイン側へ。
その瞬間。
レインも大型の腕へ一撃。
体勢。
崩れる。
合流。
五対一。
終了。
静かになる。
シリウスが床へ座る。
「今、途中で助けに行きそうになった」
アルスも笑う。
「僕も」
レインが言う。
「来なくてよかった」
アルスが見る。
「大丈夫だった?」
「押されてたけど、耐えられた。リリアもいたし」
リリアが頷く。
「倒す必要はありませんでしたから。時間を作るだけなら」
そこで。
全員。
少し止まった。
倒す必要はない。
一体を。
止める。
もう一体を。
先に倒す。
三十階層。
二体。
同時。
全部を同時に倒す必要はない。
シリウスがゆっくり立つ。
「これじゃない?」
レインも気付いている。
「一体を引き付ける」
アルスが続ける。
「もう一体を四人で倒す」
アイリス。
「一体倒せば、その後は五対一」
リリア。
「引き付ける一人が耐えられれば」
全員の視線。
シリウス。
「え?」
少し沈黙。
レインが言う。
「シリが一番向いてるかもしれない」
「俺?」
「速い。避けられる。相手を引っ張れる」
アルスも頷く。
「倒さなくていい。攻撃しなくてもいい。とにかく一体を離しておく」
シリウスが少し考える。
それから。
笑った。
「面白そう」
アイリスが呆れる。
「危険なんですよ」
「分かってる。でも、役割は分かった」
三十階層。
あと。
一つ。
でも。
今日は行かない。
二十九階層。
大型二体。
それだけで。
十分だった。
五人は二十五階層のポータルへ戻る。
ギルド。
ミーニャ。
一、二、三、四、五。
「おかえりにゃ」
レインが報告する。
「二十九階層まで。大型ゴブリン二体を同時に倒しました」
ミーニャの耳が少し動く。
「三十は?」
シリウスが答える。
「今日は行ってません」
「良いにゃ」
ボルドも奥から現れた。
「二体、どうだった?」
レインが答える。
「分ければ戦えました」
ボルドが頷く。
「で?」
レインはシリウスを見る。
シリウスも分かっていた。
「三十階層では、俺が一体を引き付けます」
ボルドは少しだけ目を細める。
「倒すのか?」
シリウスが首を振る。
「倒しません。逃げます」
一瞬。
ボルドが笑った。
「それでいい」
シリウスも笑う。
逃げる。
戦わない。
でも。
それが。
一番重要な役割になる。
五人は。
ようやく。
三十階層の二体へ。
挑む形を。
見つけ始めていた。




