第91話 誰を中心にするか
次の探索では、十五階層を越えることが最初から目標になっていた。
王都冒険者ギルドで入場予定を登録すると、ミーニャが五人を見る。
「今日は十六階層から先を見るつもりかにゃ?」
レインが頷く。
「はい。ただ、前回みたいに相性が悪い相手がいたら無理はしません」
シリウスが横から言う。
「もうそれ毎回言わなくても分かってます」
ミーニャが笑う。
「分かってても確認するのが受付にゃ」
五人は初心者ダンジョンへ向かう。
一階層。
二階層。
三階層。
進む速度は、最初の頃とは比べものにならない。
それでも、確認は減っていない。
必要なところだけ止まる。
それができるようになった。
十階層を越え、十五階層へ。
前回アーマービートルと戦った場所。
今日は何もいない。
シリウスが外殻の破片を探すように床を見る。
「本当に毎回変わるな」
アルスも魔素を見る。
「同じ場所に同じ敵がいるわけじゃないね」
レインが言う。
「だから前回の答えをそのまま持ってこない方がいい」
その言葉に、アルスは少し笑った。
研究と同じだ。
前回うまくいった。
だから。
今回も。
とは限らない。
十六階層。
ここから先は、五人にとって初めて。
通路は広い。
でも。
床に細い溝が多い。
シリウスがしゃがむ。
「これ何だ?」
アルスも見る。
人工的ではない。
魔素の流れ。
少し強い。
「魔素が流れてる」
レインが聞く。
「危険?」
「分からない」
分からないなら。
触らない。
跨ぐ。
観察する。
それだけ。
少し進む。
前方。
小型反応。
四つ。
シリウスが先に壁際へ寄る。
「見てくる」
レインが止めない。
それも。
変わった。
最初なら。
五人で近付いていた。
今は。
シリウス。
斥候。
それを。
ちゃんと使う。
シリウスは足音を抑え、先へ。
戻る。
「ゴブリン四。あと一匹だけ弓持ってる」
レインが少し考える。
「射手がいるのか」
アイリスが言う。
「なら、私が先に狙えます」
アルスも頷く。
「近付く前に数を減らした方がいい」
レインがすぐ決める。
「今回はアイリス中心でいこう」
シリウスが見る。
「中心?」
「前に出るって意味じゃないよ。最初の攻撃をアイリスに任せる」
五人は位置を変える。
レインとアルスが前。
でも。
戦闘開始を決めるのは。
アイリス。
射線。
距離。
角度。
全部。
アイリスが見る。
「もう少し右へ」
レイン。
移動。
「アルスさん、少し下がってください」
アルス。
一歩。
「シリウスさん、左側へ」
「了解」
アイリスが杖を構える。
火球。
小さい。
でも。
速い。
弓を持ったゴブリン。
直撃。
倒れる。
残り三。
気付く。
走ってくる。
そこから。
レイン。
前。
アルス。
左。
シリウス。
右。
短い戦闘。
終了。
アイリスが杖を下ろす。
シリウスが言う。
「今の楽だったな」
レインも頷く。
「最初の一体を倒せたからね」
アルスはアイリスを見る。
「射手がいるなら、最初からアイリスを中心に考えた方がいいかも」
アイリスが少し照れたように言う。
「毎回できるとは限りませんけど」
「それでいい」
毎回。
ではない。
その場。
そこが大事。
十七階層。
今度は逆。
狭い。
曲がる。
視界。
短い。
アイリスの射線。
作りにくい。
シリウスが笑う。
「今度は俺の場所だな」
レインも。
「そうだね」
前。
シリウス。
その後ろ。
レイン。
アルス。
リリア。
アイリス。
アイリスが言う。
「最後ですか?」
シリウスが振り返る。
「撃てないなら安全な方がいいだろ」
「それはそうですけど」
少し不満そう。
でも。
役割として。
正しい。
曲がり角。
シリウスが先に覗く。
一匹。
近い。
すぐ戻る。
「いる」
レイン。
「何?」
「リザード系。一匹」
アルスが魔素を見る。
普通。
でも。
狭い。
「シリウスが引いて」
「任せろ」
シリウスが前へ。
魔物に気付かせる。
すぐ戻る。
追ってくる。
曲がる。
その瞬間。
レイン。
正面。
アルス。
横。
短い。
終了。
シリウスが言う。
「こういうの楽しいな」
アイリスが後ろから言う。
「私、何もしていません」
「さっき活躍したからいいだろ」
「それとこれとは別です」
リリアが笑う。
十八階層。
今度は。
少し広い。
でも。
敵。
いない。
代わりに。
床。
段差。
穴。
浅い。
でも。
足を取られる。
リリアが言う。
「ここ、戦闘になったら危ないですね」
レインが周囲を見る。
「足元優先で進もう」
アルスも同意する。
戦闘。
しない。
ただ。
歩く。
それだけでも。
疲れる。
十九階層。
ここで。
初めて。
魔素反応。
六。
シリウスが言う。
「多いな」
アルスが見る。
「全部小さい」
レインが聞く。
「固まってる?」
「散ってる」
それが。
逆に。
面倒。
どこから来るか。
分かりにくい。
リリアが言う。
「補助を先にかけます」
レインが見る。
「まだ戦ってないよ?」
「だからです。複数方向から来るなら、最初に全員へ入れておいた方がいいですわ」
今度は。
リリア中心。
五人。
近くへ寄る。
リリア。
補助。
身体。
軽い。
感覚。
鋭くなる。
「行きますわ」
進む。
反応。
一つ。
右。
一つ。
左。
二つ。
前。
残り。
後ろ。
シリウスが言う。
「囲まれる」
レイン。
「壁際!」
全員。
片側へ寄る。
背中。
壁。
方向。
減る。
魔物。
小型ウルフ。
六。
来る。
レイン。
前。
アルス。
左。
シリウス。
右。
アイリス。
後方。
リリア。
中央。
補助。
維持。
ウルフ。
一匹。
速い。
レイン。
止める。
二匹。
アルス。
一匹。
シリウス。
一匹。
アイリス。
火球。
最後。
回り込もうとする。
でも。
壁。
後ろ。
ない。
結果。
正面へ集まる。
五人。
押されない。
リリアの補助がある。
動き。
少し速い。
アイリスの火球。
当たる。
シリウス。
一匹。
レイン。
一匹。
アルス。
一匹。
少しずつ。
数が減る。
終了。
全員。
息を吐く。
レインが言う。
「リリア、先に補助入れて正解だった」
リリアが少し笑う。
「六体と分かっていましたから」
シリウスが言う。
「今日、みんな中心になってるな」
アルスが気付く。
確かに。
十六階層。
アイリス。
十七。
シリウス。
十九。
リリア。
レイン。
アルス。
いつも。
固定ではない。
誰を中心にするか。
状況で。
変わる。
「パーティーってこういうことなのかも」
アルスが言う。
レインが聞く。
「どういうこと?」
「五人が同じことをするんじゃなくて、その時一番合ってる人を五人で使う」
シリウスが笑う。
「俺達を道具みたいに言うなよ」
「違う違う」
アイリスも少し笑う。
二十階層。
階段。
到達。
五人。
止まる。
時間。
少し余裕。
水。
十分。
怪我。
なし。
魔力。
リリア。
少し使用。
アイリス。
中程度。
疲労。
そこそこ。
レインが聞く。
「見る?」
シリウスが言う。
「入口だけ」
アルスも頷く。
二十階層。
下りる。
広い。
かなり。
今までと。
少し雰囲気が違う。
床。
平ら。
壁。
遠い。
そして。
正面。
大きな扉。
シリウスが言う。
「扉?」
レインが止まる。
「近付かない」
アルスも。
すぐ分かった。
普通の通路。
ではない。
明らかに。
何かある。
魔素。
扉の向こう。
大きい。
一つ。
かなり。
今までより。
強い。
アルスが言う。
「いる」
アイリスが聞く。
「どれくらい?」
「今までで一番大きいかも」
沈黙。
シリウス。
扉を見る。
「ボス?」
資料。
初心者ダンジョン。
階層。
節目。
アルスも。
可能性は高いと思う。
でも。
まだ。
分からない。
レインが言う。
「今日はここまで」
シリウス。
即答。
「うん」
誰も。
扉へ行かない。
二十階層。
大扉。
その向こう。
大きな反応。
記録。
戻る。
帰路。
十九。
十八。
十七。
今度は。
自分たちが得意な場所も。
苦手な場所も。
少し分かる。
それだけで。
帰りは。
また速い。
ギルド。
ミーニャ。
一。
二。
三。
四。
五。
「おかえりにゃ」
報告。
二十階層。
大扉。
大きな魔素反応。
未確認。
ミーニャが少しだけ表情を変える。
「二十まで行ったにゃ?」
レインが頷く。
「はい」
「扉は開けてないにゃ?」
シリウスが答える。
「開けてません」
ミーニャがほっとしたように息を吐く。
「それでいいにゃ」
アルスが聞く。
「何がいるんですか?」
ミーニャは少し考える。
「それは、自分達で確かめるにゃ」
シリウスが笑う。
「やっぱり教えてくれない」
「でも」
ミーニャは五人を見る。
「開けるなら、準備してからにゃ」
その言い方で。
分かる。
普通ではない。
二十階層。
最初の大きな節目。
次。
五人は。
初めて。
明確に。
扉の向こうにいる何かへ。
挑むことになる。




