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第88話 昨日見なかったもの

三回目の初心者ダンジョン探索。


五人は前回とほぼ同じ時間に王都冒険者ギルドへ集まった。


ミーニャは冒険者証を確認しながら言う。

「今日は十階層の奥を見るつもりかにゃ?」


レインが頷く。

「はい。前回、大きめの反応があった場所です」


「準備は?」


アルスが答える。

「前回より水を少し増やしました。食料は同じです。予備魔石も問題ありません」


シリウスが言う。

「あと今日はちゃんと戦うつもりです」


ミーニャが笑う。

「戦う前提で行くんじゃなくて、必要なら戦うにゃ」


「分かってます」


前回より。


少しだけ。


返事が早かった。


ダンジョンへ入る。


一階層。


二。


三。


五階層までは、もうかなり流れができている。


止まるところ。


確認するところ。


速度を落とす場所。


隊列を変える場所。


全員が同じ説明をしなくても、自然に動けるようになっていた。


六階層。


狭い通路。


一列。


七階層。


広い場所。


横へ広がる。


八階層。


分岐。


今日は中央に反応が少ない。


前回とは違う。


シリウスが言う。

「やっぱ毎回違うな」


アルスも頷く。

「地図は道を見るもの。敵の位置までは信用しすぎない方がいいね」


九階層。


短い戦闘。


ゴブリン二体。


終了。


十階層へ下りる。


前回。


ここで止まった。


アルスはすぐに魔素を探る。


「いる」


レインが聞く。

「同じ場所?」


「近い」


大きめの反応。


一つ。


その周囲。


小さい反応。


三つ。


前回より。


増えている。


シリウスが言う。

「昨日見に行ってたら、一匹だった?」


「分からない」


アルスは首を振る。


前回。


本当に一匹だったのか。


見えていなかっただけか。


今日増えたのか。


そこまでは分からない。


でも。


今。


四つ。


それだけを使う。


レインが言う。

「まず見える位置まで行こう」


五人はゆっくり進む。


曲がり角。


広い部屋。


その入口から中を見る。


大型ゴブリン。


一体。


そして。


通常のゴブリン。


三体。


シリウスが小さく言う。

「四対五か」


アルスは魔素を見る。


大型。


強い。


でも。


変異種のような乱れはない。


普通の範囲。


それだけで。


かなり安心できる。


レインが聞く。

「どうする?」


全員。


一度。


部屋を見る。


広い。


退路。


ある。


敵。


四。


自分たち。


五。


怪我なし。


疲労。


軽い。


時間。


十分。


戦える。


「やろう」


アルスが言った。


レインが頷く。


「役割は?」


シリウスが先に答える。

「俺は右の一匹を引く」


アイリスが続ける。

「私は数を減らします」


リリア。

「補助と回復を優先します」


アルス。

「僕は大型の動きを見ながら、レインの横」


レイン。

「じゃあ僕が大型を止める」


決まる。


入る。


ゴブリンがこちらに気付く。


一匹。


二匹。


声を上げる。


大型も振り向く。


「来る!」


レインが前へ出る。


大型。


真正面。


棍棒。


振り下ろす。


レインが受け流す。


重い。


前回の大型より。


少し強い。


アルスが横へ出る。


腕。


一撃。


浅い。


大型がアルスを見る。


その瞬間。


レインが脚へ。


体勢が崩れる。


一方。


右。


シリウスが通常ゴブリン一体を引き離している。


残り二体。


アイリス。


火球。


一体。


直撃。


倒れる。


最後の一体。


リリアの方へ回ろうとする。


アイリスが一歩前へ出る。


杖。


牽制。


その隙。


シリウスが相手を一度離し、中央へ戻る。


「そっち行く!」


短剣。


ゴブリンの横腹。


倒れる。


残り。


大型。


一体。


通常。


一体。


戦況。


一気に変わる。


レインが言う。

「大型は僕とアル!」


シリウスが最後の通常個体へ向かう。


アイリス。


援護。


リリア。


全体を見る。


大型ゴブリン。


棍棒。


横薙ぎ。


レインが下がる。


アルスも避ける。


壁。


棍棒が当たる。


石が砕ける。


シリウスが声を上げる。

「それ食らったら痛そうだな!」


レインが返す。

「見れば分かる!」


アルスは。


少し笑いそうになった。


でも。


目を離さない。


大型。


大きい。


強い。


でも。


速くはない。


変異種ほど。


読めない相手でもない。


一つずつ。


見る。


振りかぶる。


溜め。


足。


肩。


視線。


次。


来る。


「右!」


レインが避ける。


棍棒。


空振り。


アルスが踏み込む。


脚。


深い。


大型が膝をつく。


そこへ。


レイン。


肩。


一撃。


まだ倒れない。


リリアが言う。

「レイン、左腕!」


見る。


少し赤い。


さっきの受け流しで。


軽く痛めたらしい。


「動く?」


「大丈夫」


アルスが大型の正面へ出る。


「僕が少し引く」


大型がアルスを見る。


棍棒。


振り下ろし。


アルス。


避ける。


もう一度。


横。


避ける。


その間に。


レインが呼吸を整える。


シリウス側。


最後の通常ゴブリン。


倒れる。


「終わった!」


シリウスがこちらへ来る。


大型。


四対一。


アイリスが言う。

「撃てます!」


アルスが横へ。


レインも退く。


火球。


大型の胸。


直撃。


よろめく。


シリウスが背後へ。


脚。


レインが前。


剣。


最後。


大型ゴブリンが倒れた。


全員。


すぐには近付かない。


魔素。


弱くなる。


消える。


戦闘。


終了。


リリアがすぐレインの左腕を見る。


「軽い打撲ですわ」


回復。


短時間。


腫れ。


引く。


レインが腕を動かす。

「問題ない」


シリウスが息を吐く。

「四体いたけど、変異種の一匹より分かりやすかったな」


アルスも。


同じだった。


数。


多い。


大型。


強い。


それでも。


普通。


動き。


魔素。


攻撃。


全部。


理解できる範囲。


平原の変異種。


あれは。


やはり。


違った。


アイリスが言う。

「前回、見に来なくて良かったかもしれませんね」


レインが聞く。

「四体だったから?」


「それもあります。でも、前回は九階層まで来た時点で今より疲れていました」


リリアも頷く。

「今日はここまでの移動が早くなっていますもの」


そこだった。


同じ十階層。


でも。


前回。


初めて。


今日。


三回目。


体力の使い方。


歩き方。


戦闘。


全部。


少し違う。


アルスが言う。

「前回戦ってたら、勝てたかもしれない。でも今日より余裕はなかった」


シリウスが少し考える。

「戻ったの正解だったってこと?」


レインが笑う。

「少なくとも、今日の方がいい状態で戦えたね」


それで十分。


絶対。


ではない。


でも。


前回の判断が。


今日へ繋がっている。


魔石。


四つ。


回収。


大型のもの。


少し大きい。


アルスは測定する。


普通。


異常なし。


収納魔道具。


五枠目。


まだ空いている。


シリウスが言う。

「今度こそ入れる?」


アルスは大型の魔石を見る。


「これは入れようかな」


五枠目。


大型魔石。


収納。


これで。


全部の枠が埋まる。


シリウスが言う。

「満員」


アルスも笑う。


でも。


そこで少しだけ考える。


全部埋まった。


もし。


この先。


もっと必要な物が出たら。


入らない。


「今日はここで戻ろう」


シリウスが驚く。

「もう?」


レインは収納魔道具を見る。


そして。


すぐ分かった。


「空きがなくなったから?」


アルスが頷く。


「それもある。レインも一回治療したし」


リリアも言う。

「大きな怪我ではありませんが、帰還条件としては十分理由になりますわ」


シリウスが部屋の奥を見る。


まだ。


道はある。


進める。


時間も。


ある。


でも。


「分かった」


今度は早かった。


五人は戻る。


十階層。


九。


八。


帰路。


問題なし。


ギルドへ戻る。


ミーニャ。


いつも通り。


一。


二。


三。


四。


五。


「おかえりにゃ」


報告。


十階層。


大型ゴブリン一体。


通常ゴブリン三体。


討伐。


レイン。


軽傷。


治療済み。


魔石。


回収。


収納魔道具。


満杯。


そこで帰還。


ミーニャが聞く。

「まだ進めたにゃ?」


シリウスが答える。

「進めました」


「戻ったにゃ?」


「戻りました」


ミーニャが笑う。


「良いにゃ」


奥から。


ボルドが出てくる。


今日は。


いる。


報告を聞く。


「大型一、通常三か」


「はい」


レインが答える。


ボルドは五人を見る。


「どうだった?」


シリウスが言う。

「普通でした」


ボルドが眉を上げる。

「普通?」


アルスが補足する。

「強かったです。でも、動きも魔素も理解できる範囲でした」


ボルドは少しだけ考える。


「変異種と比べてるのか」


アルスは頷く。


「はい」


「なるほどな」


それ以上。


ボルドは聞かなかった。


「で、何で戻った?」


アルスが答える。


「収納魔道具が全部埋まったことと、レインが一度治療を受けたので」


ボルドが頷く。


「いい」


シリウスが聞く。

「まだ戦えたけど?」


ボルドが笑う。


「戦える状態で戻れ。それが一番楽だ」


また。


同じ。


限界になる前。


戻る。


少しずつ。


それが。


五人の中へ入ってきている。


その日の帰り。


シリウスが言った。


「次は十五階層?」


レインが答える。

「十階層の先を見てからね」


「また慎重」


「嫌?」


シリウスは少し考える。


「前ほど嫌じゃない」


アルスが笑う。


それは。


かなり大きな変化だった。

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