↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/227

第87話 五人で形を変える

二回目の探索は、一週間も空かなかった。


休日の朝。


アルスたちは前回と同じように王都冒険者ギルドへ寄り、ミーニャへ入場予定と帰還予定を伝える。


ミーニャは五人の顔を見る。

「今日はどこまで行く予定にゃ?」


レインが答える。

「十階層を目標にします」


「前回の倍にゃ」


シリウスが笑う。

「もう五階層までは道分かってますから」


ミーニャは少しだけ目を細める。

「道が分かってるのと、何が起きるか分かってるのは別にゃ」


「分かってます」


「ならいいにゃ」


アルスの収納魔道具も前回と同じだった。


薬。

水。

予備魔石。

食料。

空き枠。


ただし。


今回は五人全員が、普通の背負い袋にも最低限の水と非常食を持っている。


一つ壊れても。


全部は失わない。


前回の反省というより。


実際に使ってみて自然にそうなった。


ダンジョンへ入る。


一階層。


二階層。


三階層。


前回より速い。


道を知っている。


魔物が出やすい場所も。


崩れた通路も。


分かっている。


それでも。


アルスは魔素を見る。


シリウスは後ろを見る。


レインは角ごとに止まる。


慣れたから。


見なくなる。


そうならないように。


四階層。


前回倒した大型ゴブリンのいた通路。


今日は何もいない。


シリウスが言う。

「毎回同じじゃないんだな」


「うん」


アルスも周囲を見る。


魔物が出る場所。


種類。


数。


完全固定ではない。


資料には書いてあった。


でも。


実際に違うと。


感覚が変わる。


五階層。


前回。


ここで戻った。


二匹のウルフ系魔物。


今日は。


いない。


シリウスが少し残念そうに言う。

「今日は戦わないのか」


アイリスが言う。

「まだ始まったばかりですよ」


「そうだけど」


五人はそのまま進む。


六階層。


通路が少し狭くなった。


二人並ぶと。


動きづらい。


レインが止まる。


「ここから一列にしよう」


前。


レイン。


その後ろ。


アルス。


リリア。


アイリス。


最後尾。


シリウス。


シリウスが言う。

「アイリスとリリア逆じゃない?」


アルスが少し考える。


「狭いなら、リリアが中央の方がいいかも」


「なんで?」


「前も後ろも届きやすいから」


リリアも頷く。

「この幅なら、前へ出なくても補助できますわ」


アイリスはその後ろ。


射線は。


レインとアルスがしゃがけば通る。


「これでいこう」


固定ではない。


場所に合わせる。


それだけ。


少し進む。


前方。


魔素反応。


二つ。


アルスが手を上げる。


五人が止まる。


「二匹。小さい」


レインが剣へ手をかける。


曲がり角。


ゴブリン二体。


前回と同じ。


でも。


通路が狭い。


レインが一匹を止める。


もう一匹。


横へ抜けられない。


その代わり。


後ろの三人も前へ出られない。


アルスがレインのすぐ後ろで待つ。


「交代できる?」


「できる」


レインが一歩下がる。


アルスが前へ出る。


自然に。


位置が入れ替わる。


アイリスが後ろから声を出す。


「射線あります!」


アルスが身体を低くする。


火球。


ゴブリンの肩へ。


怯む。


アルスが踏み込む。


一体。


その間に。


レインがもう一体。


終了。


シリウスが後ろから言う。

「また俺、何もしてない」


リリアが笑う。

「後ろから来なかったので良かったですわ」


「俺の活躍、敵次第すぎない?」


「そういう役割もあるでしょ」


レインが笑う。


七階層。


ここで。


初めて少し広い部屋へ出た。


さっきまでの狭い通路から。


急に。


広い。


シリウスがすぐ前へ出る。

「ここなら動ける」


レインが周囲を見る。


「隊列変えよう」


前。


レイン。


左。


アルス。


右。


シリウス。


中央後方。


アイリス。


最後方寄り。


リリア。


今度は。


横へ広がる。


アルスが言う。

「同じ五人なのに、形が全然違う」


レインも頷く。

「場所に合わせた方がいいね」


そこへ。


魔物。


四体。


ウルフ系。


広い場所。


速い。


一匹。


レイン。


一匹。


アルス。


一匹。


シリウス。


最後の一匹。


アイリスとリリアの方へ回ろうとする。


「右!」


アルスが叫ぶ。


シリウスが自分の相手を牽制しながら横へ移動する。


でも。


間に合わない。


リリアが下がる。


アイリスが前へ出る。


杖。


火球ではない。


小さな炎。


ウルフの顔の前。


驚かせる。


進路。


ずれる。


そこへ。


レイン。


一撃。


倒す。


シリウスが言う。

「アイリス前に出たな」


「必要だったからです」


「後衛じゃなかったっけ?」


「後衛だから絶対に前へ出ない、ではありません」


アルスはその言葉に少し引っかかった。


そう。


役割。


決める。


でも。


固定する。


ではない。


敵。


場所。


距離。


状況。


それで。


変える。


残り三匹。


今度は。


五人全員が動く。


レインが中央。


アルスとシリウスが左右。


アイリスが射線を作る。


リリアが補助。


終了。


誰も怪我なし。


でも。


息は少し上がっている。


リリアが言う。

「少し休みましょう」


シリウスがすぐ座る。

「賛成」


水。


食料。


短い休憩。


アルスは収納魔道具から水を出す。


冷たいまま。


シリウスが言う。

「これ、ダンジョンだと本当に便利だな」


レインも頷く。

「荷物だけじゃなくて、休憩が短くなる」


そこだった。


探す。


出す。


片付ける。


それが。


少し速い。


数分。


それだけ。


でも。


地下。


危険がある場所。


長く止まらなくていい。


それも。


価値。


アルスは記録する。


――収納魔道具使用。


――休憩準備時間短縮。


――水・食料への即時アクセス。


研究室では。


思いつかなかった。


また一つ。


八階層。


今度は。


分岐。


三つ。


地図。


中央。


最短。


左。


遠い。


右。


小部屋が多い。


シリウスが言う。

「中央」


レインがアルスを見る。


アルスは魔素を感じる。


中央。


多い。


かなり。


左。


少ない。


右。


散っている。


「中央、多い」


「何匹?」


「分からない。六以上」


シリウスが止まる。


「じゃあ左?」


レインが言う。

「今日は十階層が目標。無理に戦う必要ない」


五人。


左。


遠回り。


進む。


途中。


魔物。


一匹。


小型。


戦闘。


短い。


さらに進む。


九階層。


ここで。


少し疲労が出始める。


シリウスが言う。

「まだいけるけど、ちょっと脚重い」


レインも。

「僕も少し」


アイリスとリリアも。


問題はない。


でも。


疲れていないわけではない。


アルスも。


同じ。


十階層。


階段。


見える。


シリウスが笑う。

「着いた」


レインが時計を見る。


予定内。


水。


十分。


予備魔石。


十分。


怪我。


なし。


「少し休んで、入口だけ確認して戻ろう」


誰も反対しない。


十階層。


下りる。


そこは。


今までより。


明らかに広かった。


壁。


高い。


通路。


二方向。


そして。


遠く。


大きめの魔素反応。


アルスが止まる。


「いる」


レインが聞く。

「強い?」


「今までより大きい」


シリウスが少し前へ出る。

「見に行く?」


アルスは時計を見る。


疲労。


帰路。


九階層。


八。


七。


まだ。


戻らないといけない。


「今日はやめよう」


シリウスが少し考える。


でも。


すぐ頷く。


「分かった」


レインも。

「次だね」


十階層。


到達。


それだけ。


五人は。


戦わず。


戻る。


帰路。


八階層。


シリウスがふと笑う。


「前だったら、絶対見に行ってた気がする」


アルスも笑った。


「今も行きたそうだったけど」


「行きたかった」


「でも戻った」


「うん」


少しずつ。


変わっている。


強くなった。


ではなく。


判断。


そこが。


変わる。


ギルドへ戻る。


ミーニャがまた五人を数える。


一。


二。


三。


四。


五。


「おかえりにゃ」


報告。


十階層到達。


異常なし。


十階層奥に。


大きめの魔素反応。


未確認。


ミーニャが言う。

「見なかったにゃ?」


レインが答える。

「今日は帰還時間と疲労を優先しました」


ミーニャは笑った。


「いいにゃ」


シリウスが聞く。

「気にならない?」


「気になるにゃ」


「じゃあ見れば良かった?」


「それとこれとは別にゃ」


アルスも笑う。


ギルドの奥。


ボルドの姿は見えない。


今日は。


忙しいのかもしれない。


それでいい。


毎回。


誰かに答えをもらう必要はない。


五人だけで。


決めて。


戻った。


二回目の探索。


十階層。


そして。


五人は。


少しずつ。


五人で動く形を。


覚え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。