第139話 使って分かったこと
翌朝。
アルスは昨日とは違って、起きた時からやることが決まっていた。
研究室へ行く。
ただし。
中級ダンジョンの記録を全部持っていくわけではない。
今日は。
収納魔道具。
その一点。
アルスは机の上へ紙を一枚置いた。
五枠。
現在の構成。
水。
薬。
予備魔石と小修理用品。
食料。
空き。
実際の探索。
途中。
食料。
減る。
空き。
増える。
魔石。
素材。
鉱石。
金属片。
増える。
つまり。
行きと帰りで。
必要な構成。
違う。
そこ。
一番。
大きかった。
マリアンヌが部屋へ来る。
「今日は研究室ですね?」
アルスが笑う。
「今日はそう」
「昨日休まれたので安心しました!」
「一日で?」
「一日でもです!」
強い。
アルスは収納魔道具と紙を持つ。
「昼には戻るかもしれない」
マリアンヌ。
少し考える。
「かもしれない、ですね」
「うん」
完全に信用されていない。
王立学院。
休暇中。
普段より人。
少ない。
研究区画。
静か。
でも。
ティアの研究室。
静か。
ではない。
中から。
音。
する。
金属。
紙。
何か。
落ちる。
「先生?」
扉。
開ける。
ティア。
いる。
机。
いっぱい。
中級ダンジョンから持ち帰った黒い鉱石。
発光鉱物。
金属片。
さらに。
学院側で用意した別の試料。
並ぶ。
ティアが顔を上げる。
「来たか」
アルスが部屋を見る。
「もう始めてたんですか」
「三日前からじゃ」
「休んでませんね」
「お前に言われとうない」
それ。
反論。
できない。
アルスは笑う。
ティアが収納魔道具を見る。
「今日はそっちか」
「はい」
「鉱石ではないのか」
「鉱石は先生がやってるので」
ティア。
少し。
満足そう。
「正しい」
アルスは紙を広げる。
「実際に長く使ってみて、五枠だと少ないです」
「知っとる」
即答。
「でも、ただ増やせばいいだけじゃないと思います」
ティアの目。
変わる。
「続けろ」
アルスは今回の使い方を説明する。
出発時。
水。
薬。
修理。
食料。
空き。
探索中。
食料。
消費。
空き。
増える。
代わりに。
素材。
魔石。
鉱石。
増える。
「最初から全部の枠を固定用途にすると、後半で使いにくい」
ティアが頷く。
「用途が時間で変わるわけじゃな」
「はい」
「つまり容量だけではない」
「そうです」
今まで。
研究。
収納量。
増やす。
魔素消費。
減らす。
小型化。
そこ。
中心。
でも。
実際。
使う。
別の問題。
出る。
何を入れる。
いつ空く。
どの枠を残す。
交換。
できるか。
ティアが紙へ書く。
「固定枠そのものが問題か?」
アルスは少し考える。
「固定点は必要だと思います。でも、利用者から見た時に五個の箱として扱う必要はないかもしれない」
ティアが止まる。
「ほう」
今。
一枠。
一空間。
そんな感覚。
でも。
内部構造。
もっと柔軟。
できる。
可能性。
ある。
「一つの大きな空間を、必要に応じて区切る?」
ティアが言う。
アルス。
頷く。
「それか、複数の固定点を利用者側では一つの容量として扱う」
「制御が面倒になるのう」
「はい」
「事故も増える」
「はい」
「じゃが面白い」
それ。
研究。
始まる合図。
でも。
今日は。
すぐ試作。
しない。
アルスが言う。
「もう一つあります」
ティアが見る。
「なんじゃ」
「空きがあること自体に価値がありました」
「空き?」
「はい」
出発時。
五枠全部。
埋める。
できる。
でも。
一枠。
空けた。
その結果。
途中で得た物。
入れられた。
さらに。
食料。
減る。
空き。
増えた。
「容量は埋めるためのものじゃなくて、余白も必要でした」
ティアが少し笑う。
「道具屋が聞いたら嫌がりそうな話じゃな」
「なんでです?」
「大容量を売り文句にしにくくなる」
アルスも笑う。
でも。
本当。
容量。
十。
ある。
だから。
十。
埋める。
ではない。
使い方。
余白。
重要。
収納魔道具。
ただの大きい袋。
ではない。
運用。
含めて。
価値。
変わる。
そこへ。
研究室の扉。
開く。
「アルス様?」
聞き慣れない。
いや。
知っている声。
アルスが振り返る。
ガルド。
いる。
商会支店長。
手には書類。
ティアが嫌そうな顔をする。
「なぜ来た」
ガルドが普通に答える。
「呼ばれたからです」
「誰に」
「学院側からです」
ティア。
少し。
黙る。
アルスが笑いそうになる。
ガルドが机を見る。
「収納魔道具の運用記録が戻ったと聞きまして」
アルスが言う。
「ちょうどその話です」
ガルドはすぐ座らない。
まず。
紙。
見る。
アルス。
説明。
同じ。
五枠。
実地。
用途変化。
余白。
素材。
帰路。
全部。
ガルドは最後まで聞く。
そして。
最初に言った。
「それなら販売時の説明を変えた方がいいですね」
ティアが見る。
「開発より先に売り方か」
「実用品ですから」
即答。
アルスは少し面白い。
研究者。
見る場所。
性能。
商人。
見る場所。
使う人。
違う。
ガルドが続ける。
「容量五枠、ではなく。推奨運用として一枠空ける」
アルスが頷く。
「それ、いいと思います」
「長期探索の場合は消費品が減った後、回収品へ用途転換」
「はい」
「薬や水のような緊急物資は別枠推奨」
ティアが言う。
「もう説明書を作っとる」
ガルドが笑う。
「事故が減りますので」
それ。
商人。
でも。
信用。
中心。
ガルドらしい。
アルスが思う。
今までは。
性能。
作る。
販売。
その後。
でも。
違う。
使われる。
そこで。
出る問題。
また。
開発。
戻る。
循環。
ある。
ガルドが収納魔道具を見る。
「それで、容量を増やすのですか?」
ティアが答える。
「簡単には増やさん」
「理由は?」
「制御と安全じゃ」
アルスも補足する。
「六点以上はまだ研究段階です」
ガルド。
すぐ。
頷く。
「なら五枠の運用改善が先ですね」
誰も。
無理に。
大容量。
求めない。
その方。
いい。
ティアが言う。
「じゃが将来的には増やす」
ガルドが笑う。
「完成してからお願いします」
「分かっとる」
たぶん。
少し。
分かっていない。
アルスはそう思う。
午前。
三人。
話す。
研究。
運用。
販売。
安全。
一つの道具。
でも。
見る場所。
三つ。
ある。
そして。
どれか一つだけ。
正しい。
ではない。
昼前。
ガルドが書類をまとめる。
「現行品の説明資料は修正します」
アルスが聞く。
「すぐ?」
「事故になる可能性があるなら早い方がいい」
「まだ事故はないです」
「ないうちに変えるのが一番安いです」
アルス。
少し。
感心。
ティアが言う。
「商人らしい言い方じゃな」
「研究事故より安いでしょう?」
ティア。
黙る。
アルス。
笑う。
ガルドが帰った後。
ティアが言う。
「で」
アルスが見る。
「次は?」
「まだやりません」
ティア。
止まる。
「なんじゃと」
「今日は運用を整理するだけです」
「試作は?」
「明日でもできます」
ティア。
信じられない。
そんな顔。
アルスは少し笑う。
昨日。
休んだ。
今日。
全部。
やらない。
それ。
少しずつ。
できる。
ようになっている。
「先生も休んだ方がいいですよ」
「嫌じゃ」
即答。
それは。
変わらない。
アルスは収納魔道具を持つ。
研究室。
出る。
廊下。
歩く。
今回の中級ダンジョン。
戦闘。
地図。
古い施設。
たくさん。
持ち帰った。
でも。
今日。
使ったのは。
その中の。
一つ。
五枠。
足りなかった。
ただ。
それだけ。
でも。
一つの経験。
ちゃんと。
道具を変える。
未来。
繋がる。
アルスは思う。
使ってみる。
問題。
出る。
直す。
また。
使う。
たぶん。
これも。
終わり。
ない。
それで。
いい。
観測したものが。
世界へ戻る。
今日は。
その最初の一つだった。




