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第137話 帰ってきた日

ギルドを出たあと、五人はしばらく王都の通りを一緒に歩いた。


中級ダンジョンへ向かう前と、同じ街。


同じ道。


同じ人の流れ。


でも、少しだけ見え方が違う。


シリウスが大きく伸びをした。

「やっぱ王都って歩きやすいな」


アイリスが笑う。

「道がありますものね」


「それな」


森。


岩場。


水路。


狭い足場。


洞窟。


分岐。


地図。


ずっとそんなものを見ていた。


石畳。


店。


看板。


馬車。


人。


全部。


分かりやすい。


レインが言う。

「今日はこのまま帰ろう」


シリウスが少し意外そうに見る。

「どこにも寄らない?」


「僕は家に顔を出したい」


アイリスも頷く。

「わたしもです」


リリアも同じ。


アルスも。


自然に。


家。


浮かぶ。


「僕も帰る」


そこで。


五人。


別れる。


また学院で。


あるいは。


その前に会うかもしれない。


特別な約束。


しない。


それでいい。


アルスは一人でアークライト家へ向かった。


王都の道。


何度も通った。


でも。


今日は。


歩きながら周囲を見る癖が抜けない。


分岐。


目印。


逃げ道。


人の流れ。


魔素。


自分で少し笑う。


「戻ってないな」


身体は王都。


頭はまだ探索。


屋敷が見える。


門。


いつもの形。


使用人。


見慣れた庭。


そして。


扉。


開く。


マリアンヌが最初に出てきた。


「アルス坊ちゃま!」


声。


大きい。


アルスが少し笑う。

「ただいま」


マリアンヌは一度。


止まる。


上。


下。


見る。


怪我。


ない。


服。


少し汚れ。


でも。


無事。


確認。


したらしい。


「お帰りなさいませ!」


今度は。


少し。


安心した声。


その後ろ。


セバス。


いつもの姿勢。


「お帰りなさいませ、アルス様」


「ただいま、セバス」


そして。


奥。


ソフィア。


アルベルト。


エリシア。


クラウス。


家族。


いる。


ソフィアがすぐ近付く。


「まぁ……」


手。


アルスの肩。


腕。


顔。


確認。


「怪我はありませんか?」


「ないよ」


「本当に?」


「本当に」


レインの家でも。


たぶん。


同じようなこと。


起きている。


そう思うと。


少し笑える。


アルベルトが言う。

「無事ならそれでいい」


短い。


でも。


それ。


一番。


大事。


クラウスがアルスの荷物を見る。

「かなり持ち帰ったようだな」


「物より記録の方が多いけど」


エリシアが笑う。

「アルスらしいわね」


マリアンヌがすぐ荷物を受け取ろうとする。


「お持ちします!」


アルスは少しだけ迷ってから渡す。


「紙は気を付けて」


「はい!」


「鉱石も」


「はい!」


「金属片も」


マリアンヌが止まる。


「……何をしに行っていたのですか?」


アルスも少し考える。


「冒険?」


エリシアが笑った。


「疑問形なの?」


そう言われると。


自分でも。


少し変。


中級ダンジョン。


魔物。


戦闘。


それもあった。


でも。


一番長くやったこと。


見る。


記録。


地図。


比較。


採取。


観察。


確かに。


冒険。


なのか。


研究。


なのか。


よく分からない。


でも。


アルスには。


それでいい。


ソフィアが言う。

「まずお風呂に入りなさい」


その言葉で。


急に。


身体の汚れ。


気になる。


何日も野営。


洞窟。


汗。


土。


「うん」


マリアンヌがすぐ動く。

「準備できています!」


「もう?」


「そろそろお戻りになる頃だと思って!」


セバスが少しだけ見る。


マリアンヌ。


胸を張る。


「予測です!」


アルスが笑う。


観測。


予測。


ここにも。


ある。


風呂。


入る。


温かい。


身体。


沈む。


その瞬間。


初めて。


本当に。


帰ってきた。


そう感じた。


探索中。


水。


大事。


飲む。


洗う。


確認。


でも。


湯船。


違う。


何もしない。


ただ。


浸かる。


それだけ。


身体。


ほどける。


アルスは目を閉じる。


中級ダンジョン。


入口。


三叉路。


二足魔物。


大型四足魔物。


水路。


細い足場。


採掘区域。


記号。


加熱設備。


旧搬出口。


全部。


頭の中。


まだ。


ある。


でも。


今。


考えなくていい。


ミーニャ。


言った。


帰る。


休む。


必要。


ティアも。


たぶん。


今頃。


鉱石。


見ている。


ボルドも。


記録。


整理。


している。


自分が。


ずっと。


見続けなくても。


情報。


動く。


それ。


少し。


新しい。


風呂から出ると。


食事。


待っていた。


そして。


料理長。


ガストン。


厨房から顔を出す。


「おう、帰ったか!」


アルスが笑う。

「ただいま」


「食ったか?」


「今から」


「向こうでだ!」


アルスはすぐ分かる。


持たせてもらった料理。


「全部食べた」


ガストンの顔。


少し。


満足。


「どうだった」


シリウス。


思い出す。


三日目。


四日目。


最後。


疲れ切った日。


温かい料理。


「すごく助かった」


ガストンは笑う。

「ならいい!」


それだけ。


でも。


アルス。


少し。


言いたい。


「シリウスが帰ったら礼を言うって」


「誰だ?」


「一緒に行った友達」


「なら今度連れてこい。食わせてやる」


たぶん。


喜ぶ。


すごく。


夕食。


家族。


一緒。


肉。


野菜。


スープ。


パン。


普通。


なのに。


美味しい。


ソフィアが聞く。

「中級ダンジョンはどうでした?」


アルスは少し考える。


全部。


話すと。


長い。


かなり。


「思ってたのと違った」


アルベルトが聞く。

「どう違った?」


「初心者ダンジョンみたいに、奥へ進めばいい場所じゃなかった」


地図。


必要。


分岐。


多い。


魔物。


生活。


変化。


昔の施設。


いろいろ。


話す。


でも。


今夜。


全部。


必要。


ない。


一部。


だけ。


家族も。


それで。


十分。


クラウスが聞く。

「危険だったか?」


アルスは頷く。

「危険だった。でも、危険な場所に行かないこともできた」


アルベルトが少しだけ笑う。


「それを覚えたなら大きい」


アルスも。


そう思う。


強くなる。


魔法。


剣。


それも。


必要。


でも。


危険。


見つける。


避ける。


戻る。


そっち。


もっと。


重要。


食事の後。


自室。


久しぶり。


机。


本。


窓。


ベッド。


全部。


そのまま。


マリアンヌが荷物を置く。


「紙はこちらです」


「ありがとう」


「鉱石はこちら」


「うん」


「金属片も」


「ありがとう」


そして。


マリアンヌ。


少し。


止まる。


「アルス坊ちゃま」


「なに?」


「お帰りなさい」


もう。


言った。


何度も。


でも。


今度は。


少し違う。


アルスも。


普通に答える。


「ただいま」


マリアンヌが出ていく。


アルスは机に座る。


紙。


ある。


書ける。


地図。


整理。


できる。


発光鉱物。


考えられる。


でも。


今日は。


やらない。


少し。


迷う。


それでも。


やらない。


ベッド。


横になる。


柔らかい。


洞窟の地面。


テント。


簡易寝具。


それと。


全然。


違う。


身体。


すぐ。


分かる。


天井を見る。


中級ダンジョン。


最初の探索。


終わった。


明日。


何する。


まだ。


決めなくていい。


長期休暇。


少し。


残っている。


家。


学院。


研究。


友達。


全部。


また。


戻る。


でも。


今夜だけ。


帰ってきたこと。


それだけで。


十分だった。

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