第131話 集めたものの行き先
翌朝、アルスたちは前日に見つけた集積場所らしき区画へ向かった。
閉鎖を示す可能性が高い記号のある通路には近付かない。今日見るのは、石台が並ぶ広間のさらに奥へ続いていた一本の通路だった。
中級ダンジョンへ入り、細い足場を渡る。採掘区域へ入り、運搬設備の跡を抜ける。
昨日見つけた石台の広間。
変化なし。
黒い粉。
そのまま。
四角と点の記号。
同じ位置。
シリウスが石台を見る。
「ここに鉱石を置いてたとして、その先で何してたんだろうな」
レインが奥の通路を見る。
「今日はそれを見に行こう」
アルスも頷く。
五人は進んだ。
通路は今までより広かった。
床。
平ら。
壁。
かなり丁寧に削られている。
荷物を運ぶため。
そう考えると自然。
床には、平行に走る細い擦れ跡が続いていた。
シリウスがしゃがむ。
「二本ある」
レインも見る。
「車輪?」
アルスは少し考える。
前世なら。
台車。
レール。
いくつも思い付く。
でも。
ここ。
同じとは限らない。
「何かを引いた跡なのはありそう」
それだけ。
記録。
進む。
少し先。
壁。
丸と二本線。
運搬関連の可能性が高い記号。
シリウスが笑う。
「これはもう驚かなくなったな」
アルスも同じだった。
記号。
見つける。
周囲を見る。
意味。
照合。
自然になってきた。
さらに進む。
空気。
変わる。
暖かい。
ほんの少し。
地下で。
今までなかった。
アイリスが先に気付いた。
「温度が違いませんか」
リリアも頷く。
「少しだけ暖かいですわ」
アルスは魔素を見る。
前。
濃い。
ただし。
生き物ではない。
流れ。
強い。
発光鉱物の近くで感じたものとも違う。
「何かある」
全員。
警戒。
進む。
そして。
大きな部屋。
五人は入口で止まった。
中央。
石で組まれた構造物。
大きい。
人の胸くらいの高さ。
いくつも並んでいる。
その中。
黒い。
焦げ。
壁。
煤。
天井。
一部。
黒ずんでいる。
シリウスが言った。
「火を使ってた?」
アイリスも周囲を見る。
「かなりの量を」
アルスは前へ出る。
近く。
金属。
塊。
小さい。
床。
点々。
石台。
その上にも。
固まった金属のようなもの。
「鉱石を焼いてた?」
レインが言う。
可能性。
高い。
採る。
運ぶ。
集める。
そして。
熱。
加える。
前世なら。
精錬。
加工。
そういう工程。
でも。
ポテンシア。
魔素。
ある。
単純に地球と同じ方法とは限らない。
アルスは構造物を見る。
内部。
発光鉱物。
少し。
組み込まれている。
また。
ある。
アイリスが気付く。
「火を起こすためでしょうか」
アルスは魔素の流れを見る。
発光鉱物。
周囲。
金属。
細い線。
つながる。
魔道具。
だった可能性。
かなり高い。
「熱を作る設備かもしれない」
シリウスが言う。
「鍛冶場?」
レインが周囲を見る。
「でも金槌とか作業台が少ない」
確かに。
鍛える。
より。
まとめて熱する。
そんな感じ。
アルスは記録する。
大型加熱設備らしき構造。
煤。
金属残渣。
発光鉱物の組み込み。
用途不明。
部屋。
さらに奥。
壁際。
低い台。
そこに。
小さな塊。
いくつも。
形。
似ている。
四角。
円。
棒。
シリウスが言う。
「型?」
アルスもそう見える。
同じ形。
複数。
自然ではない。
アイリスが一つを見る。
「完成品ではなさそうですね」
レインが言う。
「材料にする途中?」
それ。
かなり自然。
鉱石。
そのまま。
では使いにくい。
一度。
何かの形に。
整える。
そこから。
別の場所へ。
持っていく。
可能性。
アルスは地図を見る。
採掘。
運搬。
集積。
加熱。
成形。
工程。
見えてくる。
シリウスが言った。
「これ、鉱山じゃなくて工場みたいだな」
その言葉。
アルスは少し止まる。
前世の感覚なら。
確かに。
採掘施設。
だけではない。
加工。
物流。
管理。
一体。
かなり。
組織的。
レインが言う。
「ここで全部やってたのかな」
アルスは首を振る。
「まだ分からない。最終加工は別かもしれない」
部屋。
奥。
さらに二本。
通路。
一つ。
広い。
一つ。
狭い。
広い方。
床の擦れ跡。
続く。
運搬。
その先へ。
狭い方。
空気。
少し強い。
換気。
可能性。
そして。
壁。
縦線を囲む記号。
シリウスが指す。
「ほら」
全員。
もう意味。
かなり予測。
できる。
換気。
その可能性。
高い。
アイリスが空気を感じる。
「加熱する場所なら必要ですね」
また。
記号。
機能。
一致。
アルスは紙へ追加する。
縦線を囲む形。
三例目。
加熱設備区域の通気路付近。
換気関連の可能性、高。
シリウスが言う。
「もう高でいいんだ」
アルスも笑う。
「三例あるからね」
「成長したな」
「何が?」
「決める速度」
レインとアイリスが笑った。
五人は広い通路の入口だけを見る。
擦れ跡。
続く。
先。
下り。
魔素。
遠くに。
弱い。
生き物ではない。
でも。
今日。
情報。
かなり多い。
レインが時間を見る。
「今日はここまでにしよう」
誰も反対しない。
帰る前。
アルスは加熱設備らしき構造をもう一度見る。
壊れている。
でも。
完全には崩れていない。
もし。
仕組み。
分かれば。
今の魔道具技術。
何か。
繋がるかもしれない。
ティア。
見たら。
たぶん。
喜ぶ。
その想像。
少しだけ。
笑う。
シリウスが気付く。
「何笑ってる?」
「先生が見たらどうするかなって」
レインもすぐ分かる。
「ティア先生?」
「たぶんここから動かなくなる」
アイリスが笑った。
「それはありそうです」
リリアも微笑む。
「食事を忘れそうですわ」
アルスも。
同意。
でも。
今。
呼べない。
まず。
自分たちで。
持ち帰れる情報。
集める。
それが先。
帰路。
問題なし。
閉鎖区画。
近付かない。
細い足場。
渡る。
入口。
野営地。
アルスは今日の地図を更新した。
集積区域。
奥。
加熱・加工区域(仮)。
大型設備。
煤。
金属残渣。
発光鉱物。
成形物らしき塊。
通気路。
運搬通路。
それを線で繋ぐ。
シリウスが横から見る。
「どんどん施設になってくな」
レインも頷く。
「自然の洞窟を使った施設、って感じだね」
アルスも今なら。
かなり。
そう思う。
自然。
人工。
混ざっている。
洞窟。
そのまま。
使える場所。
使う。
足りないところ。
削る。
設備。
置く。
地下。
利用。
合理的。
アルスは探索記録の最後に書いた。
――集積区画奥で、大型加熱設備らしき構造および金属残渣を確認。
――発光鉱物を組み込んだ魔道具的構造の可能性。
――採掘、運搬、集積、加熱、成形まで一連の工程が存在した可能性。
そして。
もう一行。
――一つの部屋だけを見ても用途は分からない。
――道で繋げると、そこで行われていた仕事が見えてくる。
今まで。
地図は。
帰るため。
だった。
それが。
少しずつ。
過去を読むための地図にも。
なり始めていた。




