第126話 下へ行く別の道
翌朝、アルスたちは人工区域へ向かう前に、地図をもう一度確認した。
昨日見つけた縦穴。
壁には、かつて何かの昇降設備があったような跡が残っている。ただし今は使えない。深さも分からず、そのまま降りるのは危険だった。
シリウスが地図を指す。
「でも、下に空間はあるんだよな」
アルスが頷く。
「ある可能性は高い」
「じゃあ別の道探す?」
「そのつもり」
レインも同意する。
「縦穴があるなら、下の空間に出入りする方法が一つだけだったとは限らないからね」
五人は中級ダンジョンへ入った。
細い足場を渡り、地下水路を見下ろす大空間へ到着する。
三本の通路。
昨日までは左。
人工区域へ進んだ。
今日は中央を見る。
アルスは魔素を探る。
遠くに小さな反応。
複数。
ただ、かなり距離がある。
通路の幅は広い。
足元も悪くない。
レインが言った。
「今日は中央を少し進もう」
五人は入る。
最初。
ほぼ水平。
しばらくして。
緩やかに下り始める。
シリウスがすぐ気付いた。
「下がってる」
アルスも地図へ書く。
人工区域の縦穴。
その下。
もし中央通路が下へ続くなら。
位置関係。
近付くかもしれない。
ただし。
まだ推定。
進む。
壁。
最初は自然。
やがて。
少しずつ変わる。
削られたような面。
一定の幅。
人工区域で見たものほどはっきりしていない。
でも。
似ている。
アイリスが言った。
「ここも手を入れられているように見えますね」
アルスもそう思う。
自然の通路。
その一部を。
通りやすく広げた。
そんな感じ。
リリアが壁を見る。
「人工区域と同じ人たちでしょうか」
「分からない。でも関連はありそう」
進む。
さらに。
下る。
途中。
石。
積まれている。
自然な崩落ではない。
左右へ寄せられている。
シリウスが言う。
「道を作る時に退けた石?」
「可能性はある」
少し先。
古い木片。
地面。
一本。
腐っている。
さらに。
鉄。
小さい。
釘のような形。
アルスは拾わずに見る。
人工区域で見つけた金属片より細い。
でも。
加工品。
可能性。
高い。
レインが言う。
「やっぱり繋がってそうだね」
まだ。
答え。
ではない。
でも。
痕跡。
増える。
そして。
十分ほど進んだ時。
通路が二つに分かれた。
右。
さらに下る。
左。
ほぼ水平。
アルスは位置を考える。
人工区域。
縦穴。
今いる場所。
「右だと、縦穴の下に近付くかも」
シリウスが笑う。
「じゃあ右」
レインが確認する。
「魔素は?」
アルスが探る。
右。
近く。
反応なし。
左。
一つ。
小さい。
「右は今のところ何もいない」
進む。
下り。
少し急になる。
足元。
滑りやすい。
全員。
歩幅を小さくする。
途中。
壁。
穴。
横へ。
小さい。
人は通れない。
そこから。
空気。
流れている。
リリアが言う。
「風がありますわ」
アルスも感じる。
下。
どこか。
広い空間。
ある。
さらに進む。
そして。
通路が開けた。
五人。
止まる。
前。
縦長の大きな空間。
天井。
高い。
いや。
上。
見える。
かなり上。
穴。
ある。
シリウスが見上げた。
「これ……」
アルスもすぐ地図を見る。
位置。
方向。
高さ。
人工区域の縦穴。
「たぶん、あの下」
全員。
見上げる。
上。
暗い。
でも。
壁。
一定間隔。
削られた跡。
昨日見た。
縦穴の壁。
同じ。
レインが言う。
「繋がったね」
アルスも頷いた。
縦穴。
正面から降りる必要。
なかった。
別の通路。
回り込めた。
今まで。
何度も。
同じこと。
水路。
細い足場。
穴。
全部。
危険なところを。
直接突破しなくても。
別の道。
あった。
シリウスが少し得意そうに言う。
「もう学習したな」
アイリスが笑う。
「今回は落ちなくて済みましたね」
空間の底。
広い。
ただし。
人工区域の上と違う。
ここ。
倉庫。
のようにも見える。
壁際。
大きな石。
積まれている。
箱。
だったもの。
腐った木。
金属。
多い。
中央。
古い道具。
何か。
柄。
折れている。
刃。
錆びている。
シリウスが言う。
「ここ、作業場じゃない?」
レインも周囲を見る。
「上より物が多い」
アルスは魔素を探る。
生き物。
近く。
なし。
ただ。
壁。
一部。
発光鉱物。
少し。
ある。
そして。
別の鉱物。
黒い。
光らない。
でも。
魔素。
かなり。
含んでいる。
アルスが止まる。
「これ」
シリウスが見る。
「また鉱石?」
「たぶん」
黒い鉱石。
壁。
大きな筋。
削った跡。
明確。
その下。
石片。
大量。
つまり。
ここ。
採掘。
していた。
可能性。
かなり高い。
アイリスが言う。
「上の人工区域は、このための施設だったのでしょうか」
アルスは黒い鉱脈を見る。
「可能性はかなり上がった」
初めて。
そう言える。
火の跡。
倉庫らしき部屋。
掘削空間。
縦穴。
下。
鉱脈。
道具。
繋がる。
でも。
誰。
いつ。
なぜ放棄。
まだ。
分からない。
リリアが壁際を見る。
「これ、何でしょう」
床。
金属。
丸い。
輪。
複数。
壁へ固定されている。
一定間隔。
シリウスが言う。
「縄を通す?」
レインが見る。
「荷物を吊るした?」
アルスは縦穴を見上げる。
もし。
上。
下。
物を運ぶ。
なら。
昇降設備。
縦穴。
必要。
鉱石。
上へ。
運ぶ。
可能性。
かなり自然。
「採掘したものを上へ運んでたのかもしれない」
アルスが言った。
今回は。
仮説。
かなり強い。
でも。
断定。
しない。
記録。
採掘施設の可能性、高。
それくらい。
シリウスが黒い鉱石を見る。
「これ採る?」
アルスは少し考える。
「小さい欠片だけ」
昨日までと同じ。
状態。
崩しすぎない。
一片。
採取。
普通の袋へ。
重量。
少し。
発光鉱物より重い。
魔素。
濃い。
帰ってから。
比較。
する。
さらに周囲を見ていると。
レインが奥を指した。
「道がある」
底の空間。
さらに。
奥。
一本。
狭い。
下。
少し。
続いている。
シリウスが見に行こうとして。
止まる。
「今日は?」
レインが時間を見る。
十分。
余裕。
でも。
アルスが言った。
「ここを先に調べたい」
情報。
多い。
縦穴接続。
鉱脈。
道具。
荷役設備らしき跡。
これだけ。
十分。
シリウスも頷く。
「だな」
今日は。
進まない。
五人は底の空間を見取り図にする。
縦穴。
黒い鉱脈。
道具。
金属輪。
木箱跡。
石材。
奥の未探索通路。
位置。
全部。
記録。
帰り。
来た道。
上り。
少しきつい。
でも。
問題なし。
大空間。
細い足場。
入口。
戻る。
野営地。
アルスは人工区域の地図。
上。
下。
初めて。
明確に繋げた。
上部。
広間。
小部屋。
掘削空間。
縦穴。
下部。
採掘空間。
鉱脈。
昇降設備跡。
線。
一本。
縦。
シリウスが地図を見る。
「これでもう採掘場って呼んでいいんじゃない?」
アルスは少し笑う。
「まだ仮称なら」
レインが言う。
「人工区域より分かりやすいね」
アルスは紙へ書く。
――採掘区域(仮)
名前。
決定。
ではない。
地図上の呼称。
それだけ。
アイリスが黒い鉱石を見る。
「これが何なのか分かれば、もっと繋がりそうですね」
「うん」
素材。
用途。
年代。
それが。
分かれば。
過去。
少し。
見える。
アルスは探索記録の最後に書いた。
――縦穴下部へ別経路から到達。
――直接降下する必要なし。
――下部に明確な採掘痕、鉱脈、荷役設備らしき痕跡を確認。
――人工区域は採掘活動に関連する施設だった可能性が高い。
そして。
もう一行。
――行けない場所と、行く道が見つかっていない場所は違う。
中級ダンジョン。
また。
少し。
形が見えた。




