↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
116/227

第116話 昨日と同じではない

翌朝。


アルスたちは昨日と同じ道を進んだ。


入口。


最初の広間。


分岐。


地下水。


三叉路。


大型魔物の死体が消えていた広間。


そこから右。


緩やかな上り。


壁の人工的な傷。


そして。


昨日、大型四足魔物を見つけた広間。


シリウスが先頭で止まる。


「いる?」


アルスは魔素を見る。


一つ。


大きい。


昨日と同じ場所。


ただし。


少し違う。


「いる。でも位置が違う」


五人は広間へ入らず、入口付近から様子を見る。


昨日は奥の通路を塞ぐように歩いていた。


今日は。


もっと中央。


そして。


右前脚。


昨日より明らかに悪い。


体重をほとんど掛けていない。


リリアが小声で言った。


「怪我が悪化していますわね」


レインも頷く。


「昨日戦わなくてよかったかもしれない」


シリウスが言う。


「弱ってるなら今日は倒しやすい?」


アルスはすぐには答えなかった。


魔素。


量。


昨日より少し乱れている。


呼吸。


荒い。


動き。


遅い。


でも。


それだけではない。


時々。


急に頭を振る。


苛立っているようにも見える。


「昨日より弱ってる。でも昨日より危ないかもしれない」


シリウスが見る。


「どういうこと?」


「痛みで動きが読みにくくなるかもしれない」


レインが言った。


「追い詰められた動物と同じだね」


アルスは頷く。


前世の知識。


野生動物。


怪我。


逃げ場がない。


危険。


でも。


それがこの魔物にも同じように当てはまるとは限らない。


だから。


観察する。


大型魔物が広間を歩く。


ゆっくり。


右前脚。


ほとんど使わない。


それでも。


身体は大きい。


背中の板状の皮膚。


硬そう。


頭部。


低い。


角。


短いものが二本。


昨日は岩陰でよく見えなかった部分も今日は見える。


シリウスが言った。


「正面硬そうだな」


アイリスも見る。


「背中も魔法が通りにくそうです」


アルスは腹側を見る。


柔らかそう。


ただし。


低い姿勢。


狙いにくい。


レインが聞く。


「戦うならどうする?」


昨日はそこで終わった。


今日は。


もう少し先まで考える。


シリウスが答える。


「俺が横に回って動かす」


アイリス。


「背中ではなく脚か腹部」


リリア。


「最初から補助を掛けすぎない方がいいですわ。長引くかもしれません」


アルスは魔素の流れを見る。


「右前脚は弱点。でもそこだけ狙うと暴れる可能性がある」


レインが少し考える。


「じゃあ、最初から倒しに行かない」


シリウスが首を傾げる。


「どうする?」


「退けられるか試す」


広間の奥。


通路。


そこへ行きたい。


魔物を倒すこと。


必須ではない。


追い払えるなら。


それでいい。


五人は少し下がって相談する。


広場。


広い。


逃げられる。


入口。


確保。


魔物。


一体。


状態。


悪い。


撤退。


可能。


条件。


昨日より分かっている。


レインが決めた。


「やってみよう。ただし、倒すことを目的にしない。危なくなったら戻る」


全員。


頷く。


五人は広場へ入る。


レイン。


正面。


アルス。


左。


シリウス。


右。


アイリス。


後方。


リリア。


中央。


大型魔物。


気付く。


頭。


上がる。


低い唸り。


そして。


昨日とは全く違う動き。


一気に前へ出た。


「速い!」


シリウスが声を上げる。


怪我。


している。


だから遅い。


そう思っていた。


違う。


短い距離。


爆発的。


レインが正面から外れる。


魔物。


そのまま。


通過。


止まれない。


右前脚。


使えないぶん。


身体が大きく傾く。


アルスが見る。


「曲がるの遅い!」


シリウスがすぐ反応する。


横から近付く。


でも。


魔物。


頭。


振る。


角。


シリウス。


下がる。


「危なっ!」


倒しに行かない。


まず。


動き。


見る。


二度目。


突進。


今度はレインが距離を取る。


真っ直ぐ。


速い。


でも。


方向転換。


遅い。


右側。


特に。


遅れる。


「右へ曲がりにくい!」


アルスが叫ぶ。


レインが答える。


「じゃあ左から追い込む!」


五人。


少しずつ。


位置。


変える。


倒すため。


ではない。


進ませるため。


奥の通路とは反対側。


広場の端。


そこへ。


誘導。


シリウスが左から見せる。


アイリス。


小さな火球。


当てない。


地面。


横。


魔物。


嫌がる。


動く。


レイン。


正面。


近付かない。


圧力だけ。


大型魔物。


唸る。


何度か突進。


そのたび。


方向を変えさせる。


少しずつ。


奥の通路から離れる。


リリアが言う。


「行けます!」


あと少し。


その時。


魔物が突然。


止まった。


そして。


今までと違う方向を見る。


五人も止まる。


広場の反対側。


小さな岩陰。


音。


微か。


アルスは魔素を見る。


一つ。


小さい。


いや。


二つ。


かなり小さい。


「何かいる」


大型魔物が。


そちらへ。


歩く。


足を引きずりながら。


岩陰。


その奥。


小さな個体。


二体。


同じ特徴。


背中に小さな板状の皮膚。


まだ。


幼い。


シリウスが小さく言った。


「子供?」


誰もすぐには答えない。


でも。


大型魔物は二体の前へ立つ。


こちらを見る。


唸る。


そして。


動かない。


アルスは理解する。


昨日。


通路を塞いでいた。


今日。


怪我が悪化しても。


ここにいる。


逃げない。


「守ってたんだ」


レインも同じことを思ったらしい。


剣を下げた。


「戻ろう」


シリウスも。


今度は何も言わない。


アイリス。


杖。


下げる。


リリア。


頷く。


五人。


ゆっくり。


下がる。


大型魔物。


追わない。


ただ。


見ている。


広場の入口まで戻る。


そこから。


さらに。


少し。


距離を取る。


シリウスが息を吐いた。


「危なかったな」


レインが言う。


「戦ってたら、たぶん最後まで逃げなかった」


アルスも思う。


怪我。


だから。


弱い。


違う。


怪我。


でも。


逃げない理由。


あった。


昨日。


分からなかった。


今日。


見えた。


それでも。


全部。


分かったわけではない。


親子。


なのか。


群れ。


なのか。


同じ種。


なのか。


たぶん。


でも。


断定。


しない。


アイリスが言った。


「今日は先へ進めませんね」


シリウスが奥の通路を見る。


大型魔物。


まだ。


そこ。


「別の道行くか」


レインが頷く。


「昨日の三叉路まで戻ろう」


戦わない。


だから。


探索が終わる。


ではない。


道。


他にもある。


戻る。


大型魔物。


視界から消える。


アルスは記録へ書く。


大型四足魔物。

右前脚の状態悪化。

短距離突進は速い。

右方向への旋回が遅い。

広場内に小型個体二体を確認。

大型個体が防衛行動を取る可能性。

戦闘中止。


そして。


一行。


――弱っていることと、危険が減ることは同じではない。


三叉路。


戻る。


昨日。


右。


今日は。


別。


中央。


緩やかに下る道。


アルスが魔素を見る。


遠く。


一つ。


小さい。


シリウスが地面を見る。


足跡。


古い。


複数。


「こっちは通れる」


レインが言う。


「じゃあ今日は中央を見よう」


五人。


進む。


下り。


緩い。


通路。


広い。


戦える。


少し。


湿度。


上がる。


壁。


濡れている。


ただ。


水路ほどではない。


十数分。


進む。


前。


空間。


大きい。


でも。


昨日の広場とは違う。


天井。


高い。


地面。


中央。


大きく窪んでいる。


そして。


その底。


水。


池。


地下湖。


と呼ぶほどではない。


でも。


かなり広い。


シリウスが言う。


「また水だ」


アルスは近付かない。


まず。


魔素。


水の中。


一つ。


大きい。


動く。


「水の中に何かいる」


全員。


止まる。


水面。


静か。


でも。


奥。


何か。


動いた。


波。


広がる。


アイリスが小声で言う。


「今日はここまでにしませんか?」


レインもすぐ頷く。


「そうしよう」


シリウスが意外そうに見る。


「もう?」


「大型魔物を見て、戦闘も少しした。新しい場所も見つけた。十分」


アルスも同意する。


地下水域。


水中魔物。


新しい条件。


今。


無理して調べる必要。


ない。


戻る。


中央通路。


三叉路。


今度は。


入口へ。


帰路。


もうかなり。


身体で覚えている。


それでも。


確認。


省かない。


入口。


外。


五人だけ。


誰も待っていない。


野営地へ戻る。


アルスは今日の地図を加える。


右。


大型四足魔物の広場。


その先。


未探索。


中央。


下り。


地下水域。


水中反応。


未確認。


左。


以前見た複数反応。


まだ。


未探索。


シリウスが地図を見る。


「道、増えてきたな」


アルスも頷く。


「一日で一方向全部見る必要ないからね」


レインが言った。


「一つずつでいい」


今日。


大型魔物。


倒さなかった。


先へも。


行かなかった。


でも。


分かったこと。


昨日より。


多い。


アルスは最後にもう一度記録を見る。


昨日。


敵。


だったもの。


今日。


守る側。


として見えた。


同じ存在。


でも。


見る情報が増えれば。


意味。


変わる。


ポテンシア。


きっと。


こういうことばかりなのだろう。


だから。


一度見ただけで。


答えにしない。


その方が。


面白かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。