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第114話 進める道、戻れる道

翌朝。


アルスたちは前日と同じ順序で中級ダンジョンへ入った。


入口。


最初の広間。


分岐。


左。


三叉路。


広場。


地下水。


昨日までの道は、もうほとんど迷わない。


シリウスが歩きながら言う。

「だいぶ慣れたな」


レインが答える。

「慣れた頃が危ないけどね」


「それ毎回言うよな」


「毎回必要だから」


アイリスが少し笑った。


地下水の流れる場所へ着くと、五人は一度止まった。


今日はここから先。


昨日は確認だけで戻った。


水は変わらず澄んでいる。


流れ。


細い。


でも途切れていない。


アルスは水の流れる方向を見る。


「奥へ続いてる」


シリウスが言う。

「水沿いに行けば迷いにくそう」


レインも少し考える。

「帰り道としては分かりやすいね」


ただし。


アルスはすぐには頷かなかった。


「分かりやすいけど、安全とは限らない」


昨日まで。


川。


沢。


水場。


便利。


でも。


増水。


滑る。


魔物が集まる。


危険。


それも知った。


五人は水沿いへ進む。


最初。


歩きやすい。


通路も広い。


水。


右側。


常に見える。


シリウスが言う。

「これは楽だな」


でも。


少し進むと。


変わる。


通路。


狭くなる。


水。


広がる。


足元。


濡れる。


さらに。


岩。


滑る。


アイリスが杖を持ち替える。

「ここ、戦闘になったら厳しいですね」


レインも周囲を見る。

「避ける場所がない」


アルスが魔素を見る。


遠く。


反応。


一つ。


まだ近くない。


「前に何かいる」


シリウスが聞く。

「戻る?」


レインは少し考える。


「まだ距離があるなら、もう少しだけ見よう」


進む。


数十歩。


そこで。


完全に止まった。


前。


水。


通路いっぱい。


膝くらいの深さ。


その先。


さらに暗い。


シリウスが言う。

「行ける?」


アルスが水を見る。


流れ。


少し速い。


底。


見える部分。


石。


苔。


滑りそう。


レインが聞く。

「深さは?」


シリウスが棒で確認する。


最初。


膝。


少し先。


もっと深い。


「腰くらい行きそう」


アイリスが言う。

「戻る時に増えていたら困りますね」


それだった。


今。


進める。


でも。


帰れる保証。


ない。


アルスが言う。

「ここは進む道としては使えても、戻る道としては弱い」


レインもすぐ頷いた。


「今日は行かない」


シリウスが水の先を見る。

「気になるけどな」


「僕も」


アルスも本当は気になる。


でも。


それと。


行く。


は別。


五人は戻る。


地下水の地点まで。


そして。


昨日の二股へ戻った。


もう一方。


狭い方。


昨日は選ばなかった道。


シリウスが見る。

「こっち試す?」


レインが頷く。

「ただ、戦闘になったらすぐ戻る」


進む。


最初。


狭い。


でも。


一定。


天井。


低くない。


足元。


乾いている。


昨日の水路より。


動きやすい。


アルスが魔素を見る。


反応。


なし。


しばらく。


何もない。


シリウスが少し退屈そうに言う。

「静かすぎるな」


アイリスが返す。

「それは良いことでは?」


「分かってるけど」


さらに進む。


曲がる。


また。


曲がる。


そして。


少し広い場所。


そこから。


三つ。


道。


シリウスが止まった。


「また増えた」


アルスは地図を出す。


入口から。


分岐。


広場。


地下水。


戻る。


狭い道。


曲がり。


曲がり。


三叉。


線が。


増える。


今までとは違う。


道が。


枝分かれしていく。


レインが言う。

「ここから先、適当に行くのはまずいね」


全員。


同意。


三つ。


右。


正面。


左。


アルスは魔素を見る。


右。


薄い反応。


一つ。


正面。


なし。


左。


複数。


かなり遠い。


シリウスが地面を見る。


「正面、人か何か通った跡ある」


古い。


細い。


引きずったような跡。


レインが聞く。

「魔物?」


「分からない」


正面。


選ぶ。


理由。


魔物反応。


今はなし。


通れる痕跡。


あり。


ただし。


戻れるように。


地形。


覚える。


右壁。


大きな亀裂。


床。


白い石。


左。


天井。


低くなる。


三つ。


記録。


進む。


少し。


正面の通路は。


思ったより長い。


そして。


途中。


空気。


変わる。


アルスが止まる。


「匂い」


シリウスも気付く。


「何かいる?」


臭い。


獣。


腐敗。


少し。


混ざる。


レインが剣へ手を掛ける。


でも。


抜かない。


進む。


慎重。


その先。


広い部屋。


そして。


死体。


魔物。


一体。


かなり大きい。


すでに。


死んでいる。


五人。


止まる。


シリウスが言う。

「俺達じゃないよな」


「当然です」


アイリスが答える。


アルスは魔素を見る。


死体。


ほぼ。


残っていない。


でも。


周囲。


別の反応。


なし。


レインが言う。

「誰かが倒した?」


シリウスが死体へ近付きすぎない位置から見る。


切り傷。


ある。


でも。


一つではない。


噛まれた跡もある。


「冒険者か、魔物同士か」


アルスが言う。


断定。


できない。


ただ。


一つ。


分かる。


ここは。


自分たちだけの場所ではない。


他の魔物。


他の冒険者。


何か。


通る。


それが。


痕跡を残す。


初心者ダンジョン。


配置。


固定。


訓練。


ここ。


違う。


状態。


変わる。


昨日なかったものが。


今日ある。


今日あるものが。


明日ない。


アイリスが言う。

「これも目印には使えませんね」


アルスが頷く。


「うん」


死体。


大きい。


でも。


変わるもの。


だから。


地図には書かない。


ただし。


情報としては。


残す。


この広間。


大型魔物。


死亡個体あり。


原因。


不明。


シリウスが少し笑う。

「地図と記録、別にした方がよさそうだな」


アルスも思う。


地図。


変わりにくいもの。


記録。


その日の状態。


分ける。


「それいい」


レインも頷く。

「帰ったら整理しよう」


広間の奥。


さらに道。


二つ。


でも。


今日は。


行かない。


時間。


十分ある。


疲労。


少ない。


それでも。


情報。


増えた。


水路。


三叉。


死体。


新しい広場。


ここで戻る。


シリウスが聞く。

「まだ行けるけど?」


レインが答える。


「行ける」


少し間。


「でも戻る」


昨日まで。


戻る理由。


疲れ。


荷物。


時間。


今日は。


情報量。


それも。


理由。


覚える。


整理する。


明日。


迷わないため。


帰路。


確認。


広場。


長い通路。


三叉。


白い石。


亀裂。


曲がり。


二股。


地下水。


広場。


三叉。


入口。


五人。


問題なく戻る。


外へ出た時。


案内役が人数を見る。


一。


二。


三。


四。


五。


いつもの確認。


レインが言う。

「今日は二つの道を見ました」


案内役が聞く。

「奥まで行ったか」


「いいえ。情報が増えたので途中で戻りました」


案内役は少しだけ頷いた。


「それでいい」


シリウスが言う。

「今日は褒めた?」


「事実を言っただけだ」


「やっぱり褒めてない」


アルスたちは笑った。


野営地へ戻る。


アルスはすぐ。


紙を二つに分けた。


一枚。


地図。


変わりにくいもの。


道。


分岐。


岩。


水路。


広場。


もう一枚。


探索記録。


魔物。


死体。


水位。


匂い。


危険。


その日だけの情報。


レインが横から見て言う。

「分けると見やすいね」


アルスも頷く。


「道と状態は違うから」


同じ場所。


でも。


毎日。


同じではない。


中級ダンジョン。


攻略。


より前に。


まず。


観測。


それを。


ちゃんと残す方法。


必要。


アルスは今日の最後に一行書いた。


――進める道が、必ず戻れる道とは限らない。


その言葉は。


水路だけではなく。


このダンジョン全体に。


当てはまる気がした。

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