第30話 川沿いのエピローグ
マリアの部屋で食べた軽食ではやはり足りず、町を出る前に三人で遅めの昼食を取った。
今は美味の余韻に浸りながら、川沿いの道を歩いている。
意外なことにマリアが隠れ家的なオシャレなお店を知っていて、餞別だからと言って代金まで払ってくれた。
彼女なりに、この町にケジメをつけたのかもしれない。
「美味しかったなぁ、オムライス……」
カナメは、ハヤシルーの海に浮かんだ、黄金のふわとろオムライスに思いを馳せる。
値段は分からないが、どう見てもお手頃ではない。多分自分では絶対に選べない。
「ジンのも美味しそうだったよね、ビーフシチュー」
「信じらんねえぐらい美味かった……」
なんでも選べと言われ、冗談で高そうなビーフシチューを指したところ、マリアは顔色一つ変えずに注文してしまった。
ジンは高級そうな牛肉に怯えながら一口食べ、一瞬で顔が溶けていた。
相当美味しかったんだと思う。
「でもマリア、ああいうお店、よく知ってたね?」
「出身だからな」
少し薄暗い路地にさりげなく佇んでいたその店構えは、知らなければ絶対見つけられないだろう。 そもそも、薄暗い路地にまさかこんなに美味しいお店があるなんて思わなかった。
「……飯で絆されたみたいで、なんかちょっと悔しいわ」
ジンはマリアからプイと目を背ける。 そんなジンは、一番ビーフシチューにかぶりついていた。
「よく言う。口に入れた瞬間、ひっくり返るかと思うぐらい仰け反ってたぞ」
「お前さ、一言多くしないと喋れないわけ?」
「まあまあまあ……」
カナメは言い合う二人に慌てて手を振った。
ただ、声が響いても、もうそこに敵意は存在しなかった。
一時はどうなるかと思ったが、今は、かつての緊張感なんでどこにもない。
むしろ、不思議と笑みが零れてしまう。
俺もちょっとだけ、明るくなれたかもしれない。




