復讐の準備
それから、私は、立ち上がった。
「お父様」
私は、ベルロワ子爵に、宣言した。
「ヴェルニエ侯爵を、断罪します」
「……どうやって」
「司法に、引きずり出します」
「リリア、相手は、侯爵だ。証拠が、なければ、勝てない」
「証拠は、グスタフが、捕まえた、襲撃者の、自白で、十分です」
——あの夜、グスタフは、襲撃者の、ひとりを、捕まえていた。
——その襲撃者が、ヴェルニエ侯爵の、名前を、吐いていた。
「だが、侯爵は、貴族の、特権で、刑事告発を、揉み消す」
「揉み消せないように、します」
私は、にっこり、笑った。
——にっこり、というか、にやり、と。
「マルセル神官に、相談します。神殿の、改革派の、力を、借ります」
「神殿が、貴族の、刑事告発に、関わるか?」
「関わせます」
「どうやって」
「『神への、冒涜』として、告発します」
——そう。
——ヴェルニエ侯爵は、コレットを、雨の中で、殺した。
——コレットは、神殿改革派の、マルセル神官に、洗礼を、受けていた。
——だから、ヴェルニエは、『神の、洗礼を、受けた者を、殺害した』ことに、なる。
——『神への、冒涜』。
——神殿が、動く理由が、ある。
ベルロワ子爵は、長く、考えた。
「リリア……君は、本当に、復讐に、神殿を、巻き込むのか」
「巻き込みます。これは、復讐、であると同時に、改革の、第一歩、です」
「改革?」
「はい」
私は、子爵の、灰色の目を、見つめた。
「貴族が、平民を、欲望のままに、殺す、その慣習を、ぶち壊します。これを、機に、エトワール王国の、司法と、貴族特権を、ひっくり返します」
子爵は、息を、呑んだ。
「リリア、君は、本気か」
「本気です」
「……分かった」
子爵は、立ち上がって、私の、肩に、手を、置いた。
「君を、信じる。私の、家を、賭けて、君に、賭ける」
「ありがとうございます、お父様」
——よし。
——復讐、開始。
——ヴェルニエ侯爵。
——あなた、何を、敵に、回したか、思い知らせる。
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