第二十四話 モンフォール侯爵家の危機
# 第二十四話 モンフォール侯爵家の危機
神殿との対立を、なんとか、切り抜けた、その翌週。
私は、いつものように、屋敷の、応接間で、四人分の、魔力肩代わりを、終えた、ところだった。
——今日も、楽勝。
私の魔力の器は、もう、奥様の、五倍の魔力税を、肩代わりしても、ふらつかない、レベルに、なっていた。
廊下を、出ようとした、その時——
「リリア、ちょっと」
長女、エレオノールが、私を、呼び止めた。
「はい」
「お前、最近、夜、ベッドが、空っぽだ、と、奉公人棟の、見張り役が、言っていたわ」
——!
私の、心臓が、止まった。
「どこに、行っているの?」
エレオノールの、紫の目が、冷たく、私を、見ていた。
——ヤバい。
——バレかけ、ている。
私が、口を、開きかけた、その時——
「お姉さま!」
別の声が、応接間に、響いた。
エルネスティーヌだった。
三女が、ばたばたと、応接間に、駆け込んできた。
「お姉さま、リリアが、夜、ベッドにいないのは、わたしのせいです!」
「は?」
エレオノールが、戸惑った。
「わたし、夜、お腹が空くんです。それで、リリアに、夜中、こっそり、台所まで、お菓子を、取りに行ってもらってるんです。だから、リリアは、毎晩、夜中に、外に、出るんです」
——!
私は、エルネスティーヌの、ピンクブロンドの、ふわふわの髪を、見つめた。
——エルネスティーヌ……っ!
——庇って、くれた!
エレオノールは、ため息を、ついた。
「エルネスティーヌ、はしたないわ。お菓子なら、寝る前に、一緒に、食べなさい」
「はーい」
エルネスティーヌは、にっこり、笑った。
そして、私の、方を、ちらり、と、見た。
——内緒、ね。
その目は、また、そう、語っていた。
私は、ほんの、小さく、頷いた。
——ありがと、エルネスティーヌ。
応接間を、退出した私は、廊下で、深く、息を、吐いた。
——危なかった。
——でも、エルネスティーヌが、味方に、なってくれた。
——本当に、本当に、ありがたい。
——いつか、絶対、君にも、ちゃんと、お礼を、する。
私は、月明かりの、廊下で、未来の、お礼の、リストに、エルネスティーヌの名前を、加えた。
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