第二十一話 神殿の聖歌隊、レオン
# 第二十一話 神殿の聖歌隊、レオン
照明魔石が、王立軍の独占供給で、月、金貨二十枚の、安定収入になった。
私の貯金は、加速度的に、増え続けた。
グスタフは、職人を、五人、雇った。
コレットには、毎日、ちゃんとした、ご飯と、新しい服を、与えた。
リアナには、月、銀貨二枚、送金した。
オーレリアンの食事は、毎晩、贅沢に、なった。
そして——
私は、第三号、タレントの、発掘に、動き始めた。
「歌い手と、踊り手が、揃った。次は、また、別の、種類の、才能が、欲しい」
ある夜、私は、グスタフに、相談した。
「次は、どんな子を、探す?」
「もっと、本格的な、声楽の、訓練を、受けた、子。神殿の聖歌隊、出身、とか」
「神殿、か」
グスタフは、顎を、撫でた。
「最近、神殿、追放された、聖歌隊の、少年、いるぞ」
「え、どこ」
「下町の、北、修道院、近く。元、神殿の、聖歌隊の、メイン・ボーイ・ソプラノ。十一歳。声が、変わり始めて、神殿を、追い出された、ところを、見た」
——きた。
私は、その夜、修道院の近くの、貧民街に、足を、運んだ。
そして、見つけた。
煉瓦塀の、隅っこで、薄汚れたシャツを着て、何かを、口の中で、囁いている、痩せた少年。
近づいて、耳を、傾けた。
——歌、だ。
低い、けれど、澄んだ、変声期の、ボーイ・ソプラノの、名残。
「君、レオン?」
少年は、振り返った。
栗色の、長めの髪。
青い目。
神殿育ちらしい、白い肌。
「……誰、だ、お前」
「リル、っていうの。歌、上手いね」
少年——レオンは、警戒した目で、私を、見た。
「お前、神殿の、回し者か」
「違うよ。ただの、聴衆」
「……」
「神殿、追放されたって、聞いた。なんで?」
レオンの、青い目が、揺れた。
「……声が、変わったから。ボーイ・ソプラノの、声が、出なくなった。神殿の、聖歌隊は、永遠の少年の声を、求める。だから、俺は、用済み」
——なるほど。
——カウンターテノール、なれそうな、子。
——むしろ、変声後の方が、たぶん、もっと、深い歌声に、なる。
「レオン。私と、一緒に、歌、続けない?」
「は?」
「私、芸能事務所を、作ってるの。歌い手と、踊り手が、もう、いる。次は、君を、入れたい」
レオンは、私を、ぽかんと、見つめた。
「……お前、何、言ってるんだ」
「私、君の、新しい歌、聞きたい。神殿の歌じゃ、ない、君だけの、歌」
「……そんなもの、俺、持ってない」
「持ってないなら、私が、教える」
私は、にっこり、笑った。
「ご飯、毎日、出る。歌の、練習も、できる。仲間も、いる。来ない?」
レオンは、長く、考えた。
そして——
「……行く」
頷いた。
「だって、もう、行く、場所、ない、から」
私は、レオンの、痩せた手を、握った。
「レオン。これから、よろしくね。私の、第三号、推し」
「『推し』って、何?」
「あー、また、それ」
私は、声を、上げて、笑った。
——よし。
——三人、揃った。
——歌い手、リル(リリア)。
——踊り手、コレット。
——男声聖歌、レオン。
——そして、地下牢に、まだ、繋がれた、不死鳥、オーレリアン。
——四人。
——私の、最初の、ユニットが、完成、した。




