決闘の、夜明け
翌日の、夜明け前。
私と、オーレリアンは、王宮の、東の、丘に、向かった。
ガストル王、リアナ、レオン、グスタフ、エヴリン、護衛——
全員が、付き添ってくれた。
東の、丘の、頂に、セラフィムが、待っていた。
銀色の翼を、広げて。
「来たな、オーレリアン」
「ああ」
オーレリアンも、暁色の翼を、広げた。
二羽の、不死鳥が、対峙した。
私は、丘の、麓で、両手を、握りしめて、見守っていた。
「ルリアージュ嬢」
ガストル王が、私の、隣に、立った。
「あの、二羽の、決闘は——、千年に、一度の、神話の、再現、だ」
「神話?」
「我ら、獣人連邦には、伝承が、ある。不死鳥族、二羽が、相争うとき——、神は、両者を、試す。心の、清い、方が、勝つ、と」
夜明け、の、太陽が、地平線から、昇った。
そして、決闘が、始まった。
「オーレリアン!」
セラフィムが、銀色の、炎を、放った。
「セラフィム!」
オーレリアンが、暁色の、炎を、放った。
二色の、炎が、空中で、ぶつかった。
爆発。
轟音。
そして、二羽の、不死鳥が、空中で、絡み合った。
剣戟、ではない。
炎と、炎の、戦い。
そして——
歌、と、歌の、戦い。
「神よ、我に、力を!」
セラフィムの、銀色の歌声、が、空を、震わせた。
「神よ、彼の、心に、平安を!」
オーレリアンの、暁色の歌声、が、応えた。
——え?
——セラフィムは、攻撃の、歌。
——オーレリアンは、平安の、歌。
——同じ、不死鳥でも、歌の、ベクトルが、違う。
オーレリアンは、セラフィムを、攻撃しようとは、していなかった。
オーレリアンは、セラフィムの、心の、傷を、癒やそうと、していた。
「セラフィム、戻ってきて、くれ」
オーレリアンの、歌声が、響いた。
「俺たちは、家族だ。俺は、人間の、世界に、根を、下ろした。だが、俺は、不死鳥族の、誇りを、忘れていない」
「俺は、人間の、世界に、不死鳥族の、歌を、伝えた。彼らは、それを、感謝、している」
「セラフィム、お前も、俺たちの、家族の、ことを、忘れずに、生きてくれ」
「人間の、すべてが、敵では、ない」
セラフィムの、銀色の炎が、徐々に、勢いを、失っていった。
そして、セラフィムは、空中で、止まった。
「……オーレリアン」
「うん」
「お前、本当に——」
「うん」
「俺たちの、家族の、ことを——、忘れていなかった、のか」
「忘れる、わけ、ない」
オーレリアンの、紅い瞳に、涙が、滲んでいた。
「父上、母上、祖母様、姉様、弟。俺は、毎晩、彼らの、ことを、思って、歌っていた」
セラフィムは、ゆっくりと、空中から、降りた。
そして、地に、跪いた。
「オーレリアン……」
「うん」
「俺、間違っていた」
「いや、お前の、痛みは、分かる」
「俺、お前を、本当に、殺そうと、していた」
「分かっている」
「でも——」
セラフィムの、青い目から、涙が、溢れた。
「お前の、歌を、聞いて——、俺の、心が——、震えた」
オーレリアンも、地に、降りた。
そして、セラフィムを、強く、強く、抱きしめた。
「セラフィム、俺の、家族」
「オーレリアン、俺の、兄弟」
二羽の、不死鳥が、夜明けの、丘で、長く、長く、抱擁、を、交わした。
私は、丘の、麓で、両手で、顔を、覆って、号泣、していた。
——よかった。
——本当に、よかった。
ガストル王が、私の、肩に、手を、置いた。
「ルリアージュ嬢、神話は——、平和に、終わった、ようだ」
「はい、ガストル王陛下」
夜明け、の、太陽が、丘を、温かく、照らしていた。
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