63.
その後は、今後の事についての話になった。
ドラッヘ王国の諜報機関の調べによると今回、モルガーナ達がドラッヘ王国に侵攻している間に、女王から浄化の加護を受けられなかった国土は澱んで濁り、エルフやハイエルフ達は次々と病に倒れ、その数を減らしていったという。
モルガーナは帰国後、竜種の国に侵攻している間に加護を受けられず死んでしまったエルフ族の欠点を補おうと、浄化の加護が受けられずともどんな環境でも生きていけるように自らが編み出した魔法を同族達に掛けたのだ。
そして、それほど時を置かずして魔法の効果は現れたのだが、更なる悲劇を齎しただけだったようで国内は混乱しているのだという。
その事を受けて、大臣達の中から反撃するならば今しか無いかもしれないという意見が出ているようなのだ。
「こちらも甚大な被害を受けている。ここは慎重に行くべきではないのか?」
大公閣下の言葉に私達も頷いた。
だが、確かにこの機に乗じて反撃し、相手の戦意を挫くという考えにも一理ある。
「難しいところですね。」
ケプラー宰相(仮)が腕組みして言った。
その時、通信用の魔石が赤く光った。
「「「「!?」」」」
クライスが魔石に手を翳して魔力を流す。
「どうした?」
「グロリオサ王国への侵攻が決定しました。大至急お戻り下さい。」
ケプラー宰相(仮)は魔石に手を翳したまま天井を仰ぐ。
「わかりました。すぐに戻ります。」
翳していた手を離すと魔石から光が消える。
それを合図のように皆が椅子から立ち上がった。
「「ご武運を。」」
そう言って右手を差し出す大公閣下と私。
クライスが握手を交わし、次にケプラー宰相(仮)も握手を交わすと王都へと戻る荷造りの為にそれぞれ部屋から出て行った。
王都オストはその機能を果たせない為、ゾイレが新しい王都に決まり政務も全てそちらに移行している。
当然、二人が戻るのもゼーリエである。
二人が戻って行くのを見送った後、私も大公閣下と別れの挨拶を交わした。
「どうしても行かれるのですね。」
「はい。モルガーナの竜種殲滅に抗う為に魔女になったのですから。」
「毒でもって毒を制する。ですか。ご武運を。必ず戻って来て下さい。エレナも待っているのですから。」
「はい。約束はできませんが戻って来たいです。」
エレナは大公閣下の愛娘である。
春の陽だまりのような彼女の笑顔を思い出す。
正直、あの笑顔を曇らせたくはない。
けれど、相手はあのモルガーナだ。
稀代の天才と言われている彼女を相手に生きて帰れる保証はない。
恐らく、新たな魔法を編み出している可能性が高い。
それでも…。
拳を握り締め、顔を上げて前を見た。
歩き出そうとしたその時大公閣下に呼び止められた。
「ケンプファーに乗って行って下さい。必ず返して下さいね。」
言葉に詰まった。目の奥が熱い。
必ず生きて帰れと言ってくれる。
ここが帰って来るべき場所なのだと。
それが嬉しくて。
「…ありがとうございます。返しに来られなくても生きて帰します。では、行ってきます。」
大公閣下の愛馬ケンプファーに跨がり、軽く腹を蹴って駆け出した。
グロリオサ王国へと向かって。
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(*・ω・人・ω・)




