5.
カーテンの隙間から光が差し込む。
朝だとわかっていてもまだ眠くてすぐに起きる気になれなかった。
シーツに包まりうつらうつらしながら昨夜の事を何とはなしに考える。
ギルマスの男はシュタルクと名乗った。
背が高く、私の背は彼の胸の辺りまでしかない。
黒髪に翡翠色の瞳をして肩幅があり胸板も厚くギルマスと言うよりは騎士かハンターのようで腰に佩いた剣からは魔法(魔力)の匂いがした。
恐らく魔剣だろう。
初めて見る剣を何故魔剣だと思ったのか…。
魔法を付与した剣が存在しているにも拘わらず。(魔法を付与した剣も同じような匂いがする。)
そして、彼が言った言葉…、私の持つ魔銃が他の魔銃とは違うというのはどういった事なのか…。
他の魔銃を見た事のない私にはその違いがわからない。
何だか考えだしたら眠気が覚めてきた為、諦めて起きる事にした。
身支度を整えると宿屋の一階が食堂になっているので朝ご飯を食べに向かう。
で…またもやこの状況である。
「ギルマスってよっぽど暇なんですね。こんな所で油売ってていいんですか?」
目の前で柔やかに人の食事風景を見物しているギルマスに皮肉を込めて言った。
「俺が居なきゃ仕事が回らない訳じゃないからいいんだよ。そんな事より“シェリー”でどうだ?」
「シェリー?って…私はアルコールは…。」
「酒じゃなくて愛称だよ。お嬢ちゃんの。“シュッツェーリア”だから“シェリー”中々いいだろう?」
「はあ?何勝手な事言ってるんですか。だいたいあなたと私ってそこまで親しくないですよね。」
「いや、もう決めた。それとも“お嬢ちゃん”の方がいいのか?」
「…シェリーでいい…です。」
何だかどうでも良くなって投げやりに言うと食事を再開した。
私がパンを千切って口に入れ、咀嚼しているとシュタルクが一枚の依頼書を私の目の前に置いた。
「え?」
依頼書に書かれている内容に驚く。
なぜならばそれは、バジリスクの討伐依頼書だったからだ。
「バジリスクだなんて一体何の冗談?私はまだB級ハンターなのよ!」
それを聞いたシュタルクがすっと目を細めて私を見る。
思わず昨夜の出来事が頭を過る。
── 昨夜の出来事 ──
テーブルを挟んで向かい合わせに座った私達は食後のお茶を飲みながら他愛のない話をしていた。
不意に彼は「魔銃を見せてくれないか?」と言った。
当然、私は何故か問うた。
すると彼が言ったのだ。
「その魔銃を何処で手に入れたんだ?」と。
それまで柔やかだった表情はなりを潜め怖いほど真剣な表情で詰問するような低い声で聞いてきた。
蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった私が答えられずにいると更に言った。
「現在、この世界で確認されている魔銃の数は五丁だ。その内、使い手の決まっているのが二丁。しかも其れ等の所在は確認されている。何処で手に入れた?」
何とか気持ちを立て直し
「これは私の魔銃だ。誰かから奪った物でも買った物でもない。」
「だから何処で手に入れたか聞いているだろう?」
シュタルクがこちらに身を乗り出す。
その時になって気付いた。
私達が座った席は店の奥まった場所にある。
そして、出口への通り道にあるテーブルの席に着いているのが彼の部下だという事に。
矢張り彼は、ヘラヘラとチャラい事を言っていても油断のならない奴だったのだ。
私は、隠そうとしても余計に立場が悪くなると思い質問に答える事にしたのだった。
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