54.
─ ブリッツ side ─
立ち上がり着衣に付いた汚れを叩き落とす。
あれがマグノリアだと!?
幼い頃の面差しそのままだった。
若返ったとでもいうのか!?
隠していてもわかる魔力量。
私の魔力量は、ただでさえそれに(遥かに)及びもしないというのに、更に増えていただと!
あまりの悔しさにギリギリと奥歯を噛み締める。
「戻るぞ!」
苛立ち混じりに号令をかけると馬車に乗り込む。
「兄妹の再会といったところかしら。」
愉しそうにくすくすと嗤うハイエルフの顔を睨み付ける。
「感想は ── その顔を見ればわかるわね。ウフフフ…。」
面白がっているこの女にも苛立つ。
どいつもこいつも私を馬鹿にしやがって!
まぁいい。忌々しい国王とマグノリアを始末するまでの辛抱だ。
と、その後の事を想像して溜飲を下げた。
△▽△▽△▽△
その日の夜 ──
幾つかの町や村を通り過ぎ野宿していた。
見張りをしながら、火を絶やさないように焚き火の前に座っていた。
「で、どうだった?実の兄との再会は…。」
暖かいシナモンティーにラム酒が少し入ったカップを私に手渡した後、隣に座ったシュタルクが聞いてきた。
一応、気にしてくれていたらしい。
「何の事は無い。ただ実兄の私へ向けた嫌悪感や憎しみを再確認しただけ。」
それ以外、言いようが無かった。
実際そうなんだろうし…。
「そっか…。まぁ…その、なんだ…落ち込む必要無いぞ。血が繋がっていても性別が違うってだけでわかり合えない事もあったりするからな。」
「うん。ありがとう。」
彼の気遣いに感謝した。
幼い頃から歩み寄ろうと私なりに頑張ったつもりだったけど、空回りしているだけなのが自分でもわかっていた。
挙げ句、嫌われて憎まれてりゃ世話無いよね。
けど、こればかりは仕方無いのかもしれない。
だからパーシバルが番で良かったと思っている。
だって、“番忘れ”を飲まされていたにも拘わらず、モルガーナの攻撃から護ろうとしてくれたって事はそれだけ大切に思ってくれていたんだと思う。
それにシュタルク達も気遣ってくれているのがわかるから。
だから…。
と、全身の毛が逆立つような感じがした。
「「「「っ!?」」」」
手の中に現れた魔銃を握る。
目の前でマントに包まって仮眠を取っていたブリーゼ国王とケプラーも剣を掴んで起き上がった。
「何だ?」
「わからない。だが殺気のような物を感じる。」
声を潜めて聞いてきたケプラーにシュタルクが答えた。
暗闇の中、気配を殺して私達の様子を窺う何者かがいるのは間違いなかった。
息を殺して辺りを見回す。
どこだ?
どこにいる?
「「「「!!」」」」
草を踏む音がした。
音がした方向に目を向けた。
それはすぐ目の前にいた。
速い!!
思うと同時に飛び掛かってきた。
猿!?
「ヒヒだ!」
魔銃が火を噴く。
だがヒヒは素早く避ける。
鼻の頭に皺を寄せ、牙を剥いて叫びながら威嚇してくる。
「おいっ!」
ケプラーの声に周囲に目を遣るとヒヒの群れに取り囲まれていた。
私に飛び掛かってきたヒヒは、尚も威嚇しながら群れの元へと移動する。
そしてしばらくの間、睨み合いが続いたのだった。
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