47.
私を憐れむように見ていたブリーゼ国王が言う。
「今日はこのくらいにしておこうか。続きは明日にでも。じゃあ、ゆっくり休んでくれ。」
そして、ブリーゼ国王との話は終わり、彼は執務に戻り、私達は客室へと案内された。
部屋に入った後、何をする気にもなれず小卓に置かれた水差しからコップに水を注ぎ入れて飲んだ。
部屋の窓からは夕日に染まる王都の街並みが見える。
暫くその景色をぼんやりと眺めていた。
椅子に座り、手の平に現れた魔銃を小卓の上に置く。
今日、ブリーゼ国王から話を聞いて、ひょっとしたらハーヴィーやシュタルクの従兄を贄にして魔銃を手に入れたのかもしれないという考えが頭に浮かぶ。
そんな事は無いと否定したい。しかし否定しきれない。
何かに追い詰められ、魔女の魔法に手を染めた五百年前の私。
その私がモルガーナを斃す為に婚約者だった男を…。
思わず込み上げる吐き気に口元を手で押さえた。
段々とそれが本当の事のような気がしてくる。
まるで底なし沼に沈み込んでいくみたいに暗い思考に取り込まれていったその時、ドアをノックする音がして現実に引き戻された。
ドアを開けるとそこに居たのはシュタルクだった。
「ちょっと…いいか?」
ワインのボトルとグラスを軽く掲げて見せ、少し顔色の悪い彼が疲れたように笑う。
私は頷き、彼を部屋へと迎え入れた。
小卓の上にグラスを置いた彼は、ワインを注ぎ入れ、片方を私の前に置く。
互いにグラスを手に取り軽くグラス同士を合わせてワインを飲んだ。
手の中のグラスを回しながら揺れるワインを見ていたシュタルクがポツリと呟く。
「その…以前、従兄上を贄にして魔銃を手にしたって言ったの…あれ…すまない。お前はそんな事をするような奴じゃない。」
顔を上げると向かいに座っている彼と目が合った。
「「…。」」
お互いに言葉も無いまま暫く見詰め合う。
先に視線を逸らしたのは彼で「ほら、あれだ…暗いのはお前らしくない…ぞ。」と顔を赤くして言った。
意外と酒に弱いらしい。
それに何だか可愛くてちょっと笑ってしまった。
私が笑ったのを見て彼も表情を緩める。
どうやら気を遣わせてしまったようだ。彼なりに心配してくれたのだろう。
その後、少しだけ話をして彼は自分の部屋へと戻って行ったのだった。
窓の傍まで行き、空を見上げる。
残念ながら月は見えなかったが星が瞬く綺麗な夜空だった。
色々な話を聞いて、あれやこれやと思い悩んでみても結局は私が記憶を取り戻さなければ何もわからないのと同じだと思った。
それに、こうしている間もモルガーナが裏で何か画策していても不思議ではない。
寧ろ何も画策していない訳など無いのだから。
その後すぐに床に就いた私は、早朝叩き起こされる事になるのだが、この時の私はそんな事を思いもしなかった。
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(*・ω・人・ω・)




