46.
執務室の隣にある応接室へと移動してそれぞれ席に着くと目の前にお茶を出された。
私の正面に座る髪と瞳の色が違うだけの似た顔 ──
その目が私の顔をじっと見ていた。
「ふむ…。」
「あの…何か?」
テーブルに両肘を突き手を組んで顎を乗せたまま何かを考えているようだった。
やがて組んでいた手を解き、背もたれに背を預ける。
「…気に食わんな。」
「「?」」
いきなりの言葉に訳がわからない。
けれどブリーゼ国王は、そんな事など関係無しにカップを手に取りお茶を飲んでいる。
益々訳がわからない。
「…あの?」
戸惑いつつも問いかけたのだが返ってきた言葉は、更に私を困惑させた。
「血の契約によって真の姿を現せ」
「え?」
バシッ!!
そして、次の瞬間何かが弾かれるような音がした。
「っ!?なん…だと。」
ブリーゼ国王が驚愕の表情を見せた。
今のは呪文???
「何をなさったのですか?」
「其方の今の姿は本来の物ではないだろう?それを解こうとしたのだが…。」
「本来の物?」
「恐らく…少なくとも髪と瞳の色は本来の色ではない筈だ。それを解こうとしたがどうやら弾かれたらしい。」
「そ、そうなのですか!?」
「あぁ。まず間違いないだろう。だが…ひょっとすると記憶とともに封印されているのかもしれないな。」
「また記憶…ですか。」
おまけに封印だなんて怖いフレーズまで飛び出した。
「一体誰が?」
「さあな。それこそ其方の記憶が戻らない事にはわからんだろう。」
そう言って、お茶を飲み終えたらしく傍にいた侍従にお茶のお代わりを頼んでいた。
新しく淹れられたお茶が目の前に置かれると、手に取り一口飲んだ。「」
そこで私は疑問に思っていた事を聞いた。
「先ほど呪文を詠唱していたようですが…魔法は禁忌ではなかったのですか?」
「ふっ。禁忌か…。禁忌とされているのは魔女が使う魔法だよ。魔女の使う魔法に対処する魔法の事ではない。」
そこまで言ってお茶を飲み、言った。
「魔女が使う魔法は、人を惑わせる物が多いからね。魅了然り、姿変えの魔法然り。そして、破滅を齎す物も多い。故にそれらの魔法に対処する魔法は昔から伝わっている。とはいえ、王族に限られているけどね。」
ガタッと大きな音を立ててシュタルクが腰を浮かせた。
「そ、…ならば何故従兄上がそれを知らなかったのですか!」
鼻白んだように目を細め、息を吐き出してブリーゼ国王がシュタルクに答えた。
「君達の敬愛する従兄上とやらは戦の最中であるにも拘わらず竜王位、国王位を余と君の兄に押し付けたのを忘れたのかな?あぁ、そうか、君は産まれてすらいなかったね。」
「ぐっ…。」
あからさまな嫌味に拳を握るシュタルク。
「それに…勿論伯父上は知っていたさ。」
「っな!?知って…。」
驚愕の表情を浮かべるシュタルクに続けて言った。
「…モルガーナの使う魔法には通用しなかったんだよ。」
ブリーゼ国王が私を見る。
「追い込まれた君達は…いや、君は魔女の使う魔法に手を染めた。」
「「っ!?」」
私もシュタルクも驚くしかなかった。
「もっとも、追い込まれた君を唆した者がいたんだけどね。君の実兄だよ、マグノリア。」
「ぇ…。」
ハーヴィーに会って以降、記憶が無い私への情報量の多さに頭も心も追いつかない。
脳がオーバーヒートしそうな私を憐れむように見るブリーゼ国王。
私は身動き一つできなかった。
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