43.
ウールシュプルング大陸に渡ると聞いて、またあの海岸沿いの道を通らねばならないのかと、うんざりしていたのだが今回はこの国の南にあるデヒャー山脈を越え、ツヴィシェンラウムラントという国にあるクラインブーフという港町から船で更に南のウールシュプルング大陸へ渡ると聞いてホッとしていたのだが…。
…甘かった。
デヒャーという名前の山脈だけあって標高が高い上、道幅は物凄く狭く、一歩踏み外せば谷底までノンストップで落ちる事ができそうなほど。
おまけに山の天気は変わりやすい。
風が吹けば強風、雪が降れば猛吹雪で辺り一面真っ白の視界ゼロである。
危険極まりない。
故に、猛吹雪でホワイトアウトしている時はビバークし、天候が回復したら先に進む。の繰り返し。
しかも、やっぱりここでも出たのだ。
魔獣というか怪鳥グライフフォーゲルが。
姿勢を低くし、何とか攻撃を躱して遣り過ごそうとするが、背負っている荷物が邪魔をする。
隊商が雇っている護衛の一人が荷物を掴まれ、天高く羽ばたく怪鳥にあっという間に連れ去られた。
案内人の話によると、あのまま巣まで運ばれ餌にされるのだという。
運が悪いとしか言いようがない。
それでも先に進まなければならない私達は再び歩き出した。
一週間掛けて山を越え、麓の村まで辿り着き、隊商とはそこで別れた。
案内人の話では今回、一人の犠牲者で済んだのは運が良かったらしい。
現に、あの後二回ほど怪鳥の襲撃を受けたのだから。
△▽△▽△▽△
その日泊まった宿でシュタルクからウールシュプルング大陸の事や実兄だというブリッツ・ハウプシュタットについて知っている事を聞いた。
ウールシュプルング大陸は元々竜種達が住んでいた大陸であり、竜種達にとっては祖国とも言える聖地だった。
だからという訳でもないだろうが神殿が多く、「そこからも何か情報が得られるかもしれない。」との事。
まだ三百歳の彼から聞けたのはその程度の情報だけだった。
それよりも明日以降の旅程の方が問題だった。
ウールシュプルング大陸へ渡る。
そう…船である。
そして船酔い…。
今度こそ魔獣が出ない事を願うばかりだ。
けれど、世の中そんなに甘くなど無い。
やっぱり出た。出やがった。
今度は大ダコかよ!
と思っていたのだが違った。
大ダコよりも厄介なヤツが出た。リーゼンクラッベクラーケだ。
リーゼンクラッベクラーケとは、クラーケンの頭の上に大ガニがくっついている化け物で、クラーケンの腕や食腕で遠距離攻撃、大ガニの脚や爪で近距離攻撃を仕掛けてくる。
腕や食腕の攻撃を掻い潜り、魔獣本体に攻撃しようとしても大ガニの脚や爪の攻撃が待ち受けている。
それに一発でも(船が)攻撃を受けたら船が破壊されてしまう。
そうなったら海上に放り出された私達に残されるのは、魔獣の餌食になる運命だけなのだ。
クラーケンの腕や食腕の攻撃で海上は荒れ、高い波が何度も船に押し寄せ、船は波間に浮かぶ木の葉のように高波に翻弄されて大きく揺れ続ける。
『うっぷ…。』
大きく揺れる船体
ぐるぐると回る視界
立っていられない私は甲板の柵にしがみ付きながら『オボロロロ…。』。
シュタルクは前回以上に苦戦を強いられている。
私も追尾の魔弾を連射しながら彼を援護するも埒があかない。
いい加減、目覚めてくんないかなぁ…。
そう思うも、魔弾の射手が目覚める気配は無い。
その時、食腕の攻撃を掻い潜って本体に攻撃しようとしたシュタルクが大ガニの爪に掴まれそうに…。
気付いた時には甲板を蹴り空中へ。
「っ!?」
「っしまっ!?」
シュタルクを突き飛ばした私は、大ガニの爪に挟まれた。
大ガニが爪に力を込める。
何とか鋏まれないように頑張るつもりだったが、込み上げてきた。
と、突然魔弾の射手が目覚め、空へ向けて銀の弓を引き絞り、魔弾の矢を放つ。
「ぜ、全員退避!ここから離れろーっ!!」
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ありがとうございます。
(*・ω・人・ω・)




