42.
あれから四日経ち、私の怪我もほとんど回復した。
何か怪我の治りが早くね?と思っていたけれど、どうやらというかやっぱりというか、これまでの話によると私は竜種だったらしい。
竜種は治癒力が高いらしく怪我の治りも早い。
で、国王ハーヴィー・エーレンフリートに呼び出され、彼の執務室に居る。
居るのだが…。
ハーヴィーの隣に気不味そうに目を泳がせているシュタルクが立っている。
「何故あなたが…?」
すると突然、見事な土下座をする。
何だかゴッ!と額を床に打つけたような大きな音がしたような?
まぁいいや。
スルーだスルー。
私が無言でいる所為か、シュタルクも黙ったまま土下座の姿勢でいる。
「あー…。その…シュタルクだが、本名はカール・ヨアヒム・エーレンフリート、俺の年の離れた実弟だ。まだ三百歳だから五百年前、まだ産まれていなかったんだ。」
沈黙に耐えかねて口を開いたのはハーヴィーだったが、とても気不味そうに視線を彷徨わせながら言う。
「…でしょうね。」
冷たく一言で返す。
「ははは…。」と渇いた笑い声でハーヴィーが笑う。
「で…だな、フェルゲセンハイトへはシュタルクも同行させる。こいつの腕は証明済みだろう?それに信用できるしな。」
「信用できる。」その言葉に、ギッ!とハーヴィーを睨む。
「信用ねぇ。彼に対する信用は私には無いわ。」
当然だ。
だって、彼は兄である国王の指示でこの国に私を連れて来て引き渡し、後は知らんぷりだったのだから。
「…すまなかった。でも、あんな事になるなんて思わなかったんだ。」
仕方ない。
フェルゲセンハイトへ行くには…いや、行った後も力になって貰わなければならないのだから。
「仕方ないわね。シュタルクの力が必要なのは事実だし…。」
「シェリー、ありがとう。今度こそ信用して貰えるように頑張るから。」
顔を上げて嬉しそうに言う。
が、信用となると話は別だ。
もっとも口に出して言ったりはしないけどね。
相変わらず記憶は戻らない。
しかし、モルガーナがいる限り命が狙われ続ける。
五百年前の私はどうやって彼女と戦ったのか?
少なくとも五分五分に近い戦いだったのではないのだろうか。
そうでなければ、記憶を失ったとはいえ私が生きている筈がないのだから。
△▽△▽△▽△
その夜、国王の私室にて ──
「フェルゲセンハイトのあるウールシュプルング大陸に渡った後は気を抜くなよ。ブリッツは油断ならない男だ。何せ実妹を貴族籍から抜いただけでなく、出生籍すら抹消した奴なのだからな。」
「わかった。」
「彼女の記憶だけでなく、魔銃の秘密もわかるならば有難いのだがな。」
「それってそんなに重要な事なのか?」
「ああ。あの魔銃を持っていたモルガーナと渡り合って生きているんだ。おまけに魔弾の射手まで手に入れたんだぞ。重要に決まっている。」
「…。」
「もし、彼女なり魔弾の射手なりがモルガーナや他国の手に落ちるようなら彼女を消せ。そして魔弾の射手を持ち帰るのだ。」
「承知しました。」
シュタルクは、胸に手を当て頭を下げると国王の私室から出て行ったのだった。
△▽△▽△▽△
同じ頃、フェルゲセンハイトにて ──
「ほう。」
「ブリッツ様、何事かございましたか?」
珍しく機嫌の良さそうな主に侍従が尋ねた。
「なぁに、ハーヴィーの小僧から来た手紙に面白い事が書かれていただけだ。」
「面白い事…でございますか?」
「いや、気にする必要は無いよ。どうせすぐに片が付くからね。」
そう言って口角を上げる主が嬉しそうなので侍従はそれ以上を詮索するのを止めた。
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