41.
「何か思い出せたか?あの時…何があった?」と言われても何も思い出せない。
その事を責められているようで息苦しさからゴクリと唾を飲み込んだ。
どれだけ思い出そうとしても何も…一片の欠片すら思い出せない。
「ごめんなさい…本当に何も思い出せない。」
俯き指先が白くなるほど手を強く握り締めた。
「くそっ!」
座っているベッドに拳を打ち付ける国王。
「…従兄上と呼んでいた方って、貴方にとって大切な方だったんですね。」
「大切だったさ。国王だったし何より本当の兄のように慕っていたんだよ。なのに…。」
「…。」
遣り切れない思いでいっぱいだろう彼に掛ける言葉が見当たらない。
「お前だってそうだろう。番だったんだから!いや、番じゃなくたって愛していた筈だ。なぁ…本当に忘れてしまったのか?」
今にも泣きそうな表情を浮かべ、袖を両手で掴み、縋るように言う彼に正直困り果ててしまった。
だって…私の中にはそこだけぽっかりと穴が空いたように本当に何も無いんだから。
「すまない…。」
やっとの思いで絞り出したその一言しか出なかった。
それを聞いた彼はますます項垂れてしまった。
居たたまれなくて早くその状況から逃れたくて、袖を掴む両手を剥がそうとした。
が、いきなり彼が勢い良く顔を上げた。
驚いた私と彼の目が合った。
何か言いたげに何度か口を開閉させた後、意を決したように言う。
「フェルゲセンハイトへ行くんだ。そして思い出せ。従兄上を贄にして魔銃を手に入れたのではないと証明する為に。」
「フェルゲセンハイト…?そこに何が?」
「マグノリア…お前の兄がいる。彼なら当時の事で何か知っているかもしれない。」
「お兄様…。私には兄がいたの?」
「そうだ、ブリッツ・ハウプシュタット侯爵、その人がお前の兄だ。そしてお前の名はマグノリア…マグノリア・ハウプシュタットだ。だが、魔女になった時に貴族籍だけでなく出自を証明できる出生籍すら抹消されてしまった。」
貴族籍だけでなく出生籍すら抹消…。
五百年前の私はそれだけの禁忌を犯したという事か。
「出生籍を抹消されるほどの禁忌を犯したのなら行ったところで処刑…。行くだけ無駄なのでは?」
「いや、だが…。えぇい、そんな事は行ってみればわかる!!」
「は?ちょっ…何言ってるんですか、それって死ねって言っているのと同じだってわかってます?」
「出生籍を抹消したのは前侯爵だ。それに仮にも実兄だぞ実妹を処刑などあり得ない。」
「実兄だから処刑しないなんて、何の根拠があって言ってるんですか?あーもう信じらんない!」
「だから行ってみないとわからないって言ってるだろう!」
「っな!?」
話の通じなさに頭が痛くなってくる。
「と、とにかく行ってこい。これは命令だ!」
「あっ…ちょっ…待ちなさいよ!」
命令だ何だと言うだけ言って部屋から出る為にドアに向かって大股で歩いて行く。
「最っ低ーっ!!」
叫びながらその背中に枕を投げ付けるが閉まったドアに当たっただけだった。
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