40.
古の都 ── ポラールリヒトに攻め入った竜王軍だったが、エルリヒカイトブルク城内ではすでに戦闘が開始されていた。
ほとんどの者が逃げ惑い、負傷者が多数見受けられる中、竜王軍まで加わり、城内は乱戦状態になり混乱を極めた。
まだ王位に就いていなかった俺は、竜王軍を率いる従兄上と共にその戦闘に参加していた。
そして見たんだ。
黒いローブを纏い、魔法を行使していた従兄上の元婚約者を。
彼女が対峙していた悍ましき者達の姿を。
醜悪なその姿はこれまで生きてきて初めて目にした人型の魔獣だった。
後にわかった事だがその魔獣達は哀れなエルフ族の成れの果ての姿だった。
当然、モルガーナと同じハイエルフ達も同様に魔獣に成り果てていた。
モルガーナは、竜種の国に攻め入っている間に加護を受けられず死んでしまったエルフ族の欠点を補おうと、浄化の加護が受けられずともどんな環境でも生きていけるように自らが編み出した魔法を同族達に掛けたのだ。
それが更なる悲劇を齎す事になるとも知らずに…。
それほど時を置かずして魔法の効果は現れた。
エルフ族の番だけが魔獣達の中に現れ、雄雌関係無く次々と襲われる事態となり、彼女の掛けた魔法が同族達に何を齎したのか知れる事となった。
そして、恐るべき事にそれほど月日を掛けずに魔獣との間に子が産まれ、あり得ないスピードで成長していき次々とその数を増やしたのだ。
モルガーナはそれを止めようと新たな魔法を編み出すも効果は現れず、エルフ族は瞬く間に数を減らし、生き残っていたのは(わかっている内で)城内にいた者達だけだった。
城内で無事だったエルフ族達だったが魔獣達と竜王軍から逃げ惑う事となった。
そして、逃げ惑うばかりだったエルフ達だが竜王軍に保護を求める者が続出し、その事が更に混乱を招く事態となり、城内は混乱の坩堝と化した。
そんな中、従兄上が元婚約者である彼女を見つけてしまった。
番を前に、“番忘れ”は役に立たず従兄上は俺に後の事を頼み(押し付け)彼女を追いかけて行く。
俺達も従兄上の後を追いたかったが、斃す傍から産まれ急速に成長して数を増す魔獣達に為すすべも無く撤退を余儀なくされ、泣く泣く撤退した。
城内から出たものの、城のあちこちから大きな爆発が次々と起こり、俺達は安全な場所まで城から離れる事しかできなかった。
成り行きを見守るも竜王の吐く竜の狂怒かそれ以上の威力の何かと思われる爆発と共に王城を中心とした広範囲 がそれに巻き込まれた。
その日、古の都ポラールリヒトは一瞬にして瓦礫の山と化し、運良く無事だったのは俺達竜王軍が防御結界を張り巡らせた場所だけだった。
語り終えた国王の顔は苦渋に塗れ、酷く不機嫌そうに皮肉げに口元を歪めていた。
そして、剣呑な眼差しで私を睨みながら問う。
「何か思い出せたか?あの時…何があった?」
答える術の無い私は息苦しさにゴクリと唾を飲み込んだのだった。
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