39.
前回竜種に対する攻撃が失敗して以降、約三百年の間に新たな魔法を身に付けただけでなく、魔銃まで手に入れたモルガーナは、今度こそ竜種を滅ぼす為に再度攻め込んで来た。
だが、三百年前に攻め込まれるまでの年月は竜種にとっても他種族にとっても最悪だった。
モルガーナの掛けた呪いの所為で…。
魔女となったモルガーナが最初に掛けた呪いが、番というシステムを壊す呪いだった。
だが、それは中途半端な呪いで番というシステムを壊すどころか他種族にまで番が現れるという害を及ぼした。
それまでは竜種だけが同族の中だけで番が現れていたのに、この世におけるありとあらゆる種族に番が現れるというシステムに書き換えられ、エルフ族も例外ではなかった。
元々出生率が低い種族は絶滅の危機に晒され、竜種のみならずエルフ族までも絶滅の危機に晒される事となり、それを憂いた従兄上の婚約者はモルガーナ同様魔法に手をつけ魔女となった。
だがそれは竜種にとって禁忌とされていたんだ。
エルフ族と違って竜種は魔法との相性が最悪だといわれていた。
その理由は、ハイエルフの天敵として生み出された竜種が魔法を手にしたら止める事ができる者が居なくなること、そして番を失った時の竜種の暴走を同じ竜種ですら止めなれない。
暴走した竜種は、敵味方の区別など無くなるからね。理性も倫理観もなくなっているのだから。
そして、魔法を身に付けた竜種の暴走を止める事ができる種族を作り出す事は最早神々にもできなかった。
故に、竜種が魔法を身に付ける事は禁忌とされ、従兄上の婚約者である彼女はこの世に混乱を招くとして“混沌の魔女”と呼ばれ、同族達は彼女を関わってはならない禁忌として遠避けた。
彼女は婚約を破棄され貴族籍も剥奪された上、国外に追放された。
そして、竜種を統べる竜王となっていた従兄上は彼女から引き離され彼女有責で婚約は破棄された。
その当時の従兄上は見ているのも気の毒なほど酷い状態だった。
何せ彼女は従兄上の番だったのだから。
そしてモルガーナはそんな好機を見逃さなかった。
このまま何もせず互いに絶滅するのを待つだけなどという事を彼女が選ぶ筈もなかった。
だから五百年前、ハイエルフ達が最終決戦とばかりに攻め込んで来たんだ。
モルガーナの放つ魔法に為すすべも無くドラッヘ王国の王都であるオスト周辺まで侵攻され、危機感を覚えた元老院はやっと“番忘れ”の使用を許可した。
完全な黄龍ではなかったが、竜王だった従兄上は強かったよ。
しかし、竜王といえども番を失っていては竜化できず、全力を発揮する事も叶わなかった。
その上、数も減っていた竜種側は魔銃を前にじりじりと後退を余儀なくされ、王都オスト(現フェルゲセンハイト)は破壊され尽くした。
混沌の魔女も竜王軍とは別に孤軍奮闘していたが、遂に王都オストは陥落した。
だがエルフ族も勝利したとは言い難い状況だった。
全軍の三分の一を失い凱旋したが、竜種との戦いの間もエルフ族はその数を減らし続けていた。
彼女達エルフ軍が帰国した時、エルフ族の国民は半数近く減っていた。
エルフ族女王不在の国土はその加護を受ける事ができず、そんな土地でエルフ族が生きながらえる事は難しかったのだ。
元々清浄な環境でしか生きられないエルフ族にとって、王の加護は命綱。
国土を離れれば加護も届かない。
竜種の殲滅しか頭になかった女王はその事を忘れていたんだ。
それほど竜種殲滅は女王にとって重要だったんだろうな。
そしてそんな状況を知った竜種は反撃に転じた。
残った軍を率いてエルフ族の国・グロリオサ王国の王都ポラールリヒトに攻め入った竜王軍とエルフ族は、ポラールリヒトでの最終決戦を繰り広げる事となる。
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