1.
この世界には七つの大陸があり、大陸と大陸の間には海が広がっている。
ここ、ベルンシュタイン王国は二番目に大きな大陸の北西部に位置する国である。
その王都エーデルブルクはこの大陸で一、ニを争う大きな港とそれに隣接する軍港を有しており、高台にはこの国の権威の象徴である王城が城下町を見下ろすように聳え立つ。
最近、巷で真しやかに囁かれている噂 ───
「この世に安寧を齎す者」
「「厄災を齎す者」
と呼ばれる強大な魔力を持つ者が現れた。
そんな噂を彼方此方で耳にするようになった。
── prolog ──
月の光が辺りを照らす。
建物が崩れたであろう瓦礫の山々の遙か上空には、何事も無かったかのように満月が出ていた。
周囲はしんと静まり返り物音一つ聞こえない。
ドグォーン!!
そんな夜の静寂しじまを打ち破るような衝撃音が響き渡ると共に大きな光柱が天へと立ち上った。
その光柱は隣の大陸の都市からも見ることができたという。
その直後、光柱が出たと思われる辺りの瓦礫の山はきれいに消え去り、剥き出しになった地面には大きな穴が開いていた。
「…っく!」
痛みを堪え、傷口から血を流しながら穴から這い出てきた影が一つ。
穴から出て空に浮かぶ月を見上げたその姿は、まだ少女と言って差し支えないほど小柄で華奢だった。
だが、着ている服はボロボロで、全身傷だらけの満身創痍といった感じだ。
なのにその左手には美しい装飾を施された一丁の魔銃が握り締められていた。
─ 王都・エーデルベルン ─
この世界には五つの大陸があり、それぞれの大陸は海で隔てられていた。
その中の二番目に大きな大陸であるリヒテンシュテルン大陸の北西部に位置するベルンシュタイン王国、王都エーデルベルンは国内最大の港とそれに隣接する軍港を持つ大都市だ。
そして、王国の東部と南部はそれぞれに隣国と接しており、国境の街には関所である大門があり、出入国の手続きの為の人馬や荷車が早朝から閉門時間まで途切れる事無く並んでいる。
様々な国から人が集まるこの国は人種の坩堝と呼ばれるほど多種多様な種族が住んでいた。
大昔よりも数が減ったとはいえ、獣人やエルフ族も少数ではあるが存在する。
中でもエルフ族は稀少種となっており、特にハイエルフと呼ばれる種族は王城に庇護されている魔法使いが最後の一人と言われている。
そして、嘗て空の支配者であった竜人族に至っては絶滅したといわれてから500年経っているらしい。
それに反して魔獣の数は増え、昔は冒険者と呼ばれていた者達も今ではその名はハンターと呼ばれるようになっていた。
そして冒険者ギルドもハンターズギルドとしてここ…エーデルベルンにもあるのだった。
エーデルベルンの南にある大門からこの地に足を踏み入れた者が一人いた。
まだあどけない年頃の少女が一人ハンターズギルドを目指して進む。
たった一人でマントに身を包み、フードを目深に被ったその姿は目立つつもりが無くても悪目立ちしていたが、当の本人はそんな事など気付いてもいなかったのだった。




