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魔弾の射手 ~ 記憶なくして魔銃片手旅 ~   作者: 雫喰 B


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19/67

18.

 読み終えた手紙を額に当て、涙を流す聖王を離れた場所から見ていた。


 足にはまだ幼子がしがみ付いている。

 膝を曲げて幼子の顔を見たら、まだ目には涙が溜まっているが、かろうじて表面張力で零(こぼ)れずにいる。


「ぴぃゃあ…。」と言って抱っこをせがむように両手を差し伸べてくる。


 何これ可愛すぎ。


 即座に抱き上げたら、ひしとしがみ付いてくるので思わず頬ずりしてしまう。


「…猊下もこれで葬儀を行う事ができるでしょう。」

 女官がしみじみと言う。


「誰だって親よりも先に子が亡くなるのは酷く悲しいでしょうから。」

 そう返した私の耳に信じられない言葉が…。


女官:「違います。」

私:「え?実子ではなかったのですか?」

女官:「だから違います。」

私:「え?何が…?」

女官:「お妃様…正妃様です。」

私:「えぇぇ。」(小声で)


「ヘルガ、聞こえておるぞ。」


 声がした方を見ると聖王が歩み寄ってきていた。


「ヒルダは竜種だったのでな…。」


 そう言われてみれば魔女も王女の事を“竜種”と言っていた。

 そして、竜種は人間よりも遥かに長生きする。


 1,000才ぐらいまで生きるんだっけ。


「竜種という事は、近しい者以外には伏せていたのだ。故に、余が老いてからは便宜上は王女と呼んでいた。元々“先見の王女”と呼ばれておったしな。」


 などといいながら幼子の頬に手を伸ばしたのだが、幼子は私の胸に顔を埋めてしまった。


「…。」

「「「…。」」」


 ショックを受けたらしい聖王を見て、宰相と女官が肩を震わせている。

 そして私も。


「いつまで笑っている。葬儀の準備に取りかからんか。」

「「「御意。」」」


 宰相達が葬儀の準備の為に聖堂を後にした。


 私に抱っこされていた幼子はいつの間にか眠ってしまっていた。


「猊下。」


 聖王に向き直り、幼子を託すと恐々(こわごわ)受け取り抱っこして愛おしそうに目を細める。


「ヒルダは、余の子を産んでくれていたのだな…。」


 幼子の顔を覗き見て言った聖王の目尻には涙が光っていた。



 聖王からこれまでの態度を謝罪され、王女の手紙を見せられた。


 

 それによると、王女は“先見の王女(巫女)”として500年ほど前から祈りの塔と呼ばれる尖塔で暮らしていたのだという。


 幽閉されていた訳ではなく、魔女から身を隠すのに最適な場所だったのと、王族以外との接触を避ける目的もあったようだ。


 そして、聖王の一族は竜種に仕え、竜姫を護る役目を務めていた。

 竜種の数が多かった頃は聖王の一族に降嫁した竜姫もいたらしい。


 竜種も竜姫であるヒルデガルドを残して絶滅した時に聖導王国を起こし、守りを固めた。

(ポラールリヒトが消え去った事と何らかの関係があるようだ。)


 ただ、長い年月を生きる竜種の外見は若いままでほとんど年を取らない。

 その為、“眠り”の期間を合間に設け新(・)た(・)な(・)“先見の王女”として表に出ていたらしい。


 だが、聖王と恋仲になり降嫁して幸せに暮らしていたが私が“魔弾の射手”を手に現れる事を予知した。


 そして、魔女の手にかかり命の落とす事も予知していた。

 

 王女の手紙には、どのタイミングでもどんな選択をしてもその未来を変える事はできないと知ったと書かれていた。


 だからその選択肢の中で最も最善である道を選択したのだとあった。


 


 その上、自分が命を落としたとしても聖王としての責務を果たして欲しい。と認(したため)められていたのだった。


 そして、王女は魔女から護る為に聖王に一言も告げずに子を産んだのだ。


~~~~~~~


お付き合い(お読み)いただきありがとうございます!!

(*・ω・人・ω・)

 


 






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