14.
ヒルダ王女の言葉を聞き、何故か王女が私の事を知っていると思った。
根拠など無い。
敢えて言うならば勘である。
記憶の一端でも摑めないものかと思い切って聞いた。
「王女殿下…私の事で何かご存知の事があればお教えいただきたいのですが。」
すると困ったような笑顔をこちらに向ける。
「私がお話しできる事と言っても噂で流れている程度の事のことなのですが…。」
言葉を選びながら当たり障りなく、まるで核心をはぐらかして言ったような印象を受けた。
「でも、あなた方はエーデルブルクの魔女の事をよくご存知のようだ。その意図するところさえも…。」
「…そ、それは…。」
「エーデルブルクの魔女も私の事をよく知っているみたいでした。王女殿下もそうなのでは?」
口籠もる王女に畳み掛けるように言った。
「…。」
「…。」
「…。」
長い沈黙の後、観念したのか王女が重い口を開いた。
「…わかりました。私がお答えできる範囲内で良ければお話しします。」
そして、先ほどの質問の答えはどの程度かはわからないが「知っている。」だった。
王女殿下曰く、エーデルブルクの魔女と私は500年前に何やら因縁があるらしいが、その因縁については教えて貰えなかった。
けれど魔女から命を奪いたいほど憎悪されているのは間違いないと教えられた。
そして、私は記憶を失っているだけではなく、当時よりも若返っているようだという事と以前の私は魔銃を持ってはいなかった。
逆に魔銃を持っていたはずの魔女が現在は魔銃を持っていないらしい。
何にせよ、当時私と魔女が最後に会った時に何があったのか、魔銃を持つに至った経緯等はわからず、それ以来私の消息は消えたのだと言われた。
ただ…その日、古の都ポラールリヒトは一瞬で瓦礫の山と化し、魔女だけが生き残っていたという。
そして、先日の光柱が立ち上った日に私の魔力と魔銃(しかも魔弾の射手)の存在を見つけたという事らしい。
「あ…と、なんて言ったらいいのか…。」
部屋の空気が重苦しさを帯びる中、話し終わった王女の顔色が悪いと思ったのは日が沈み掛けていて室内が薄暗い所為だけではないと思う。
二人とも何も言葉を発しない。
女官が部屋に入ってきて灯りを灯す。
部屋が明るくなった所為か重苦しい空気が幾分ましになったような気がして息を吸う。
女官がお茶を入れ直す。
喉が渇いていたのと気分を変える為にお茶に口を付ける。
目の前に座る王女も多分そうなのだと思う。
「ところで魔銃の登録の件ですが、実はギルドの庇護下に入るだけではないのです。」
王女のいきなりの発言に戸惑う。
「…というと?」
「登録された魔銃には何人たりとも手を出す事ができない…赦されないのです。」
「そうなんですか!?…え、でも使い手の決まった魔銃は使い手以外扱えないと聞いていたのですが?」
「稀にあるのです。使い手よりも魔力が高い場合や魔銃を支配する事ができる者だった場合等…。それ故にその事がわかって以降、この国で魔銃や魔剣等を管理する事が定められたのです。つまり、使い手をギルドの庇護下とする契約と共に魔銃を守護する為の加護が付与されるのです。」
宿屋で魔女が私の魔銃を奪った時の事を思い出した。
「じゃあ、あの時魔女が私から魔銃を奪ったのは使い手の決まっている魔銃を支配する事ができる…から?」
ガチャッ!!
王女がカップを皿に置く音が大きくした。
「ま、まさか奪われたのですか!?」
酷く慌てた様子に驚く。
「いいえ、奪われかけただけですぐに手元に戻ってきました。」
「良かった。彼女に魔銃や魔剣等…特に魔弾の射手なんて奪われたら、それこそ世界が滅亡してしまいます。」
ん?
「聖王猊下は魔弾の射手と雖もそこまでの力は無いと仰っていましたが…?」
「エーデルブルクの魔女だけは別です。何故ならポラールリヒトを瓦礫の山に変えたのは彼女だと言われているからです。」
その言葉を聞いて、あの時に奪われていたら…と背筋が寒くなったのは言うまでもない。
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(*・ω・人・ω・)




