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信じるもののすべて  作者: ざー
第一幕
4/32

第一幕(2)

 ジルの部屋にも灯りはない。ただ、カーテンが開いていて、俺の部屋より幾分明るかった。

「!?」

 ベッドの上のジルは、普通に眠っているのとは全然違った。生気というものがまるで感じられない。彼女そっくりの人形が、そこに転がっているかのようだ。

「医務室で、妙な声を聞いたの」

 エマが早口で事情を説明する。

「儀式は明後日、それまでこのままでって。声の主がいなくなった後、バルデン先生が教えてくれた。その儀式でジルは殺される」

 殺される? にわかに信じがたい話だ。しかし、バルデン先生がそんな冗談を言うはずがない。

「門の外に馬車を呼んだの。お願いロイ、馬車までジルを運んで。そしてあなたも、一緒に来てほしい」

 なるほど、それで俺か。やっと話が見えた。

 ほとんど体格差のないエマでは、ジルを門の外まで運ぶのは難しい。だが、施設は男手が極端に少ない。エマがこんなことを頼める男といえば、俺しか選択肢がなかったのだろう。

「話は分かった。でも、俺だってジルと体格は変わらない。どうやって運べば--」

「ベッドに座って。シーツでジルの身体を縛りつけるわ」

 指定された場所に座る。エマは素早くジルを起こして俺の背に乗せ、ギュッと縛りつける。手を借りて立ち上がる。重い……が、動けないほどではない。

 ガタッ。物音に天井を振り仰いだ。

「ロイ、急いで!」

 腰を押されるままに走り出した。一番近い裏口から外に出る。俺達の後を追いかける、複数の足音。

 通用門の向こうに黒塗りの馬車がいた。誰かが、鍵を壊して門を開けている。

「あっ!?」

 バランスが崩れた。ジルが背中からずり落ちる。

 ガッ! 門から走ってきた誰かがジルを支える。見覚えのない男。エマは何も言わない。助けに来た、ということか。

 通用門を抜け、放り込まれるように馬車に乗り込む。勢いよく扉が閉まると、すぐに馬車が走り出す。

 ガタガタ揺れる馬車の中、のしかかるジルの重さから逃れようともがく。苦しい。早く、何とかして。

「ごめんね、ロイ。大丈夫?」

 ようやく解放された、と思った途端、ヒョイと座席に抱え上げられた。隣には先ほどの男。ニッと笑って、俺の頭を無造作に撫でる。

「よく頑張ったな」

 大きな力強い手。いつかも、こんな風に頭を撫でられたことがあるような気がする。あれは、いつのことだったか……。

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