3/32
第一幕(1)
「ロイ! ロイ、起きて!」
夜。灯り一つない部屋で、誰かに揺り起こされた。女の声。だけど、顔は分からない。
「っ!?」
誰だ、と問う前に口を塞がれた。
「エマよ。お願い、ついて来て。ジルを助けたいの」
話がまったく見えない。ジルを助ける? そういえば彼女は、昨日から具合が悪いと聞いている。しかし、何で俺なんだ? 確か、ジルはいつも誰かと一緒に--。
「うっ」
ズキッと頭痛が走った。夜中に、無理矢理起こされたせいだろうか。
「時間がないの。黙ってジルの部屋に来て。お願い!」
腕を引かれる。目が慣れてきた今は、エマの必死な表情も朧気に見える。彼女は本気だ。何か大変なことを、起こそうとしている。
とにかくジルの様子だけでも見に行った方がいいかもしれない。エマの手を押さえ、身を起こす。行く、という意思表示。彼女にもそれが伝わったらしい。
エマが身を翻す。次の瞬間、バサリ、と頭の上に何かが降ってきた。手触りからすると、椅子の背に掛けてあった俺の上着だ。
「赤毛は夜目にも目立つわ。被っていて」
そんな訳ないだろう、と反論しかけたが、止めた。上着を被ったまま、エマを追って部屋を出る。




