第1話 波美さんの金髪って染めてるらしいんだけど、幽霊になってもそのままなんだね。ちょっと不思議⋯⋯。by僕
いま、僕は、異世界に、来た!
視線の先には草木や花が風に揺れて緑の匂いがする。見上げれば、青い空、白い雲、そして眩しい太陽がある。それでも暑いと言うほどでもなく、春のような心地よい温かさだ。あ!蝶々がいる。……なるほど。
「「ここってほんとに異世界?」ですか?」
木や花、蝶に詳しい訳では無いが、日本にもあんな見た目だった気がする。もう一度言うけどここって異世界なんだよね?変化らしい変化が無いような……。それからなんだか横から人の声が──。
「良かった……。悠一君もこっちに来てました……」
「え!?なんで姫璃さんがここに?」
「なんでと言われましても……。もしかして、わたしは来ないほうが良かったんでしょうか?」
「いや、もちろんそんなことはないんだよ。ただ、僕としては、異世界なんていうよく分からない上に危険もあるだろう場所には来ないだろうと勝手に思っていただけで……。でも、知り合いがいてくれれば僕も心強いしうれしいよ。ありがとう」
「いえ、自分で来たくてきたので。異世界、というのは確かによく知っているとは言えませんが聞いたことくらいはありますよ。」
「へ〜そうだったんだ。こういうのはまったく知らないと思っていたよ。じゃあ興味があったから来たの?」
「興味といいますか……えっと……その……本当は……うゔぅぅ〜…………ええ、そんなところです」
「あーうん。そっか」
「はい、そうなんです。ところで悠一君。あの……大丈夫……ではないですよね。すみません。実は、先ほどメラさんという天使の方から島村さんのことを聞いたんです。その……なので、ショックを受けているだろうなと思いまして」
「もしかして、僕がショックを受けていると思って心配して異世界まで来てくれたとかなの?」
「え?あ~いえ、えっとですね。確かに心配はしましたよ」
「うわ~、ごめんね、ありがとう。でも大丈夫だよ。僕も天使様に会ったんだけど、そこで降霊術っていう能力をもらったんだ。それで波美さんを呼び出せるんだって!」
「!そうなんですか?それなら良かったです。本当に心配していたんですよ!」
「うん、ありがとう。じゃあこれから呼び出してみるよ」
でもこれどうすれ──あ、すごい、なんか使い方分かってきちゃった。
〔降霊術の使い方〕
前提条件 ①A .術者が召喚する人間について理解している。(注:理解とは親密度や友好度を指す
B .もしくは召喚する人間を理解している協力者(呼び出すことに同意している)がすぐ近く
にいる。(注:理解とは親密度や友好度を指す
②術者が今まで召喚したことが無い人間であること。
召喚の仕方について ①前提条件A の場合、その人間のことを強く意識して目を閉じ集中する。
前提条件B の場合、協力者にその人間のことを強く意識させる。術者は協力者の
頭に手をかざし、目を閉じ集中する。
②集中していると糸が見えてくるのでそれを手繰り寄せるようなイメージで引っ張
る。
③眼の前が明るくなったような感覚がすれば成功となる(どれだけ召喚対象を理解
できているかで術の成功までの時間が決まり、それに応じて必要な魔力量が変わ
る)。
備考:召喚中、術者は無防備になるので要注意。
召喚中、外部から強い刺激を受けて集中が途切れると失敗となる。
うん、なんかふわっとしてるな。いや、感覚的には分かるんだけど。
ただ唯一の不安は僕、ちゃんと呼び出せるほど彼女を理解できているかだな。説明を見る限りなんか時間と魔力があれば最終的には成功するみたいなニュアンスだけど、魔力ってのがどれだけあるか分からないし、ここって森みたいだし、魔獣なんてものがいるらしいし、今やらないほうが良いのか……いや、でもやるだけやってみて結構時間かかりそうなら町へ行ってからにしようかな。男は度胸ってやつだね。
「姫璃さん、今からやってみるんだけどやってる最中は集中していて無防備らしいんだよ、しかもどれだけ掛かるか分からないんだ。だから、もしも異常があったり結構時間が掛かったりしたら揺さぶるとか、なんなら叩いてくれない?そうしたら術は解けるらしいから」
「それで悠一君がいいならそうしますけど、その、悠一君ってM、というものなんでしょうか?」
「いや違うから!というか異世界を知ってることにも驚いたけどMという単語を姫璃さんが知っていることはちょっと僕ショックかも」
「え!待って下さい。なんでショックなんですか?わたしだってそれくらい知ってますよ」
「あぁうん、ごめんね。いやでも中学生になってから姫璃さんとはなんというか、当たり障りのない会話しかしてなかったというかさ。正直に言うと、僕の中の姫璃さんは小学校までの姫璃さんなんだよね。だから高校生なら知ってて当然のことでも姫璃さんが言うと違和感があるというか、ね。あと個人的な偏見だけど、女子校ってみんなおしとやかでそういう事言わないのかと……」
「他の学校はわかりませんが、わたしの学校では……そうですね、特別おしとやか、とりわけではありませんよ。あ!だからといって別にその……品がないというか、そういう話を常にしているわけではありませんからね。特にわたしはそういう話をしませんから!さっきのはつい口が滑ったというか、悪い友だちの影響というか……。とにかく、誤解はしないでくださいね、悠一君!」
「うん分かったよ。まぁこの短い間に色々あったからね。ちょっといつもと違うこと言っちゃうかもね」
「えぇそうです、それです。色々ありましたからね。えぇそうなんですよ、さすがは悠一君です」
「じゃあ気を取り直して始めるね」
「はい、がんばってくださいね。応援してます」
えーとまずは、波美さんのことを強く意識……ってなんだか恥ずかしいな……で?、目を閉じて集中……。
…………お!これが糸かな?でこれを引っ張ればいいんだよね。…………あ!なんか周囲が明るくなってきた。
『悠?てか、ここどこ?』
目を開ける。そこには金髪がトレードマークかはしらないが、事故の前に着ていたブレザー姿の波美さんがいた。……よかった。
「悠一くん?終わったんですか?えっと島村さんはどうなったんですか?」
『あれ?この子さっきの子じゃん。どうもなにもここにいるでしょ。何言ってんの?てか悠なんか泣いてない!?大丈夫?』
「大丈夫ですか?もしかしてうまくいかなかったんですか?」
「いや、うまくいったよ。でもなんか安心したらちょっとね。なんかカッコ悪いね」
「いえ、そんな事ありませんよ。すごいです」
「うん、ありがとう」
『なんの話が分からない!ちょっと2人共、どういうことか説明してよ〜!』
前回ほどの時間は掛けず、僕の涙は止まった。初対面の人に泣いているところを見られるのも恥ずかしいが、知り合いの、しかも女の子に見られるのはもっと恥ずかしい。だって僕、男の子だし。もしも君が男なら分かってくれるよね?女の人ならそういうものだと思ってほしい。
というわけで、降霊術の能力である1人の霊につき3人までの人とコミュニケーションを取れる(具体的には姿が見えて会話ができるというもの)を使い、姫璃さんにも波美さんとコミュニケーションが取れるようにした。
そして、事故にあって天使様と出会い、異世界に到着し、今、降霊術を使って呼び出したことまでを話した。ちなみに僕が異世界について説明している時にうっかり忘れてしまっていたことなんかを姫璃さんは上手にフォローしてくれた。
『……マジか。でもここホントに異世界なの?あの木とか花とかってアタシ詳しく無いけど日本にあったやつとそっくりなんだけど。あっ、あれって蝶じゃない?一応聞くけどこれドッキリじゃないよね?』
「だよね!僕もそう思った。それにドッキリではないよ。だって波美さん、他のものに触れられないんだよね?」
『まぁそうかー。そうだよね~。え?じゃあマジであたし幽霊になっちゃったってこと?あたしホラー苦手だって言ったよね悠!』
「え?島村さん、ホラー苦手なんですか?それはその、大丈夫なんですか?」
「でも割と冷静だよね、もしかしたら拒絶反応起こして泣きわめくかと」
『そうですアタシはホラー苦手系女子なんです。でもまあ、なっちゃったものはしょうがないし、自分がなる分にはね。もちろん今、目の前に幽霊が出たら泡吹いて気絶する自身があるけど……。もしくは全力で土下座でもなんでもして許しを請うよ。それと悠、泣いてたのはあんたでしょ。あたしがスマホ持ってなかったのを幸運に思うことね!!!ただ、まあ……うん、あれだし、その、ほら、心配かけてゴメンね、あと……ありがと』
「うん、どういたしまして。でも本当にスマホは持って無くて良かったよ」
「えっと、こういうのなんて言うんでしたっけ?なんとかでれ……」
「あぁツンデレのことかな?」
「あぁそれですそれです。わたし、やんでれ?とか、くーでれ?とかはよくわかってないんですが、それは知ってるんです。あれですよね、素直になれない人のことですよね?」
「……うーんまあ当たらずとも遠からすというか、ニュアンスは合ってるというか……。いや僕も説明しろと言われると細かい定義があるみたいだから、自信無いんだけど……」
『いや!やめて!!あたしのことツンデレなんて言わないで!!!違うから!!!』
「でも悠一君も合ってると言ってくださいましたし……」
『ニュアンスがでしょ?』
「でもニュアンスがあってればほぼ合ってるということになりませんか?」
『そんなことどうでもいいの。大事なのは、あ・た・し・は・ツンデレじゃない。以上。この話は終わりだから。てかさ、状況わかんないし、それを聞いたら事故で〜なんて言われたから説明最後まで聞いちゃったけど、あたしたちまともに自己紹介もしてないからね』
「「あ!確かに」そうですね」
『でしょ〜それに気がつく波美ちゃんさすが!というわけで自己紹介タイム!』
「その前に波美さんに言っておかないといけないことがあるんだ」
『なに?え、まさか告白?』
「「え?」」
『いや冗談だって、なんか悠が真面目な顔してたから……』
「びっくりしました……。いえ、待って下さい。ということは2人は今、恋人関係ではないということでしょうか?もしかすると恋人かと疑っていましたよ」
「うん、そういう関係じゃないよ。ただの友だち。それで波美さん」
『え〜なんかあんまり聞きたくないんだけど〜』
「僕も気が重いけど、ちゃんと言っておかないと落ち着かないんだ。自分勝手なのは分かってるけど付き合ってよ」
『も〜、しょうがないな〜。で?何してくれちゃったの?このあたしに申してみるがいいよ』
「うん、じゃあ言うけど、その、波美さんが事故にあったのって僕が原因かなって」
『なにそれ?……?え?ごめん分からない。どういうこと?』
「だってあの日、あそこにいたのは僕の誕生日を祝ってくれたからでしょ?そうしてなかったら事故にも遭わずに済んだはずだし……ね」
『いやそれは──』
「待って下さい悠一君!お話の途中ですみませんがいくつか質問させてもらってもいいでしょうか?」
「いやできれば後にしてくれるとうれしいんだけど」
「ありがとうございます。では質問ですが……」
『うわ何この子。人の話ガン無視なんだけど。ヤバ!!』
「いや、波美さんも時々僕の話し無視する時あるからね。気をつけてね」
「聞いているんですか悠一君?お互いの誕生日を2人きりでお祝いしてたんですか?毎年ですか?」
「いや、お祝いしてもらったのは今年が初めてだよ。ね、波美さん?」
『うん。そうだけど?』
「なんで今年から?」
「いやだって悠ってば、他の友だちみんな別の高校行っちゃって可愛そうじゃない?だからまあ?今月お金の余裕が少しあったし?あたしも悠の友だちなわけだから、ケーキくらいご馳走してあげようかなって。それにあのカフェって結構美味しいって他の友だちに聞いたんだよね。確かに中々だったね。ね?悠?」
「うん、美味しかったよ」
『まあ?あとは?中学からなんだかんだゲームや勉強を教えてもらってお世話になってるし?他にも楽しそうなゲームや本を貸してもらってたからそのお礼も兼ねてというか?』
「悠一君からゲームや本まで借りたんですか?わたしは1度も借りたこと無いのに?」
「いやでも、あの頃は貸し借りするような関係じゃなかったというか……。もちろん興味を持ってくれるならいくらでも貸すよ?」
「!本当ですか?ではぜひ今度貸して下さい」
「うん、よろこんで」
『でもここ異世界なんだけどそんな約束していいの?』
「「あ!」ではせめて、今度悠一君が好きなものを教えてください」
「うん、いいけど……、どうだろう?実物のゲームとか本がなくても分かってくれるかな?」
『あー別にただ単に好きなものはゲームとマンガ、それにラノベです。じゃなくて、具体的にこれのどんなところが好きかを聞きたいのかだと、説明する方もされる方も大変かもね。悠ガンバ!』
「そんなに難しいんですか?でもわたし、少女漫画なら何冊か読んだことがありますよ?」
『それって恋愛の話?』
「はいそうですね。いえ、もちろん男の子は戦う漫画を読むことくらいは知っていますよ。読んだことはないですが……」
「僕もラブコメは読むよ。もちろんバトル物も読むけど。ただ、バトル物は設定を覚えるのが大変なんだよね。能力とか、キャラの立ち位置とか」
『だよね!あたしも最初は全然わからなくて、何この意味不明な能力バカじゃないのって思ったもん。それに味方だと思ってたキャラが実は敵だとか、その逆もあるし。でも大抵は仲間裏切ってても最後は戻ってくるからいいんだけど、1番ヒドかったのが終わり際に明かされた衝撃の真実、実は主人公が黒幕でした〜、いやふざけんなし。あたしほんと、さっき自分が死んだって聞かされた次くらいにショックだったんだからね!てかあれおすすめしてきた悠なに?頭おかしいよ?うん、絶対おかしい』
「だからあの時にも言ったじゃん。この気持ちをぜひ、波美さんとも共有したかったって」
『めっちゃ迷惑だったからね。あのシーン読んだときほんとにあたし、頭真っ白になって内容が理解できなかったんだからね』
「またまた〜。でも面白かったでしょ?」
『おもしろかったからこそ、あの最後の裏切りがショックなんでしょ!あれ読んで以来、他のを読むたびにこの主人公大丈夫だよね?裏切らないよね?って疑って読むようになっちゃったでしょ。どうしてくれるの?』
「僕だって同じだよ。でも緊張感持って読めるでしょ。ドキドキだよね〜」
『だからあたしはそういう緊張じゃなくて、例えばここに宝箱があって、どんな財宝が入ってるんだろう?みたいなドキドキがいいの!開けたら金銀財宝だ!やったぁ!みたいなやつ。でもアレの場合は廃墟探索してたらツボ発見してどんなヤバいものが入ってるんだろう?みたいなドキドキでしょ?で、開けたら生首だ〜とか人の骨が〜ってなるわけよ。あ、やだ、なんか鳥肌立ってきた』
「わー幽霊も鳥肌って立つんですね?ではないんですよ2人とも、私のこと仲間外れにして、楽しそうにおしゃべりするなんて……。わたしもそういう話をして一緒に盛り上がりたいんですよ!先ほどの話は分かりますからそういうことを教えてほしいんですよわたしは!」
「『ああなるほど!たしかにこういうことなら簡単に説明できる!』」
「ではよろしくお願いします」
『つまり、今まで読んだ中でのおもしろエピソードを話せばいいってことだね悠?』
「そういうことか!……でも他って何かあったかな?」
『いざ言えって言われると……うーん……』
「え?無いんですか?本当に?」
「いやー面白い話はあるんだけど、それを説明するにはその前提を話さないといけなくて、さらにそれを説明するには〜となって無限ループするってほどではないけどちょっと面倒だなって」
「面倒!?いえ本当にさっきみたいな、なんというんですか?物語の大枠の仕掛け?みたいなことを教えて貰えればいいんですが……」
「いやでもさっき話したのが僕が知ってる1番大きな仕掛けなわけだから、いまさら小さな仕掛けを話してもちょっとね」
『だよね、話す順番間違えたよね。どう考えても小さなことから話して大きくしていって最後にさっき話したことを言えば完璧だったんだけど……』
「じゃあもうダメじゃないですか!」
「『うん、困ったね』」
「困りましたよ!!どうしてくれるんですか!?」
「『いやーどうしよう?』」
「あとさっきからそうやって息ぴったりみたいなところもなんだか嫌です……」
「!?そういえば脱線事故してて今まで完全に忘れてたけど、僕が話してる途中だったんだけど……」
『???あ!そういえば悠が事故の原因がどうのって言ってたような?』
「姫璃さんが割り込んできてそのまま流されちゃってたよ……。いや僕も楽しんでたけど」
「あー、そうだったかもしれませんね。わたしったらつい……。その、大変失礼いたしました。どうぞ続けて下さい」
「なんかもう今からシリアスに戻るのもなー……」
『いやもういいんじゃない?別にあたし気にしてないし。大体、自分がやりたかったことやっただけなんだし、悠が変に責任感じるのが悪いんだよ。うん。そうだね、そこだけは悠が悪かったってことで、この話は終わりでーす。じゃあ次はいよいよ自己紹介だよ~いえ~い!!』
「いやでも」
『でもじゃない!もう終わったんです〜』
というわけで、あれだけ不安に思っていたことは実にあっけなく許されてしまった。これはこれでなんだかモヤモヤするけど……。またいつか、このことを波美さんにお礼をすることにしよう、そうしよう。
『というわけで、あたしの名前は島村波美。波美って呼んでね。好きなことは楽しいこと。嫌いなものはさっきも言ったけどホラー系です。あと、シリアス展開みたいな重い話。でもこの世界って、ゲームとか本ってあるの?もしなかったらイコールでホラーもないわけなんだから、あたし、無敵!』
「あー確かにゲームはもちろん無いけど、本は一応あるみたい。と言っても娯楽は無いみたいだね。僕がっかりだよ」
『あ、やっぱり無いんだ?まあ、あたしもホラー以外は読んでみたかってけど……ってかなんで知ってるの?』
「さっきわたしたちで説明したじゃないですか。頭の中にこの世界の常識が書かれた本があるんですよ」
『あ!あ~なんか言ってたねそういえば。でもズルくない?あたし無いんだけど、それ。いやでもなんか頭の中にってのもなんか怖いからやっぱいいかな』
「でも波美さんには残念なお知らせがあるよ。聞く?」
『聞きたくないけどでも気になるし……』
「ここって異世界だからさ、いるんだって、ゴーストとかスケルトンとかのホラーチックなモンスターが」
『!?分かったあたし、部屋から出ない。うん。あたし幽霊だし、食事とかしなくていいんだから、お金もいらないし、外出る必要無いもんね。そうだよ賢い、さすがはあたし』
「もう1つ残念なお知らせなんだけど、今の波美さんって降霊術の影響で僕の周囲3メートルから離れられないみたいだよ。だから僕から離れすぎると自動的に着いてきちゃうみたい」
『もっとがんばって距離伸ばしてよ〜ゆーうー』
「いや何をしてもこれで限界みたい」
『じゃあせめて、そういうのが出そうなところへは行かないでよ。本当にお願いしますだからね悠!』
「ゴースト……ああなるほど、今確認しましたが、ゴーストって普通の幽霊みたいなものみたいじゃないですか。だったら今の波美さんと同じ存在、つまりお友だちでは?」
「おーなるほど。さすがは姫璃さん。たしかに同じだ」
『感心してないでなにか反論してよ!ゼッタイに友だちじゃないから』
「でもまんま同じものでしょ。1ミリの誤差無く」
『あたし言ったよね?もし目の前に幽霊が出たら泡吹いて気絶するって。乙女にそんなことさせていいっていうの?』
「そもそも幽霊って気絶するんですか?食事の必要ないのでしたら、眠ることももしないんですかね?」
「いやどうだろう?降霊術の説明にはそれらしいことは載ってないけど」
『あーなんかそれらしいことが頭に浮かんできたよ。ヤバい。えっとね、なんかそういう耐性持ってるみたい。でも寝ようと思えば眠れるみたい。でもそうだよねー。もしあたしだけ眠れないと2人が寝てるときめっちゃヒマだもんね。ヒマ過ぎて悠に「あ~そ〜ぼ〜よ〜」ってずっと夜になったら絡んでないといけないところだったよ』
「いや絶対やめてよねそういうこと」
『分かってるよー。冗談だって。さすがにそういう迷惑なことはしないって〜』
「だったらいいけど……」
「というか、また話が逸れてませんか?確か自己紹介をしてたのでは?」
「『そうだ!またやってしまった!!』」
「今回はわたしは悪くないですからね!確か波美さんがこの世界に本はあるのか〜ということを言ったことが原因では?」
『あ~うん。たしかに言ったけども。でもそこから2人してゴーストがいるとか、ゆうれいってねむれるの?とか聞いてきたんでしょ!?つまり、あたし1人のせいじゃないのです。みんな悪いんです。そうだよね?』
「「まぁ、確かに……」」
『あと姫璃さーあたしのことは、波美って呼び捨てでいからね?あたしもそうするし』
「あーそうですか?ではわたしもそうさせてもらいます。でも悠一君はさん付けですよね?それはいいんですか?」
『あぁうんそれねー。あたしも最初に呼び捨てで!って言ったんだけど、悠ってば女子を呼び捨てにするのが恥ずかしいなんて言ってきてね?本人がいいって言ってるのにまったくしょうがないよねー』
「なるほど、そういうことでしたか。では、わたしにさん付けするのも恥ずかしいからですか?」
「そうだね。っていってる姫璃さんも、僕のこと君付けだけど」
「だってそれは、小さな頃からの癖で……」
『待って、またなんか話ズレていってない?次は姫璃の番だからね。話が全然進まないでしょ!?』
「では、改めて、わたしの名前は城田姫璃といいます。えっと、好きなことは……なんでしょう?日本にいた頃はテニス部にいたのでそれなりに得意ですが……特にないですかね?」
『え?ウッソだ〜、本当に好きなこと無いの?休みの日とか何してたの?』
「そうですね……でも、部活動を土日の午前中にやって、その後は友だちに誘われればショッピングに行ったりして……それ以外はスマホで動画観たりして……他は勉強してましたね」
『お!いいじゃんショッピング!あたしも好きだよ!』
「あ、いえ、もちろん楽しいのですが、特別好きというわけでは無くてですね。動画の方も、友だちにおすすめされたものを観ていただけといいますか……いえ、もちろん他の興味が湧いたものは観ていましたけど、勉強優先でしたね」
「おぉ、さすがは姫璃さんだね、そういうところは本当に尊敬するよ。僕も成績を維持できる程度には勉強するけど、そうでないときは遊んでるもん」
『だよね!それがふつうだよね』
「いや、波美さんはもう少し勉強した方が……」
『じゃあ姫璃の目標は、何か自分の好きなものを見つけるで!』
「あの、そもそもこの世界で見つかるでしょうか?娯楽はあまりないみたいですが……。というよりも、先ほどの話を蒸し返して申し訳ないんですが、今わたしが興味があるのは悠一君のことなので、色々教えてくださいね?」
「あぁ、そうだったね。いや忘れてたわけじゃないけど、うん、なにか面白い話を用意しておくよ」
「はい、楽しみにしていますね!」
『よし、きれいに話が終わったところで、街に行くんだっけ?』
「いやちょっと待って波美さん。まだ僕の自己紹介が終わってないんだけど」
『え〜別にいらなくない?確かにあたしと姫璃は初対面みたいなものだけどさー。悠ってあたしたちの共通の知り合いでしょ?じゃあ名前も知ってるし、好きなことはゲームに読書。読む本はマンガとラノベ。嫌いなものは納豆とかのネバネバしたもの。以上終了。真新しい情報なしじゃん』
「くっ言い返せない」
「あの、漫画は分かるんですが、らのべ?ってなんですか?」
「えーと、簡単に言えば普通の小説に、挿絵がついてて話の内容もマンガにあるようなバトルものとかラブコメとかになってるもの……かな?」
「それは、片方じゃダメなんですか?いえ、悠一君がそうしたいのでしたら、もちろんそれでいいんですけど、内容が同じならいいのではないかと思いまして」
「えー?うーん。……ほら、ジャンルが同じなだけで、まるっきり同じなわけではないんだよ。だから、このマンガの話は好きだし、こっちのラノベの話も好き、みたいな感じかな」
「なるほど、好みの話が漫画にもラノベにもある、ということですね」
「そうそう、そうなんだよ」
「悠一君のことをまた1つ知ることができてうれしいです。こういう小さなことでもいいので、また聞かせて下さい。波美さん……あ、いえ、波美を呼び出す前に悠一君も言っていましたが、わたしも小学生の時の悠一君は知っていても、今の悠一君は知りませんから……」
「そうだよね……」
『ちょっと!2人だけで話さないで!あたしも入れて!というか、そろそろ行かない?このまましゃべってたら日が沈みそうなんだけど』
「なにいってるの?波美さんもノリノリで話してたのに」
「そうですよ。波美もノリノリでした。でも、確かにそろそろ出発したほうがいいですね」
『別に2人が悪いって言ってるわけじゃないよ?3人でしゃべってると時間が経つのを忘れるというか……』
「じゃあ行こう!初めての街に!」
『なんか無理やり感がない?』
「無い!というか、本当にそろそろ行かないとね。自己紹介に少し……少し?時間を掛けすぎた気がする。なんかこのままだと、誰かに怒られそうだし……」
そして僕らはこの異世界で、最初の1歩を踏み出した。
うん、すごいよね。今までずっと喋ってて、全く動かなかったもんね。僕びっくり☆
いやー今回は会話だけで終わりましたね。本当は町?まで行くつもりだったんですが……。
前回も会話だけといえばそうですが、異世界の説明をしていたのに比べて今回はそこまでのことは話してないですからね。
でも僕としては、こういうストーリーに全然関係なく、キャラがわーわー言ってるのが好きなので楽しかったです。
問題はこれを読んで面白いと思ってくれる人がいるかですが、まぁいればラッキーくらいで今後も好き勝手に書いていこうと思います。
とりあえず、3人揃ったので、次回は移動します。町に着くかは分かりませんが。
PS.今回の話に出てきた「最後に実は主人公が黒幕でした〜」というのに元ネタはありません。僕が勝手に こんなふうに終わったらすごくモヤモヤするだろうと思ったことを書いただけです。
ただ、今まで読んだ本や、遊んだゲームでは、主人公ではありませんでしたが、主人公の親友や、ヒロインなんかがそういう事をしてくれましたね。そして、1番最初はそれはもうショックを受けました。みなさんはそういう経験はありますか?
でもよく考えれば、ミステリ小説なんかは実は主人公が〜みたいな展開はあった記憶がありますね。「お前かよ!」ってなりました。(笑)
でもやっぱり、小説だと基本その1冊で完結しますが、漫画やラノベだと、数巻から数10巻という積み重ねがありますから、仲間だと思っていたキャラが裏切ったり、黒幕だったりは、ダメージ多いです。
それでも、予想外の展開にはなるので、嫌いじゃないんですよね……。




