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プロローグ② 前回出番がほとんど無く、今回最後の方に出番があるというので喜んでいましたが結局前回も今回も波美さんのことばかりというのはどういうことでしょうか?byわたし

 ──意識が浮上する感覚。今まで何をしていたんだっけ?今日は学校へ行く日だったか、それとも休みだったか……。

 なんて考えながら目を開くとそこは全てが、白かった。座っているソファも、眼の前にある膝くらいの高さの机も、床も、壁も、天井も、そして僕と同じようにソファに座っている人も。

 眼の前にいる人は、真っ白なスーツ姿だった。ネクタイも白い。男の人だと思うが肌も白くとても整った顔立ちをしていて、同性でもきれいだと思ってしまう。ちなみに、髪は金が少し混ざった様な白か銀色だ。

 その男の人は少しつらそうな顔をしている。

「はじめまして。私のことはソラ、と呼んでください。決まり事として1つ確認をしなければならないのですが、あなたの名前をお聞きしてもいいですか?」

「宮町悠一(みやまちゆういち)です」

「ありがとうございます。突然こんなところにいて驚いていらっしゃるでしょう?先ほど何があったのか、覚えがありますか?」

 言われて少し考える。が、思い出せない。なにか楽しいことをしていたような……。

「大変言いにくのですが、宮町さんは先程、居眠り運転をしたダンプカーにはねられまして、お亡くなりになりました」

 それを聞いて、先程何があったのかを思い出した。波美が誕生日をお祝いしてくれたこと。帰り道で姫璃と会ったこと。そして彼女の見開かれた瞳。ダンプカーとおぼしき重低音。

 はっきりとはねられた記憶はないが、そうか。いまいち実感がないなと思っていると、手が震えている。そして涙も流れてきた。実感はわかなくても、体はその事をわかっているのかな〜なんてことをことをぼんやり考えつつ、必死に泣きやもうとしたけど中々止まってはくれなかった。


 それからしばらくして、涙が止まり、手の震えも収まったころ。

「落ちつかれましたか?」

「はい。その、すみません。お見苦しいところを」

 やっぱり泣いているところを見られるのは恥ずかしい。それも初対面の人に。

「いえいえ。あなたはそれだけの体験をしてしまったのですからその反応も当然ですよ。ですからどうか、気にしないで下さい」

 キュンッ。優しい。惚れそうだ。

 でもそうか、実感はまだないけど、僕、死んじゃったか……。それならもう会えないのか。親や友だ……ち……と……あ!!!

「すみません!あの時女の子が2人そばにいたんですけどその、何か知りませんか!?!」

「……とても残念ですが、お2人も、あなたと同じように……」

「あ……そう……です……か……」

 なんだろう。自分が死んだと聞いたときよりショックを受けているような気がする。おかしいな。

「とても辛いことばかり言ってしまい申し訳ありません。まだいくつかお話しなければならないことがあるのですが、どうしましょうか。少しだけお1人になりたいということでしたらそのようにさせていただきますが」

「あーいえ、大丈夫とはさすがに言えませんが、さっきも僕泣いちゃって待たせてしまいましたし、いいですよ。ありがとうございます」

 よし、切り替えよう、で切り替えられるわけではもちろんないし、死んじゃったんだからこれ以上どうしようもない、と割り切れるわけでもない。それでも1人でいるより誰かがいたほうがいい気がするし、待たせてしまったことも事実なので話を聞こうと思う。多少なりとも気が紛れるかもしれないし。

「そうですか。無理はしなくて結構なのでいつでも言って下さい。ただ、ここからの話は基本的に宮町さんにとって悪い話ではありませんよ。詳しい説明に入る前にこの場所の説明をしましょうか。簡単に言えば、ここは死後の世界に入る一歩手前の段階です」

「えっと、じゃあ、あなたは神様……なんでしょうか?」

「あぁ、いえいえ。僕なんかは下っ端です。神様にこき使われる方ですよ。そう言う意味では、まあ天使というのが妥当ですかね。なので、気を使う必要はありませんよ」

「いえ、天使様でも僕からすれば十分気を使う存在なんですが」

「いえいえ、本当に気を使う事はありません。話し方も友人と接する感じで構いません。僕としてもそのほうがありがたいですからね」

「はあ、そうですか」

 と言いつつまぁ無理だなと思う僕。うん。流石にね。ちょっと怖いしね。

「ええ、そうなんです。と、前置きが長くなりましたが改めて。今回宮町悠一さんを担当させていただきますソラ、と申します。短い間ですがよろしくお願いします」

「あぁいえ、こちらこそお願いします」

「それで宮町さん。早速ですがあなたには今、2つの選択肢があります」

 え、まさか噂に聞いた異世界に行けるとかいう話かな。まさかね……。ハハハ。

「それは他の人のようにこのまま人生を終わるか、異世界へ行くかというものです」

 ……マジですか。


「まず、このまま人生を終える選択をした場合の説明を先にさせていただきます。宮町さんは生物が死んだ場合はどうなるとお考えですか?」

「えーと、あの世があって、天国や地獄がある、というのが一般的な考え方かと。あぁあとは、生まれ変わるって話を聞いたことがありますね。本当かどうかは分からないですが」

「えぇ、大抵の方はそう言いますね。ただ、天国や地獄はありません。先程宮町さんが言った中ででは生まれ変わるというのが正しいです。具体的には生物が死んだ後、こちらの世界、まぁあの世ですね。あの世に来たらすぐに記憶がリセットされてから、その種類ごとに、まあ倉庫の様な場所に集められて他の生物に生まれるのを待つことになります。もちろんその間は意識はないので苦痛などはありません」

 地獄がないのはありがたいけど天国もないのか……。


「それではここから異世界へ行くことにを選択した場合の説明をさせていただきます。と言っても今宮町さんが想像している様なこととほとんど変わりません」

 あれ?頭の中読まれてる?

「そこは魔力があり、魔法が使え、人以外の種族がいて、魔獣という普通の肉食獣よりも危険な生物がいる世界です。また、地球よりも文明のレベルは劣っているものの魔法の恩恵でとてつもなく不自由だ、ということはありません。もちろん大変なことのほうが多いとは思いますが。さらに、その魔獣も脅威ではありますが他にも盗賊を含む犯罪者が地球、もっと言えば日本に比べて多いので治安が良いとはお世辞にも言えません。そのあたりをよく考えて決めて下さい」

「あー、やっぱりそうですか。まぁそんな感じだとは思っていました。えぇ」

「もちろん、そのままで行けばすぐに危険な目に遭うことは想像できますので、宮町さんもご存知の異世界特典というものをご用意しています」

 やっぱり僕の頭の中が筒抜けなのでは?

「1つ目はこの本の中からお好きなものを1つ差し上げます」

 と言って机に1冊の本が置かれた。表紙は《魔法・魔術・武具・武技 大全》とある。

「あの、魔法と魔術って何が違うかよく分からないのですが」

「あぁすみません。説明不足でしたね。1言でいえば、火を出したり水を出したりするといった自然の力を使うのが魔法。何か……そうですね、例えば結界やバリアを出したり、遠くのものを見たり聞いたりするといった魔法のような自然の力を使わないものが魔術になります。といってもどちらも魔力を使うという意味ではおなじですが。」

「じゃあ例えば氷や土で壁を作ってバリアみたいにすればそれば魔法になるってことですか?」

「はい。分類上はそうなります。ただ、先程も言いましたがどちらも魔力を使うということは同じなので特別魔法のほうがよい、魔術のほうがすごいということはありませんので2つの違いを気にする必要はあまりありませんよ」

「はーそうですか。分かりました」

「ついでに武技は分かりますか?」

「はい、なんかこう、武器を使う技とかですよね。ゲームとかで出てくるような」

「えぇその認識で構いませんよ。何にするかは説明がひととおり終わってからにしましょう」

 なんだかこういう話を聞いているとちょっとワクワクしてきちゃうな。


「では2つ目はですね、当然のことですが今のあなたと向こうの世界では一般常識が全く異なるなわけです。なのでそのまま異世界に行けば先ほどとはまた別の意味で苦労することは理解していただけるでしょう。そこで、向こうの世界での常識……例えば魔獣というのは当然見たことがないでしょうがあちらの世界ではそれの名前や習性がすでに知られているものを知ることができる本を差し上げます。これは異世界に行くときに脳に自動でインストールされ、いつでも確認できます」

 ……インストール?

「あのすみません。そのインストールってのは具体的にどうやるんですか?危険とか無いんですよね?ちょっと怖いんですけど」

「えぇもちろん。痛みはありませんしインストールしたからといって何かしらの副作用などもありませんので安心して下さい。具体的なインストールの方法としては、私の後ろにドアがありますが、そこを通るとこれも自動的に異世界に行けるのですが、通る瞬間にインストールされる仕組みになっています」

 ……仕組みは謎だがまぁ天使様のやることだし気にしたら負けというやつかな。

「使い方は簡単で、分からないものを見たり聞いたりしたときに、意識的にでも無意識的にでも勝手に頭の中にその知識が浮かんで理解できるようになります。また、その事柄がどれだけ複雑なものであっても全て1秒以内で理解できるんです。ただ注意してほしいのは、一般常識から外れる、特定の組織や地域の中の常識は理解できません。例えば専門家しか使わない様な道具なんかはこの本には載っていません」

 なるほど。


「3つ目ですが、先ほども言いましたが文明のレベルが地球と比べると劣っています。なので今、異世界の硬い布団で寝ようとしても中々眠れなかったり疲れが取れなかったりするでしょうし、料理の方も物足りなさを覚えたりすると思います。その他、先ほどまでの話と似たような話しで申し訳無いのですが困ることが多いでしょう。ただ、これは魔法や知識ではどうしようもありません。ではどうするかというと、本をインストールするのと同じ要領で異世界に行くときに向こうで問題なく生活できるように体を最適化します。もちろん副作用などはありません」

「あの、だったら最初から知識も直接頭にインストール?というのをすればいいのでは?」

「あぁ、素晴らしいですね。確かにそのとおりなのですが、しかし、1度に大量の知識が入るとやはり混乱したり、新しい世界で生活しているといくつかの知識を忘れてしまったりしますからね。そうなることを避けるためにも何度も閲覧可能かつ、すぐさま知識を得ることができる本という媒体を使っているわけです」

「おーなるほど。理解しました。すみませんでした」

「いえいえ、他にも気になることがあったらどんどん聞いて下さい」


「では次は4つ目ですね」

 と言ってソラさんは机の上に大きめのカバンを置いた。

「魔法や武器、知識と新しい世界に行っても適応できる体を手に入れてもまだ安心はできません。そこでまずはお金ですね。向こうへ行っても無一文では寝泊まりはおろか食事もできません。それにすぐにお金を稼げるとも限らないので日本円で30万円をお渡しします。あまり無駄遣いはしないで下さいね」

 え?マジか。どこぞの勇者は王様から傷薬がいくつか買える程度のお金しかもらえなかったのに。これが王様と天使様の違いか。それに30万ってなんか中途半端に大金では?

「それと、異世界に到着したときなのですが、町にいきなり出ると他の人が当然驚くことになるので歩いて半日ほどのところに出る事になります。そこで必要な道具として周辺の地図とコンパス、それと乾燥させて保存が効くパンと干し肉、ひょうたんを加工して作った水筒……もちろん水が入ったものをそれぞれ2個づつお渡しします。このひょうたんは再利用してまた水を入れて使うことができますので有効活用して下さい。これらは向こうでも実際に食べられ、また使われているものになります。と言っても水系統の魔法を覚えれば水筒はいらないのですが」

「いや異世界にもひょうたんってあるんですか?」

「あぁ、その説明もまだでしたね。あまりにも違いすぎるとそれもまた大変だろうということで、基本的には似た世界を選ばせてもらっています。もちろん、こちらにはあるが向こうには無かったり、その逆もあるでしょうけど大半のものは同じと考えてもらっていいですよ。魔獣なんかがその例ですね」

 確かに異世界に行ってイチゴだと思って食べたらみかんの味がしたーとかは確かに嬉しこでは無いけど、でもそういう事も含めてちょっと楽しみにしてんたけど……でも慣れ親しんだ物があるのは安心だね。

「それからその、申し訳無いのですが、僕コンパスの使い方分からないんですよね。地図の方も…⋯スマホなら標識とか建物を目印にすればなんとかなりますし、最悪、道案内してくれるのでどうにかなるんですけど…⋯。これはちょっと読めないです。すみません」

 そう、渡された地図には森だとか川だとか町だとかが描いてあるが全く分からない。いやもちろん学校で地図の読み方を習った気がするけど(三角州とか?イマイチ覚えがないね。うん)将来使うなんて思ってなかったからさ。スマホあるし別にいいでしょハハハ、なんて思ってナメてましたスンマセン。

 いや~あれだね。よく親や教師が言う「将来いつ必要になるか分からないから色々なことを勉強するんだ」的なやつだね。今ほど実感したことはないよ。

「あぁそれなら大丈夫ですよ。先ほど説明した一般常識の本に使い方も読み方も書いてあるので、是非とも参考にしてみて下さい」

 キュンキュンッ。優しすぎて有能すぎる。さすがは天使様。僕みたいなバカへの対応も完璧だ。

「それと申し訳ないのですが、その格好で向こうの世界へ行くことはできない決まりでして。着替えも含めて上下の衣服と下着それから上着を3着づつ用意しました。もちろん靴と靴下も。ですので後ほど着替えてもらえますか?」

 アニメやマンガなんかで見るような無地で色も地味なザ・異世界の村人Aみたいな服だなコレ。

「あ、はい、もちろん。それくらい全然いいですよ」

「ありがとうございます」

 いやここまで色々してもらって服を着替えてなんて別に…⋯。

「それとスマホなどの持ち物も置いていってもらうことに事になりますがよろしいですか?」

 正直よろしく無い。よろしくは無いが他ならぬ天使様の頼みなら、僕はスマホだろうが何だろうが捨てていく覚悟だ!!…⋯あれ、なんか僕テンションちょっとおかしい様な?落ち込んでいるよりはいいかもだけど……。


「長くなってしまいましたが説明は以上になります。何か聞きたいことはありますか?」

「えっと……そうですね。あっそうだ。先ほどひょうたんで作った水筒は再利用できると言っていましたけど、異世界って水道無いですよね。井戸から汲むことになるんですかね?」

「えぇそうなりますね。旅をしている時には川の水を飲むこともあるでしょうが」

「それって大丈夫なんでしょうか。何かの本か何かでお腹を壊すと聞いたことがあるんですが」

「あぁ良いですね。あなたがこれから行く世界は今までいた世界に比べれば危険な世界です。そうやって用心することは非常に大切ですよ。ぜひ今後も続けて下さい。お腹を壊すのではという懸念は心配ありません。なぜなら、先ほど出てきた向こうの世界に体を最適化するからです。なので消毒されていなくても、なんでしたら少し汚れていたとしても問題ありません。もちろん完全な泥水を飲むのはダメですよ。」

「はい、気をつけます。でもすごいですね。そこまでしてくれるなんて」

「いえいえ、いいんですよ。そういうわけで、向こうで大多数が問題なくできていることは宮町さんもできると思ってもらっていいですよ。先ほど用心してと言っておいてなんですが。

 他になにかありますか?」

「えっと、異世界に行ってなにかしないといけないことってありますか?魔王を倒せとか」

「そういったことはありませんよ。犯罪行為は遠慮してほしいですが、何をしても構いません。仮にしたとしても、こちらからなにかしらのペナルティはありません。ですが当然向こうにも警察組織のようなものはありますが」

「そうですか。……そういえば聞いてなかったんですが、波美(はみ)さんや姫璃(ひめり)さん……えっと、僕と一緒にいた子達も一緒に異世界に行けるんです…よね?」

 これで無理だと言われてしまったら号泣間違いなしだね。ハハハ。というか、絶対泣く。心が折れて異世界にもいけなくなっちゃうよ。……大丈夫だよね。フラグじゃないんだからね。頼むよ神様天使様。

「えー、そうですね。城田姫璃(しろたひめり)さんに関しては本人が望めば問題ありません」

 え?うそでしょ。なんかすっごく不安な言い方──

「ただ、私の力が足りず申し訳ないんですが島村波美(しまむらはみ)さんは異世界に行くことができません。本当に申し訳ありません」

 ンノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォゥ!!!!!

 言ったじゃん。フラグじゃないよって言ったじゃん。いや思っただけだけどでも言ったじゃん。

 いやマジでそんな事あるのか〜マジか~。

 いやいやなるほどなるほど、ほーへーはー。いやー参ったね。

 つまりあれですね。『宮町悠一異世界大冒険をお送りする予定でしたがは当人の涙が止まらず、また心が粉砕してしまったため無期限の延期とさせていただきます。関係各所の方々には大変なご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫びいたします』ということですね。えぇえぇ分かります。分かります。

 なんて感じで心の中ではハイ・テン・ション☆みたいになってるけど実際はもう茫然自失の大ショック。


 もちろん波美さんがいなくても、もっと言えば姫璃さんが異世界にいかない選択をしたとしても、当然1人で異世界には行ける。でもさ、恥も外聞もなく正直に言えば、1人は心細いし単純に怖いし。笑いたければ笑えばいいし、自分でも自分勝手というか、じゃあ行かなければ良いのでは!?とも思うけどさ。でもこんなチャンスもう無いだろうし、もったいないじゃナイデスカ。 


 それに、波美さんなら、異世界については多少なりとも知識があるし、そもそも彼女、楽しそうなことにはとりあえず突撃する人だからさ、行くと言うと思ってたな。それに一緒にいて楽しいし。

 もちろん、最近は何話して良いかも分からないけど姫璃さんが異世界に来てくれるというなら嬉しいよ。また昔みたいに楽しく過ごすことができるようになる良い機会になるとも思う。でも、姫璃さんについてはいかないという選択をするだろうと思ってる。だって僕はアニメや本で楽しそうだと思えるけど、おそらくそれらの知識がない姫璃さんならわざわざそんな危険なところには行こうとは思わないだろう。

 さて、どうしよう。1人で行くか、行かないか。ってあ、そうか!!

「あの、ソラさん」

「はい。大丈夫ですか?ところで1つ提案──」

「確かに彼女は髪を染めていますし、たまに言葉遣いが悪いなと思うときもあります。素行不良だと思われても仕方がないかもしれません。実際本人も『髪を染めてるからか、初対面の人にはよく思われないことがある。』と言ってました。でも彼女、あれで結構礼儀正しくてですね。気遣いができてちゃんと人を思いやることができる優しい人なんです。なのでもう1度考え直してもらえませんか?」

「あぁいえそのですね、宮町さん。まずは一旦落ち着いて下さい。彼女が異世界へ行けないのは年齢制限のせいなんですよ」

 ホワッツ???もしかしてやっちまった?なんか色々褒めちゃったよ恥ずかしい……。

「簡単に説明すると、異世界へ行けるのは16歳から25歳までの方のみでして。そして島村さんは残念ながらまだ15歳なので基準を満たしてないんです」

「?なぜそんなものが?」

「15歳以下の方は体がまだできていなかったりしますし、それに精神的に幼いといいますか、悪事に手を染める可能性がありまして。もちろん15歳なら個人的には問題ないと思いますが、上の人がキリのいい数字にしようと言い出しまして、そのまま決定しました。26歳以上の方は精神的には問題ですが、肉体のほうが徐々に衰えていきますからね。それでも30歳まで引き伸ばしてもいいのでは?という意見もあったらしいのですが、それだと15年ということになりなんか嫌だから10年の間にしようということになったらしいです」

「なるほど、精神的な問題や肉体的な問題ならしょうがないですけど、キリがどうとかなんか嫌とかは何なんですかね」

「申し訳ありません。これに関しては私ではどうしようもなくてですね。ただ、波美さんを生き返らせる事はできませんが、一緒に異世界に行くことはできます」

「本当ですか!?」

「はい。最初の方で説明した異世界に行く際に選べる……分類は魔術になりますが、降霊術、というものがありまして。これを使えば霊として、一緒に行くことはできますし、当然意思疎通は可能です。レアリティは高いんですよ。ただ、問題点を挙げれば攻撃手段が無いということですね。もちろん向こうで攻撃手段を取得することもできますけどね」

 なるほど……しかし攻撃手段なしはさすがに……いやでも別に戦うことにこだわらなくてもいいわけだからな……スローライフ的な?でもどうやって生活すればいいのか……。地道にコツコツ働とか……。まーそれもいいかもしれない。もともと死ぬ前は高校卒業して大学行ってどこかの会社で働くはずだったわけだし。でもなー、異世界まで行って真面目に働くってのも……。

 でも、さっき僕、気付いちゃったんだよね〜。波美さんが死んじゃった理由って、僕の誕生日を祝ってくれたせいじゃないかって。だってそうじゃなかたら、あの場にはいなかったわけだし。なんかそう思いだしたら罪悪感が……。ほら、僕結構ネガティブだからねー。そりゃ突っ込んできたトラックが悪いのはそうだけど、あーなんかモヤモヤしてきた。ここはお詫びも兼ねて……でも霊か……。

「あの、霊って何ができるんですかね?物に触ったりとかできますか?」

「詳細については能力獲得後に自然と理解ができますのでその時に確認していただければと思いますが、霊は物質に触れる事はできません。会話はできますが、すべての人と、というのも無理ですね。そもそも基本的には術者の方以外見えません。霊自身は他の人のことは見えますし声も聞こえています。

 術者が他の人にも霊を見えるように設定することは可能ですが、それも1人の霊につき3人の方のみ見て会話ができるようにするしかできません。あぁ、この制限はもちろん術者は除きます。なので全部で4人の方とコミュニケーションが取れるということです」

「じゃあ霊には攻撃なんかは当たらないんですね?いや、でもお祓いというか、こう、聖水みたいなものかけられたらまずいんじゃないですか?」

「そういうのが効くのは悪霊やアンデットですね。降霊術で呼び出した霊には効きませんし、もちろんその他の魔法などのあらゆる攻撃もすり抜けてしまって効果がありません」

「その霊は呼び出したいときだけ呼び出すんですか?それとも呼び出したらずっとそのままなんでしょうか?」

「術者には霊を呼び出すときに最大で3人まで同時に呼び出して維持できます。そして、呼び出したままにするか、呼び出しを解除するかを選びます。呼び出したままならたとえ術者が眠っていようと何かの理由で気絶しようと解除できませんが、同じ方を霊として呼び出すことができるのは1回だけです。なので解除したら最後、その方とは永遠に会えません」

「そうですか。じゃあもしも、波美さんを霊として呼び出したけど、もう消えたいと言ってきたらそのようしてあげることができるわけですね?」

「えぇ、可能です。ただ……いま、あなたが何を考えているかはわかります。決して悪いことではありません。しかし、気に病んではいけません。あれは事故です。私としては、宮町さんには異世界に行くのなら、楽しく過ごしてほしいのです」

「いやぁ~でも、こうしないとなんだか落ち着かないというか、気持ち悪いというか。僕、ネガティブなんですよねー。なので、その降霊術を取って、彼女を呼び出して、説明して、霊なんか嫌だというなら解除して、何ていうんですかね、楽にしてあげる?の表現であっているか分からないですが、そうします。そもそも波美さんホラー苦手だから、自分が霊になったらどうなっちゃうんですかね?……できれば、彼女にそんなこと気にしてないよといってもらって、向こうに行って何するかも分からないですけど、一緒に楽しく過ごせればいいという、ただ甘いことをいう自分勝手野郎です。でもほら、誕生日にこれだけ大変な目に遭ったんですから少しくらい夢を見てもいいじゃないですか。まぁ今回もダメだったら本格的に立ち直れないかもですが……」

「私もあまり軽々しくは言えませんが、自信を持って下さい。宮町さんが言っていたじゃないですか」

「ネガティブと?」

「それでどうやって自信を持つんですか。言っていたじゃないですか。島村さんは気遣いができてちゃんと人を思いやることができる優しい人だと。もともとあなたのせいではないのですから、許すも何もないとは思いますが、彼女も分かってくれますよ」


 ということで話はまとまった。僕は異世界に行き、波美さんと話をして、気持ちよく異世界を楽しむんだ。

 ……なんだかよく分からないうちにちょっといい話みたいになっちゃったけど……おかしいな、こんなはずじゃなかったんだけど。……まあいいよね☆

「それと最後に降霊術について注意事項が1つあります。それはこの術は基本向こうの世界の方のみを対象にして霊として呼び出すことができるということです」

 ……まーたなんだか雲行きが……。今度なにか悪いことが起こるとしたら異世界に到着してからだと思っていたんだけど……。

「いえいえ大丈夫ですよ。島村さんだけ例外ということにしておきます、ということですから。なので、地球で亡くなった他の人は呼び出せませんので気をつけてくださいね」

「あ、そうですか。ありがとうございます。でも例外なんて制度?があるんですか?だったら最初から波美さんを15歳でもOKということにしてくれればよかったのに」

「年齢制限の方は私ではどうしようもないんですよ。ただ、これくらいなら後で私が怒られれば済むレベルの話ですから」

「それ本当に大丈夫なんですか!?」

「えぇもちろん。そういえば、タイミングがなくて言いそびれてしまっていましたね。お誕生日おめでとおうございます宮町さん。大したことではありませんが、これはささやかな誕生日プレゼント代わりだと思ってどうぞ受け取って下さい」

 キュンキュンキュンッ。本当にめちゃくちゃ優しい。感動だ。いかん。これ以上は本当に惚れてしまいそうだ。


「では、最終確認をさせていただきます。宮町悠一さん、あなたは降霊術を得て異世界へ行く、ということでよろしいですね。」

「はい。僕は、異世界へ行きます。まだ少しだけ怖かったりしますが」

「分かりました。ドアの上にデジタル時計がありますが分かりますか?」

 ソラさんが指さした方を見ると00時00分00秒で止まっている。そうかやっぱり時計だったか。最初見た時は時計かストップウォッチだと思ってたけど。

「説明が全て終わり、私の仕事も終わりました。そして私が部屋から出るとあのデジタル時計が動き出します。12時ちょうどになったら強制的にあなたは異世界に行くことになります。もちろん心の準備ができていれば、時間になる前にこのドアをくくれば異世界に到着します。

 あぁ、そうだ危ない。伝え忘れていましたが、もしも城田さんが異世界に行くことを希望した場合、お2人が望めば同じ場所に出ることが可能ですが同意されますか?」

「え、それははい、もちろんですけど、姫璃さんも異世界へ行くことにしたんですか?」

「申し訳ありません。プライバシーがありますので、行くかどうかはこちらからは伝えられないんです。なのでこれはただの確認です。

 それから、説明の最中にも言いましたが、ご用意した服に着替えて下さいね。脱いだものはそのあたりに置いておいてもらっていいですから」

「あ、はい。分かりました。ありがとうございました。」

「いえ、こちらこそ長々と付き合っていただいてありがとうございました。宮町さんのこれからの人生がより良いものであることを願っています。では、失礼いたします」

 そう言うとソラさんは部屋を出ていった。ドアが閉まった途端、上にあるデジタル時計が動き出した。

 僕は言われたとおりに着替えた。なんだか着心地が良いとは言えないかな。でも、それもそのうち慣れるんだろう。

 もう1度、ソファに腰掛ける。そして目を閉じ考える。これからのことは、波美さんのことを片付けてからだ。だから、自然ともう会えない人が浮かんでくる。父さん、母さんには悲しい気持ちにさせてしまっただろうし迷惑をかけてしまった。

 高校では波美さんくらいだったけど、中学ではちゃんと僕にも友だちがいた。1人は途中で転校し、2人は別の高校へ行ってしまったけれど。彼らがニュースか何かで僕が死んでしまったと知ったらどう思うだろう。きっとこう思うだろう。

「「「確かに悠一が亡くなったことは非常時残念だ。だがそれはそれとして、島村さんだけではなく他にも1人可愛い女の子と一緒だったらしいじゃないか!クソが!ハーレムのつもりか生意気な!本当にそこだけは滅茶苦茶うらやましい!!!彼女たちには悪いが、可愛い女の子2人と一緒に死ねるなんて逆に本望だろうがおい!!!!!」」」

 ……いや、彼らはほんとに友だちだよ。僕だってモテたわけじゃないし。波美さんはただの友だちだし。姫璃さんもただの幼馴染だし。まぁ彼らは女子と接点らしい接点はなかったみたいだから、客観的に見て恵まれてるなぁとは思うけど。

 などと考えていたけど時計を見るとまだ37分。心の準備ができたとは言えないかもしれないが、こうしていてもやっぱり落ち着かない。

 僕は立ち上がり、ゆっくりとドアを開けた。中は光で満ちていてその先がどうなっているのか全く分からない。それでも、ほんの少し、勇気を出して、足を踏み出した──。


 ──所変わって城田姫璃は今──

 今までの人生で、後から振り返って真っ先に後悔することはなんですか?と聞かれたら、わたしは小学校の3年生の時。あの日、悠一君が勉強で分からないところがあると言いました。そこは偶然にも、わたしにも解き方がわかる箇所だったので教えてあげたら、とても喜んでくれました。それがうれしかったんです。

 あの頃は、いつも2人でいて、お菓子を食べていると、いつも最後に残った1つは自分はもういらないから上げると言って譲ってくれていました。他の子に、今思えば小さないたずらでしたが、それをされて泣いていると、彼はわたしを優しく慰めてくれた。もっとも、彼はケンカなどはできないのでなにか具体的なことをしてくれたわけではですが、そういう暴力的ではなく比較的おとなしい性格は、やっぱり一緒にいて落ち着きました。

 そんなふうに、いつも気遣ってくれる彼が勉強を教えてあげると喜んでくれるので、その日からよく自主的に勉強するようになりました。

 でもそれが間違いだったのです。

 あれは小学校4年生の3学期。とある出来事がきっかけで、悠一君とまともに話せなくなってしまいました。他の子と遊んでいるのも楽しいですが、わたしはやっぱり彼と一緒のほうが楽しいかったですし、なぜだか安心感もありました。

 それでも、わたしたちは家が隣で仲良しなんですし、いつかはまた楽しくお話して遊べるようになると漠然と思っていましたが、もちろんそんなことにはなりませんでした。

 小学校6年生になり、進学先を親と話し合っていたときのことです。悠一君には言いませんでしたが、わたしも最初は同じ中学に行こうと考えていました。しかし、毎日勉強をがんばっていたせいで成績が上がってしまい、教師や親からより偏差値が良い中学にしたらどうかと提案されました。

 もちろん断ることもできましたが、残念ながら、そのときは勇気が出ませんでした。

 そして、別々の中学に進学し、高校も別。数カ月に1度、出会って少しだけ会話する程度のただの顔見知り程度の関係になってしまいました。その会話もなんだかぎこちないものです。原因の1部はわたしの気もしますが……。どういうことかと言うと、中学に入った時、教師や先輩には敬語を使えと教えられまして、敬語を覚え始めた頃に悠一君と久しぶりに会うことができて嬉しさ半分何を話していいかという緊張半分でつい敬語で話してしまい、以降はそのまま……という状態でして。彼も最初は戸惑っているみたいでした。

それはそうでしょうね。わたしだって、いままでタメ口で話していた人が急に敬語で話始めたら何かあったのか?もしくは自分がなにかしてしまったのではないか?と思うでしょう。

  それでも中学2年生のバレンタインデーの日、もうこんなのは嫌だと思い、友だちにも背中を押され、チョコを渡して小学生の時みたいな関係に戻りたいと伝えようとしたのですが、重大な問題が起きてあえなく失敗してしまいました。

 しかし!、ついに!、わたしにもチャンスが巡ってきました。まぁ死んでしまいましたけど。もう今後、家族や友だちとも会えなくなると思うとポッカリと心に穴が空いたような喪失感に襲われてしまいますが。

 それでも、ポジティブに捉えれば関係を元に戻すならここしかありません。

 さきほど、天使だというメラさんからわたしが死んでしまったこと、異世界についてのことを聞きました。私の事情を何故か知っているらしいメラさんは、

「ホントはプライバシーというものがあるからホントはダメなんだけど、宮町さんは異世界というものを知っているみたいよ。もちろん物語としてだけど。アタシもこの仕事はそれなりに長いけど、大抵そういう人って異世界へ行ってみたいと考えるものよ。ゼッタイそうだってわけではないけど、でも、知り合いが2人しかいないんだから、助け合いながらキズナを深めていけば、いずれあなたのノゾミも叶うでしょう」

 と言ってくれました。だからというわけではありませんが、わたしは異世界に行くことにしました。不安ももちろんありますが……。今はメラさんはすでに説明を終えられて退室しました。服も異世界のものに着替え、準備完了です。

 それと、事故にあったあの日、悠一君と一緒にいた彼女、島村波美さんのことも聞きました。なんでも年レのせいで異世界にはいけないようです。

 彼女には悪いですが、えぇ、本当に申し訳無いと思うのですが、これで悠一君と2人きりです。えへへ。

 あっ、自分で言うのもなんですが、わたしは別にやんでれ?や、ヤバい女ではありませんからね。友だちと話しているとたまにそう言われるんですよ。今でもいまいちこのやんでれ、というものが分からないのですが。

 更に行っておくと、わたしは別に悠一君のことが異性として好きなわけでもありませんよ。もちろん友だちとしては好きですが。なので一緒の時間が多ければ多いほど嬉しいじゃないですか。つまり、そういうことです。

 みたいな話を友だちにも言ったんですが理解はできないがなんか怖いと言われました。プンプンですよ。

 ……でも、よく考えると、島村さんが悠一君の友だちなのか恋人なのかはわかりませんが、とても仲がいいのは分かります。

 だったらもしかして、ショックのあまり異世界には行かないと考える、ということもあるのでは?

 あれぇー?大丈夫……ですよね?着いたら1人だけなんてこと無いですよね。ね?

 そしてわたしはその後2時間くらい悩みましたが今度こそ、勇気を出して、異世界へとつながるドアをくぐった──。

お疲れ様です。

もう少し短くなると思っていたんですが長くなりましたね。

やっぱり説明は読む方も大変でしょうが、書く方もメンドイです。表現の仕方これでいいよね?とか、この説明で分かってくれるかな?とか。大丈夫……ですよね?

それと前から思ってたんですが、チート能力だけ渡していきなり異世界ってなんだかヤバいなと思ってたんですよ。というわけで色々特典盛りだくさんにしたら説明たくさんになりました。

でもこうして面倒な異世界に行くための説明パートは終わりなので(もちろん異世界に行った後も細々とした説明はありますが)、これからは僕も好きに書けるので楽しみですね。ようやく本番です。メインストーリーです。今までは本当にプロローグでしたからね。

僕としては、バトルとか問題が起きてその解決のためにがんばっているところよりも主人公たちが難しいことを考えずに楽しく話したり遊んだりしてわーきゃーしてるのを読むのが好きなので今後はそんな感じになれば良いなと思っています。

と言ってもまず次回は波美を呼び出すところからですね。なんかまたメンドそう……。

というわけでお付き合いありがとうございました。

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