討伐準備
沙希が異空間から剣を二本取り出して構えた瞬間、玉座の間が騒然となった。
「おおっ!」
「剣がどこから!?」
衛兵たちが慌ててクリミア女王の前に立ち塞がる。
沙希はハッとして剣を下ろした。
「あっごめん。こんな所で剣なんか出しちゃダメだよな」
「サキ様、びっくりしましたよ…」
「ごめんごめん。つい二刀流を試したくて」
沙希が笑いながら剣を異空間にしまう。俺は横から沙希を見ていた。
「なあ沙希。優しさからオークロードを討伐してやろうって言ったと思ったけど、もしかして二刀流で暴れたかっただけじゃないのか?」
沙希がギロリと俺を睨む。
「うるさい。両方だ」
やっぱりそうだ。でもまあ、それでクリミア女王のためになるなら一石二鳥だ。
「グレッグたちも来るだろ?」
俺が聞くとグレッグが即答した。
「もちろん手伝うぜ! オークロードなんて俺たちじゃ勝てないけどな。タクヤとサキがいるなら話は別だ」
「ありがとうグレッグ。それとクリミア女王、少し準備させてください」
「準備? 何をですか?」
「信頼できる女性を5人選んでください。女王を守る意志を持った女性を」
クリミアは少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いて5人の侍女を連れてきた。全員若くて真面目そうな顔立ちだ。
俺は5人の侍女に向き直った。
「女王のために、剣を握って戦う覚悟がある人はいますか?」
全員が即答した。
「クリミア様のためなら、なんでもします!」
俺は感心した。クリミアが愛されているのがよくわかる。それに、侍女とはいえ覚悟は本物だ。
「わかりました。それとリムレとシーマも来てくれ」
俺は7人を連れて隣の部屋に行った。
「全員、目をつぶって舌を出してください」
「えっ?」
「なんだそれ?」
「いいからお願い。力をあげるから」
7人は素直に従ってくれた。目をつぶり、小さく舌を出す。
俺は一人ずつ、舌を触れてスキルを渡していった。
侍女5人には剣術LV3を。リムレには短剣術LV3を。シーマには火魔法LV2を。
「もう目を開けていいよ」
7人が一斉に目を開けた。
「な、なんだか体が軽い…」
「力が湧いてくる!」
「これ…私たち強くなったんですか?」
侍女たちが自分の手を見て驚いている。
「これで女王を守ってください。あくまで身を守るための力ですよ。無理はしないでくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちは玉座の間に戻った。侍女たちがクリミアに報告する。
「クリミア様! なんと体が軽くなりました!」
「私たち強くなった気がします!」
クリミアが目を丸くしてから、俺の手を取った。
「タクヤ様、本当にありがとうございます。これで私も安心です」
「大丈夫ですよ。彼女たちは強いです。女王を守ってくれます」
リムレとシーマもグレッグたちに自慢し始めた。
「ガルド見てくれ! 私の短剣術LV3になったんだ!」
「シーマさん、火魔法LV2になったんですか? 」
「えへへ、タクヤさんのおかげです」
しかし、その時セリアが暗い顔をして俺の前に来た。
「タクヤさん…私はタクヤさんの好みではなかったですか?」
「え? どういうこと?」
「私だけ力をいただけなかったので…私が何か悪かったんでしょうか…」
俺は慌てて否定した。
「違うよ! 違う違う! 回復LV2はこれしか無いから渡せないんだ。他のなら渡せるけど」
セリアが俺の手を握った。上目遣いで見つめてくる。
「私にも戦える力をください」
その瞳に、必死な思いが込められていた。俺は顔が赤くなるのを感じながら答えた。
「じゃあ…闇魔法を」
「闇魔法? 本当ですか?」
「ああ。隣の部屋に行こう」
俺はセリアを連れて隣の部屋に行った。目をつぶって舌を出してもらい、ヴァンパイアロードから奪った闇魔法LV4を渡した。
セリアが目を開けて自分のステータスを見て、驚愕した。
「えっLV4? いいんですか? こんなの…」
「いいんだよ。でも一つだけ約束して。悪用したらすぐに奪いに来るからね」
「はい! 絶対に悪用しません! ありがとうございますタクヤさん」
セリアが俺に抱きついてきた。柔らかい体が押し付けられる。俺は慌てて離した。
玉座の間に戻ると、グレッグとガルドが欲しそうに俺を見ていた。
「タクヤ…俺にも何か渡してくれよ」
「頼む! 」
俺は少し考えてから嘘をついた。
「すまん! 女の子にしか渡せない能力なんだ!」
「は? 何でだよ!」
「そう決まってるんだ! ごめんな!」
男とキスなんかしたくないもん。絶対に嫌だ。
グレッグとガルドがブーブー言っているが無視する。馬車が用意されていて、グレッグたちのパーティと一緒に乗り込んだ。
馬車の中で俺は作戦を伝えた。
「俺がスキルを奪っていくから、動きが鈍った奴から倒してくれ。沙希はいつも通りに」
「わかった!」
「了解!」
「任せて!」
沙希を含めた女性陣は暴れたくて仕方ない様子だった。目が輝いている。特に沙希とリムレ。
「二刀流だ! ついにできるぞ!」
「私も戦えるんだ! みんな見てて!」
スキル奪うのが間に合うかなと俺は苦笑いした。
「なあ沙希、オークロードのスキルって何持ってるかわかるか?」
「わかんねえけど、奪えばいいんだろ?」
「まあそうだけどさ。オークロードってLV4とかだったら面倒だぞ」
「大丈夫だって。お前が奪って私が斬る。いつものパターンだろ」
「だな。じゃあ北の山に着いたら索敵を発動する。みんな気をつけてくれよ」
「おう!」
「はい!」
「任せろ!」
馬車は揺れながら北の山を目指して進んでいった。俺は窓の外を見ながら、オークロードとの戦いを想像していた。
オークロード。オークの王。名前からして強そうだ。でも俺たちには沙希がいて、グレッグたちもいる。そして何より、俺のギフトテイカーがある。
「必ず倒すぞ」
俺は小さく呟いた。沙希が俺の手を握ってくれた。
「おう。一緒にな」
北の山の廃坑に着くと、異様な臭いが鼻をついた。
「なんだこの臭い…」
グレッグが鼻をつまむ。
「オークの臭いだ。近くに集落があるな」
俺は索敵を発動した。脳内に地図が広がる。赤い光点が大量に点滅している。
「いた。廃坑の入り口付近に100体以上のオーク。奥に1体…デカい反応がある」
「それがオークロードか?」
「たぶん。でかいぞ。今までの魔物とは段違いだ」
沙希が剣を二本取り出した。
「よし、行くぞ!」
俺たちは廃坑に向かって行った




