クリミア女王
俺と沙希は、再びグランツ王国の街に転移した。前回と同じ場所、路地裏に降り立つ。
「よし、グレッグたちに会いに行くか」
「ああ。あいつらならなんか知ってるだろ」
俺たちは冒険者ギルドに向かった。中に入ると、見慣れた顔がすぐに見つかった。グレッグ、ガルド、セリア、シーマ、リムレ。5人揃って何か話している。
「よお、グレッグ!」
俺が声をかけると、グレッグが振り返り、パッと顔を輝かせた。
「タクヤ! サキ! 来てくれたのか!」
「約束しただろ。また来るって」
「ああ! 元気だったか?」
「俺たちは相変わらずだよ。で、こっちはどうなんだ? 最近の様子を教えてくれ」
俺たちはテーブルを囲んで座った。グレッグが少し声を潛める。
「実は…マサヒロ王が処刑されたんだ」
「処刑!?」
「ああ。タクヤたちが帰った後、あいつはただのデブになっちまってな。今まで弾圧されてた兵士が一気に襲いかかったんだ。逃げられないようにクリミア姫の前に連れて行って、正式に裁判にかけられて…結果、処刑だった」
沙希が腕を組んで呟く。
「自業自得だな。あいつはやりすぎたんだよ」
「ああ。でもおかげで街は変わったぜ。クリミア姫…いや、クリミア女王が即位して、マサヒロが集めたゴロツキ兵士は一掃された。門番も衛兵も真面目な奴らに変わって、住みやすくなったよ」
セリアが嬉しそうに付け加える。
「街の女たちも、もう変な目で見られなくて済むようになりました」
俺はホッとした。俺がスキルを奪ったせいで、誰かが無駄に死ぬようなことにはならなかったらしい。
「それは良かった。で、そのクリミア女王に会ってみたいんだけど、どうすればいい?」
「それなら俺たちが城まで案内するよ!」グレッグが立ち上がる。
俺と沙希はグレッグたちと一緒に城に向かった。街を歩いていると、確かに以前とは雰囲気が違う。兵士たちの目が優しく、街行く人にも親切だ。
城に近づくと、一人の衛兵が俺たちに気づいて駆け寄ってきた。
「あなた方は…もしかして、ヴァルディスの使者様ですか?」
「え? ああ、まあそんなところだけど」
「お待ちしておりました! 是非クリミア女王とお会いください! ご案内します!」
衛兵は食い入るように沙希を見ている。マサヒロと同等の力を持っていると、もう噂が広まっているのかもしれない。
俺たちはそのまま玉座の間に通された。玉座には、一人の女性が座っていた。マサヒロの妻だったクリミアだ。彼女は俺たちを見ると、玉座から降りて深く頭を下げた。
「タクヤ様、サキ様。この度は本当にありがとうございました。あの男の暴虐から私たちを救ってくださって」
「顔を上げてください、クリミア女王。俺たちはただ、自分たちのために行動しただけですよ」
「いいえ。あなた方がいなければ、この国は崩壊していたでしょう。ヴァルディス王国とは是非国交を結びたい。いえ、国としてよりも、タクヤ様とサキ様個人と親交を深めたいのです」
彼女の目には真剣な光が宿っていた。俺は頷いた。
「もちろん。俺たちもそうしたいと思ってました。アルベル王にも報告して、正式な国交樹立に向けて動きますよ」
「ありがとうございます!」
「クリミア女王、一つ聞いていいですか? マサヒロはヴァルディスに攻め込もうとしていたけど、止める力は無かったんですか?」
クリミアの顔が曇った。
「それが…マサヒロを放置していたのには理由があるのです」
「理由?」
「北の山にオークの集落があるのです。オークロードが率いていて…マサヒロにオークロードを倒すように頼んでいたのですが、彼は全く動きませんでした。『俺は王だ、自ら動く必要はない』と」
オークロードか。厄介な存在だ。
「マサヒロの失脚により、そのオークロードに対抗できる力が無くなってしまったのです」
クリミアは言いづらそうに、チラチラと沙希の方を見た。やはり、沙希がマサヒロと同等の力を持っていることを知っているらしい。
沙希がニヤリと笑った。
「なあ拓也。二刀流も試してみたいし、久しぶりにスキル集めに行くか?」
「オークロード討伐か?」
「ああ。私はどうしても二刀流がやってみたくてうずうずしてたんだよ。オークロードのスキル、奪えるだろ?」
「ああ、そうゆうことにしとくか、沙希は優しいな」
俺はクリミアに向き直った。
「クリミア女王、そのオークロード、俺たちが倒しますよ」
「本当ですか!?」
「ええ。二刀流の実践も兼ねて、ね。場所はどこですか?」
「北の山の廃坑です。ここから馬で半日の距離です」
沙希が剣の柄に手をかけて立ち上がった。その目は戦意に満ちている。
「よし拓也、行くぞ! 二刀流の時間だ!」




