王妃と一緒にお風呂?
森の探索もかなり奥まで来たはずだ。街の周辺とは比較にならないほど巨大な木々が生い茂り昼間でも薄暗い。
索敵にも何も反応しない。強い個体が縄張りを作っていて弱い魔物が寄り付かないのかなと思っていた時だった。
ふいに目の前の空間が歪んだ。
何もない空間から、いきなり女の人が現れたのだ。
ボロボロの服を着て、手を前に出して、指をダラーンと下に下げている。肌は青白く、髪は乱れ、その目は虚ろだ。
幽霊だ。
「ひっ!」
沙希が叫び声を上げると同時に剣を抜いて斬りかかった。しかし剣は女の体を通り抜け空を切る。
「すり抜けた!? コイツ物理攻撃が効かないのか!」
沙希が半狂乱になりながら剣を振り回す。その剣閃は速いが、すべて虚しく空を切るだけだ。
俺は沙希の肩を掴み、無理やり後ろに下げた。
「沙希落ち着いて!」
沙希は剣を構えたまま震えている。
「幽霊だ! あっち行け! あっち行けよ!」
俺はとりあえずやれることをやった。異空間から取り出した塩を振り撒く。霊には塩だよね? 日本の民俗学的にはそうだろう。
しかし女の霊は塩が当たっても気にする様子もなくそこに漂っている。
「何!? 塩が効かないのか!」
物理も塩もダメならもう逃げるしかない。
「沙希行くぞ!」
俺は沙希の手を掴むと屋敷のエントランスをイメージして転移を発動した。
一瞬の浮遊感の後、俺たちは屋敷のエントランスに戻ってきた。
沙希はまだ震えていた。
「やっぱり幽霊だったのか? ヴァンパイアロードに殺された女の人だろうか?」
「100年間もあいつが暴れてたんだ。いてもおかしくないよな…」
俺は怖がっている沙希を抱きしめていた。彼女の体はまだ小さく震えている。最強の剣士も幽霊は苦手らしい。そのギャップが俺には可愛く見えた。
そこへリーリアが気づいて駆け寄ってきた。
「おかえりなさいませ。奥方様どうなされたのですか?」
俺は事情を説明した。「森で幽霊が出たんだ。塩をかけても効かなかった」
リーリアは少し首を傾げてあっさりと言った。
「それはレイスという魔物ですね。してくるのは精神攻撃だけで害は無い魔物ですよ」
「害は無いって…」沙希が剣を握りしめながら叫ぶ。「だって幽霊だぞ! 怖いじゃないか!」
リーリアは微笑んだ。「怖いと思わせるだけの魔物ですよ。気にしなければそのうちどこかに行きます」
しっかりしている沙希も幽霊は怖いんだな、と可愛いなと思っていると、ドガッ!
腹に衝撃が走った。
「えっ何で?」うずくまりながら見上げると沙希が怒った顔で立っていた。
「私にだって怖い物くらいあるんだ!」
俺また口に出して言ってないのに…とリーリアを見ると彼女はニコリと頷いた。
「今のは私にもわかりました」
ここのメイドは観察眼が鋭すぎる。
とりあえず俺は腹をさすりながら言った。「明日は休みにして家でゆっくりしようか」
するとメリッサが前に出た。
「旦那様、王妃様が遊びに来たいとおっしゃっているので呼んでも大丈夫でしょうか?」
セリーさんか。
俺と沙希は顔を見合わせて頷いた。「いいね。一緒にお菓子でも食べようか」
こうして明日の予定が決まった。
翌日、午前中にセリー王妃が訪れた。
アルベル王は来ていない。どうやら本当に「遊び」らしい。
「拓也様沙希様おはようございます!」
セリーさんはすっかりリラックスした様子で屋敷に入ってきた。
ギルドの受付嬢から、ヴァンパイアロードに攫われて、助けたと思ったら、王に見染められて、今や王妃だ。
波瀾万丈の人生って、こうゆう事を言うんだろうな。
俺たちは、王妃を接待するつもりで、日本のお菓子や食べ物を出していく
「すごく美味しいです!拓也様の故郷はこんな美味しい物ばかりなのですか?」
満足してくれたみたいだ
「そうですね、美味しく食べるために素材の品種改良とかして、美味しいものを、もっと美味しくするっていう民族ですね」
「なるほど、それと、その、沙希様の髪がサラサラになっているのが、すごく気になるんですが‥」
セリーさんも沙希のサラサラヘアーに気づいてしまったか、キレイだもんな
「俺の故郷から髪を洗う薬品を持ってきたんですよ、使ってみますか?」
顔がパァって明るくなったセリーさんは、俺の手を掴んで引っ張って行く
「早く行きましょう、お風呂ですか?」
えっ、いいの?王妃と一緒にお風呂入っていいの?と思っていると、後ろから沙希に殴られた
結局、沙希とセリーさんとメイド3人が一緒にお風呂に入る事に
俺は、その間にセリーさんへのお土産のシャンプーセットを日本から取ってこようかな




