ヴァンパイアロードとの死闘
ヴァンパイアロードのアルカードは、俺たちのことを完全に格下と見て舐めている。
玉座にふんぞり返ったまま、赤い目を細めて俺たちを品定めするように見つめている。その態度からも、歴戦の強者としての余裕が感じられた。
だが、それが好都合だ。今がチャンスだ。
俺はアルカードに話しかけながら、ひそかにアビリティサイトを発動させたまま、1番厄介そうな「魅了LV5」を奪いにいく。ギフトテイカーをアルカードのスキルに絡めていく。気づかれてはいけない。
「アルカードさん、連れ去った女性たちはどうしたんですか?」
俺はなるべく平静を装って尋ねた。
アルカードはニヤリと笑い、まるで自慢話でもするかのように語り始めた。
「犯しながら、血を吸って美味しく頂いたよ。快感に悶えながら死んでいくのを見るのは愉快だったぞ」
その言葉に、沙希さんと静香さんの殺気が強まったのを感じる。俺も腸が煮えくり返る思いだ。だが、まだだ。まだスキルを奪いきれていない。
アルカードは続けて、今度は沙希さんと静香さんに向かって言った。
「あの街にまだ、お前たちのような美少女がいたとはな。そっちから来てくれて嬉しいぞ。お前たちにも、最高の快感を与えてやろう」
まだ奪えない。LV5のスキルを奪うのは1分以上かかりそうだ。このアルカードというヴァンパイアロードの弱点は女みたいだな。女性を見ると話が長くなる。助かる。
俺はさらに話を引き延ばす。
「この2人は剣術LV4と槍術LV4を持っているので強いですよ。そう簡単にはやられませんよ」
アルカードが、せせら笑う。
「そんな物、私の前では無意味だ。自分から服を脱いで私を楽しませるなら苦しめないでやるぞ。どうだ、美少女たちよ」
その時、ズルッとスキルが移動した感触がした。
来た!「魅了LV5」を奪った!
心の中でガッツポーズをしながら、俺はすぐに次の標的、「闇魔法LV4」と「剣術LV4」にギフトテイカーを伸ばす。今度は2つ同時に奪う。多少無理があるが、時間がない。
「貴様、何かしたのか?」
アルカードが不審そうに俺を睨みつける。どうやら何かを感じ取ったようだ。魅了スキルが使えなくなったことに気づいたのかもしれない。
俺はとっさにハッタリをかました。
「お前を倒すのに何も準備してないと思ったのか!お前のスキルを使えなくするアイテムを持っているぞ!」
「なに!?」
アルカードは多分、魅了を使おうとしたのだろう。何も発動しないのを見て、激昂した。
「よくも、よくも私のスキルを!」
怒り狂うアルカードを尻目に、俺はギフトテイカーを集中させる。
ズルッ…ズルッ…
「闇魔法LV4」と「剣術LV4」も奪うのに成功した!
これでアルカードに残されたスキルは「吸血LV5」と「転移LV5」だけだ。後は転移を奪うのに1分だ!
アルカードは突然、姿を消した。
次の瞬間、俺の背中に鋭い痛みが走る。転移で背後に回り込み、剣を振るってきたのだ。
「ぐっ…」
俺は呻き声を上げながら、振り返ってアルカードを見据える。剣術を奪ってなかったら、ここで死んでたかもしれない。背中から血が滴る感覚があるが、致命傷ではない。
俺は再びアルカードを見て、ギフトテイカーを伸ばす。
しかし、転移で移動されるたびにギフトテイカーがリセットされてしまう。また最初からになってしまうのだ。
「くそっ…」
俺は小声で沙希さんと静香さんに伝えた。
「ずっと見てないと奪えないみたいだ。転移されたら最初からになってしまう」
「どうする?」
「時間を稼ぐしかない」
俺たちはお互いの背中を守りながら、奪うのに必要な時間を稼ぐ戦法に切り替えた。
しかしアルカードは転移をしながら攻撃してきて、反撃しようとするとまた転移で逃げてしまう。まさにヒットアンドアウェイ。こちらから攻められない以上、防戦一方にならざるを得ない。
沙希さんが舌打ちする。
「チッ、ちょこまかと!」
「このままじゃジリ貧です…」
静香さんも焦りの色を見せ始めた。
その時、静香さんが小声で言った。
「私に任せてください」
「静香?」
静香さんは決意の表情で、中央に1人歩き出した。そして、突然声を張り上げた。
「アルカード様!私だけは助けてください!なんでもしますから!」
そう言いながら、静香さんは服を脱ぎ出した。冒険者用のチュニックを脱ぎ捨て、下着姿になる。
俺は一瞬、何が起きているのか理解できなかった。
しかし沙希さんはすぐに静香さんの思惑に気づいたようだ。
「静香!抜け駆けだぞ!アルカード様、私もアルカード様のために何でもします、助けてください!」
沙希さんも服を脱ぎ出す。2人はあっという間に下着姿になった。
アルカードは2人の前に転移で現れた。ニヤッと笑いながら、舐め回すように2人の体を見つめる。
「よし、服を脱いだらその男を殺せ。そうしたら俺の配下にしてやる」
俺は状況を即座に理解した。2人はアルカードの女好きという弱点を突いて、時間を稼ごうとしているんだ。
俺は武器を落として、膝をつく。
「お前たち、裏切るのか!」
渾身の演技だった。悲しみと怒りを込めた声で叫びながら、俺は必死にアルカードの「転移LV5」を奪うのに集中する。
2人がゆっくりと、服を脱いでいく。下着になり、ブラジャーを外し、そしてパンツも脱いで素っ裸になった。
沙希さんのスレンダーで引き締まった体。静香さんの小柄なのに大きな胸が揺れる。
アルカードはニヤニヤと笑いながら、ずっと同じ場所に止まって2人を見ている。よほどの女好きみたいだな。そのスケベ心が命取りだ。
その時、ズルリとスキルが奪えた感覚がした。
「奪ったぞ、やってしまえ!」
俺は叫んだ。
沙希さんは即座に異空間から剣を取り出して、アルカードに斬りかかる。全裸のまま剣を振るう沙希さんの姿は、まるで戦いの女神のように神々しく、そして綺麗だった。
「なに!?」
アルカードはすぐに転移を発動しようとしたが、奪われているので当然発動しない。焦りの色を浮かべるアルカード。
「なぜだ!なぜ転移が使えない!」
「お前のスキルは全部奪った!残ってるのは吸血だけだ!」
俺は高らかに宣言した。
スキルが吸血しか無くなったアルカードは、最後の足掻きとばかりに沙希さんに噛みつこうとする。鋭い牙をむき出しにして、沙希さんの白い首筋に狙いを定める。
しかし、その牙が沙希さんに届くことはなかった。
「させません!」
静香さんの槍が、アルカードの口の中に突き刺さった。口蓋を貫き、脳まで達したのだろう。
「グワァーーっ!」
アルカードは絶叫した。
「まさか、私が負けるだと!」
その言葉を最後に、ヴァンパイアロード、アルカードは灰になっていった。ボロボロと崩れ落ち、床に灰の山ができる。
静寂が広間を包んだ。
「勝った…」
「やったぞー!」
俺たちは3人で抱き合った。戦いの興奮と、生還した安堵で、自然と涙が出てきた。
沙希さんと静香さんはまだ全裸だ。俺はチラチラと2人の体を見てしまう。沙希さんの細い腰、静香さんの大きな胸。さっきまでは必死で気にならなかったのに、今はもうダメだ。完全に男の目線で見てしまう。
沙希さんがそれに気づいた。
「ムッツリ拓也が復活してるぞ!」
沙希さんは笑いながら俺の頭を小突いた。静香さんも顔を赤らめて、手で体を隠す。
「もー、拓也くんったら」
「だって…その…」
俺が口ごもっていると、沙希さんがため息をついた。
「まあいいや。とりあえず服を着るぞ。それから城の中を調べよう。まだ囚われている人がいるかもしれない」
俺たちは服を着て、城の中を探索した。
薄暗い廊下を進み、いくつもの部屋を調べていく。食料庫や武器庫、そして血の匂いが染み付いた拷問部屋。おぞましい光景に、静香さんは何度も顔を背けた。
そして、一番奥の部屋のドアを開けた時だった。
「誰かいる!」
部屋の中には、裸で縛られた女性が倒れていた。
よく見ると、それはギルドの受付のお姉さんだった。薄い布団のようなものの上に転がされ、手足を縛られている。意識はあるようで、俺たちを見ると涙を浮かべた。
「お姉さん!」
俺は急いで駆け寄り、縄を解いてやった。
「拓也さん…沙希さん…静香さん…」
お姉さんは震える声で俺たちの名前を呼ぶと、俺に抱きついてきた。
「拓也様、ありがとうございます…今日の夜には、犯されて血を吸われるはずでした…」
お姉さんは泣きじゃくりながら、ずっと抱きついて離してくれない。柔らかい体が密着して、さっきの沙希と静香の裸が頭に浮かぶ。いや、今はそんな場合じゃない。
沙希さんが服を着て、異空間から予備の服を出してお姉さんに渡した。
「ほら、これ着て」
お姉さんは服を受け取ったところで、ようやく自分が裸だったことを思い出したようだ。顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに身体を隠す。
沙希さんが俺を睨んだ。
「ムッツリ!あっち向いてろ!」
「はいはい」
俺は素直に後ろを向いた。沙希さんと静香さんが手伝って、お姉さんに服を着せる。その間、俺は壁を見つめながら、アルカードが灰になった場所を思い出していた。
本当に倒せたんだ。ヴァンパイアロードを。
しばらくして、お姉さんが落ち着いたところで、城の中をさらに調べた。
しかし他には囚われている人はいないようだった。あるのは血を吸われた跡がある干からびた遺体ばかり。助けられなかった命も多かったのだ。
俺は無念の思いで、城を出る決断をした。
「帰ろう、俺たちの街に!」
沙希さんと静香さん、そしてお姉さんが頷く。
俺たちは4人で、北の城を後にした。
帰り道、沙希さんが俺の隣に来て、小声で言った。
「なあ、拓也」
「ん?」
「私と静香が裸になった時、お前、ちょっと嬉しそうだっただろ」
「え!?そ、そんなことないって!」
「ふーん、まあいいや。でもな、お前がスキルを奪ってなかったら、私たちは死んでたかもしれない。だから、あれは正しい判断だったと思ってる」
沙希さんは微笑んだ。
「お前がムッツリで良かったよ」
「それ、褒めてるのかけなしてるのかどっちだよ」
俺が苦笑すると、静香さんも笑った。
「拓也くんは、私たちの自慢のリーダーですよ」
お姉さんも「私もそう思います」と微笑んだ。
俺はちょっと照れくさくなって、足を速めた。
「さあ、早く帰ろう!王に報告しないと!」
「そうだな!」
「はい!」
俺たちは、希望に満ちた足取りで、王都への道を急いだ。




