表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスごと異世界召喚されたボッチのオタクとヤンキー女子、パーティ編成でクラスメイトにハブられて2人だけで異世界を生き残る  作者: ミコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/23

スケルトンの巣窟

パァン!

いつもの乾いた音が頬に走り、俺の意識は強制的に現実へと引き戻された。


「朝だぞ、変態。いつまで私の胸を枕にして寝てるんだ」


目を開けると、怒ったような、でもどこか呆れたような沙希さんの顔が目の前にある。俺の顔は彼女の胸元に埋もれていた。温かくて柔らかくて、どうしても無意識に寄ってしまうのだ。これはもはや生理現象に近い。


「い、いや! これは不可抗力というか! 自然の摂理というか!」

「摂理で他人の胸に顔を埋めるな!」

もう一度軽くビンタを食らい、俺は慌ててベッドから転がり落ちた。


「おはよう、沙希さん」

「おう、おはよう。さっさと準備しろよ、今日は遺跡まで遠出だぞ」


俺たちは身支度を整え、街を出た。ギルドの情報によれば、遺跡までは片道半日かかるという。徒歩だ。日本にいれば自転車で一時間とかいう距離だろうか。自転車…そういえば、異世界知識チートで自転車を作って一攫千金、みたいな展開もありえるかもしれない。一瞬思考が飛んだが、すぐに思い直した。チェーンの構造とか、ギアの仕組みとか、サドルの素材とか、素人の俺が知っているはずもない。商人相手に商売する度胸もないし、ここは大人しく魔物を狩るのが一番だ。


「野外での宿泊も視野に入れて、食料と水は多めに持っていきますね」

「ああ、頼む。異空間便利すぎるな」

俺はパンと干し肉、それに水の入った皮袋を次々と異空間LV2に放り込んだ。ラノベの定番、アイテムボックス。これがあるだけでサバイバルの難易度は劇的に下がる。


街道を外れ、森の中の獣道を歩く。木漏れ日が揺れ、鳥のさえずりが聞こえる。平和な光景だが、気を抜けない。

「拓也、来るぞ」沙希さんが短剣を構えた。

木陰から、一頭の狼のような魔物が飛び出してきた。毛並みは黒く、目は赤く爛々と光っている。俺は即座にアビリティサイトを発動した。


【噛みつきLV2】【索敵LV1】


「沙希さん、噛みつきLV2と索敵LV1です! 索敵奪います!」

「おう!」

俺はギフトテイカーを発動。ズルリとした感触と共に、狼の魔物の動きが一瞬止まる。索敵LV1が俺のものになった瞬間、俺は沙希さんに合図を送った。

「もう大丈夫です!」

沙希さんは距離を一気に詰め、銀色の閃きを走らせた。二刀流の短剣が正確に急所を突き、魔物は悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちた。

「やったな」沙希さんが魔物から魔石を抉り出す。「デカいな、これ。いい金になりそうだ」

「ですね。索敵LV1、使ってみますね」

俺は目を閉じ、意識を集中してみた。すると、ぼんやりとだが、周囲の気配が感じられるようになった。「あっちに何かいるな」とか、「こっちは何もいないな」という程度の大雑把なものだが、何も感じないよりは遥かにマシだ。レベルが上がれば、もっと詳細な位置や数まで把握できるようになるかもしれない。背後から迫る敵の気配を察知できるだけで、生存率は跳ね上がるはずだ。


半日ほど歩き、昼過ぎには遺跡に到着した。

それは鬱蒼とした森の中にポツンと佇む、古ぼけた石造りの遺跡だった。苔むした壁、崩れかけた柱。そして、その奥からカツカツという乾いた足音が聞こえてくる。

俺はアビリティサイトを遺跡の奥へ向けた。


「うわ…」思わず声が出た。

遺跡の中は、スケルトンがウジャウジャいた。白い骨が、剣や盾を持って、のっそりと歩き回っている。まさにRPGのお家芸、アンデッドの巣窟だ。


「沙希さん、凄いですよ! あいつら、剣術LV2を持ってます!」

俺は興奮して沙希さんに伝えた。ゴブリンや狼と違い、人型で剣術LV2持ちとは良いスキル源だ。だが、同時に俺は悟った。なぜこの依頼がいつまでも掲示板に貼られていたのか。そして、なぜこの世界の人たちがスケルトンを狩らないのか。


この世界の一般人のスキルレベルは、LV1がほとんどだ。LV2になれば「凄い」と言われるレベル。そんな人たちが、LV2の剣術を持つスケルトンと戦えば、それは命懸けの戦いになる。相手は痛みを感じず、疲れを知らない骸骨だ。数が多い上にスキルまで高い。一般人が手を出せるわけがない。


だが、俺たちは違う。

「沙希さん、俺がスキルを奪えば、あいつらはただの剣を持ったガイコツです」

「ああ、そうだな。ならやるぞ」


俺は遺跡の入り口から、片っ端からスケルトンに向かってギフトテイカーを放った。視界に入るスケルトン、十体、二十体。次々とスキルを奪い取っていく。ズルズルという感覚が何度も脳を走り、スケルトンたちの動きが鈍くなっていく。


スキルを奪われたスケルトンは、ただ骨をガクガク震わせるだけの的だ。そこへ沙希さんが突っ込む。二刀流の短剣が骨を断ち切り、頭蓋を砕く。

「気持ち悪いからさっさと行くぞ!」

沙希さんはそう言いながらも、手は止まらない。俺も棍棒でスケルトンを粉砕していく。LV3の棒術のおかげで、骨は崩れるように倒れていく。


三十分もしないうちに、遺跡の入り口付近は片付いた。三十体ほどのスケルトンを倒し、魔石と剣三十本を回収する。剣は錆びているものも多いが、それでも三十本あればそれなりの金になるだろう。魔石もゴブリンのより一回り大きい。


「よし、今日はこのくらいにして急いで町に戻りましょう。換金は明日になりそうですが」

「だな。暗くなる前に戻らないと、野宿になっちまう」


俺たちは急いで来た道を引き返した。索敵のおかげで、魔物との遭遇戦は避けられたが、街に着いた頃には完全に日が落ちていた。夜の街は灯りが少なく、薄暗い。


「換金は明日だな」沙希さんが言った。「腹減ったし、宿に戻ろうぜ」

「ですね。今日は特に疲れました」


宿に戻り、夕食を済ませて、部屋に戻った。バケツのお湯で体を拭きながら、俺は沙希さんに言った。

「沙希さん、剣術渡しますよ。今日奪ってきたやつ」

俺のステータスには『剣術LV3 3/20』とある。十分すぎるほどのスキルだ。


沙希さんは手ぬぐいを止め、少し躊躇うように視線を落とした。

「いいのか? 私ばかりスキルを貰ってるぞ。拓也も剣術欲しいんだろ?」


彼女の言葉は真剣だった。俺たちは対等なパートナーだ。一方が一方に依存しすぎるのは良くないと、彼女も感じているのだろう。

俺は笑って答えた。

「大丈夫ですよ。沙希さんがケガしないように強くなってくれた方が、俺としても嬉しいですから。それに俺、棒術結構気に入ってるんですよ。カンフー映画みたいでカッコイイじゃないですか」


棒をクルクル回す動作を真似ると、沙希さんはフッと笑った。

「変な奴だな」


そして、彼女はゆっくりと俺に顔を近づけてきた。

俺がいつものように顔を寄せようとすると、沙希さんが先にキスをしてきた。

柔らかい唇が重なる。いつものスキル移動のためのキスではなく、もっと情熱的な、熱を帯びたキスだった。

俺は驚きつつも、彼女の背中に手を回し、深く唇を重ねた。舌を絡め合い、互いの唾液を飲み下す。スキルが移動していく感覚があっても、沙希さんは唇を離さなかった。数秒、あるいは十秒以上だろうか。長く、深い口づけ。


ゆっくりと唇が離れると、沙希さんは潤んだ瞳で俺を見つめ、小さな声で言った。

「ありがとう」


その声と表情が、俺の胸を締め付けると同時に、熱くさせた。俺はニヤつきそうになるのを必死で堪え、笑顔で答えた。

「はい!」


今日の沙希さんは、いつもよりもっと可愛く見えた。俺たちの関係が、少しだけ前進した夜だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ