表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスごと異世界召喚されたボッチのオタクとヤンキー女子、パーティ編成でクラスメイトにハブられて2人だけで異世界を生き残る  作者: ミコジ
異世界召喚編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/46

達人の域のレベル3

朝の空気はひんやりと澄んでいて、深く息を吸い込むと肺の奥まで洗われるようだった。城壁の門をくぐりながら、俺は隣を歩く沙希さんの横顔をちらりと見た。彼女は異空間から剣を取り出してはしまい、その動作を無意識に繰り返している。どうやら少し退屈しているようだった。


「沙希さん、棒術と短剣術と投擲がレベル3になったら、装備を整えて次の場所に行きましょうか」

俺の提案に、沙希は肩をぐるりと回しながら応じた。

「そうだな。さすがにゴブも飽きたしな」


森の手前に着くと、早速三匹のゴブリンが顔を出した。俺はアビリティサイトを起動し、スキルを確認する。棍棒術LV1、短剣術LV1、投擲LV1。俺はギフトテイカーでそれらを奪い、沙希が一瞬で切り伏せる。もう何十回と繰り返した流れだった。


昼休憩。大きな岩に腰掛け、水筒の水を飲んでいると、沙希が不意に口を開いた。


「なあ拓也、お前のそのスキルさ、ギフトテイカーって言ったか。それを使えばさ、クラスの女子を言いなりにしてハーレム作ることもできるんじゃねえか?」


俺はむせそうになった。

「な、何言ってるんですか沙希さん!」

「いや、だってスキル渡す時にキスしなきゃいけねえんだろ? お前が『スキルあげるから俺の女になれ』って言えば、断れない奴もいるんじゃねえか?」


沙希の声はからかうような調子だったが、俺は真面目に答えた。

「知らない人はいらないですよ。俺は沙希さんが一番可愛いし、二人が気が楽でいいです。それに…」


俺は言葉を詰まらせた。それに、沙希さん以外の女の子とキスなんてしたくない。そう続けようとしたが、言い淀んでいると、沙希がニヤリと笑った。

「お前、今エロいこと考えただろ!」


「ち、違いますよ! おっぱいが柔らかいなんて思ってないです!」

言ってから、墓穴を掘ったことに気づいた。やっぱりエロいこと考えてたんじゃねえか、と沙希のパンチが飛んでくる。軽いジャブだが、当たればそれなりに痛い。


「いって!」

「自業自得だ」


沙希は拳を引っ込めると、急にモジモジと指を組み合わせ始めた。視線はあらぬ方向を向いている。

「なあ、拓也」

「はい?」

「その…心の準備が出来るまで、ちょっと待っててくれよな」


顔が真っ赤だ。耳の先まで赤くなっている。心の準備? 何のだろう。俺が聞き返そうとすると、沙希は「なんでもねえよ!」と一蹴し、さっさと立ち上がってしまった。


午後の狩りは順調だった。投擲スキルを持ったゴブリンを集中的に狩り、ついに投擲LV2が10/10に達した瞬間、感覚が変わった。腕に何かが流れ込む感覚。

『投擲LV3』。

俺はそこらに落ちている拳大の石を拾い上げ、適当な木に向かって投げてみた。ピュッという鋭い空気の裂ける音。石は一直線に飛び、幹に命中した瞬間、バキバキバキッと派手な音を立てて、直径二十センチはあろうかという木が根元からへし折れた。


「うっそ…」

「マジかよ…」


二人同時に声が漏れた。これが達人の域、レベル3。雑に投げた石ころが、軍隊の弩弓並みの威力を発揮している。


「拓也、お前それ連射できたら無敵じゃね?」

「いや、石のストックが必要ですし、連射はさすがに…でも、すごい。これがレベル3」


俺たちは顔を見合わせ、そして笑った。手応えがあった。

夕方までに、棒術LV2も10/10に達し、短剣術LV2も10/10になった。

「これで全部レベル3ですね」俺はステータスを見ながら言った。「短剣術、沙希さんに渡しますよ」

「ああ、頼む」


沙希は素直に目を閉じた。長いまつ毛が、夕日に照らされて金色に光っている。俺はゴクリと唾を飲み込み、彼女の唇に自分のそれを重ねた。舌を差し入れると、沙希の舌が応えてくれる。唾液が混ざり合い、スキルが移動する感覚。柔らかくて、温かくて、いつまでもこうしていたい。


「ん…」

沙希が小さく息を漏らした瞬間、スキルが完全に移動した。俺たちはゆっくりと唇を離した。


「…終わったか」

沙希は目を開け、自分の手を見つめた。ステータスを確認しているのだろう。

「剣術LV2、短剣術LV3か…なんか、力が漲ってくるようだ」


彼女は腰の短剣を抜き、軽く素振りをした。その動きは以前とは段違いで、素人の俺が見ても洗練されている。


スキルがLV3になった事でギフトテイカーとアビリティリンクもLV3に上がっていた、これでLV3のスキルを持った敵でも奪えることが出来る


町に戻り、俺たちは武器屋へ直行した。店の主人は無愛想なオヤジだったが、金を払えばきちんとした品を出してくる。

「沙希さん、俺は棍棒を買います」

「私は短剣をもう一本。二刀流にする」


沙希は良質な短剣を1本選び、腰の両側に差した。俺は頑丈そうな鉄芯入りの棍棒を手に取る。ずっしりとした重み。異空間LV2の収納力なら、武器の予備も十分に入れられる。

棍棒をくるくると回してみると、まるで昔から使い続けているかのように、手に馴染む。

「沙希さん、すごいですよ。体が使い方を知ってるみたいに、自在に棒が動かせます」

「こっちもだ。短剣が手の延長みたいな感覚だ」


ギルドに魔石を換金しに行くと、受付嬢が俺たちのカードを見て目を丸くした。

「お二人とも、規定の魔石納品数に達しています。FランクからEランクに昇格できますが、いかがなさいますか?」

「お願いします!」

俺は即答した。Eランクになれば、掲示板の依頼から選べるようになる。これで稼ぎの幅が広がる。


新しいランクのカードを受け取り、俺たちは掲示板の前に立った。様々な依頼書がピンで留められている。薬草採取、害獣駆除、護衛任務…その中で、一際古ぼけた羊皮紙が目に留まった。


『遺跡のスケルトンが持つ剣の回収。一本につき銀貨20枚。』


沙希が依頼書を指差した。

「これ、ずっと貼ってあるな。誰もやりたがらないのか」

「スケルトンって、アンデッドですよね。普通の武器じゃ倒しにくいのかも」

「でも剣を持ってるってことは、剣術スキルを持ってるかもしれないな」

沙希の目が輝いた。

「いいな、それ。私、短剣だとリーチがなくて怖いんだよ。ちゃんとした剣術スキルが欲しい」

「じゃあ、明日は遺跡でスケルトン狩りですね」


俺たちはそう決めて、宿に戻った。今日の夕食は奮発して、大盛りのシチューと焼きたてのパン。バターの香りが食欲をそそる。


食事を終え、女将さんに声をかけてお湯をもらう。部屋に戻ると、沙希がバケツを指差して言った。

「拓也、背中拭いてやるよ」

「えっ」

俺は固まった。沙希の顔が、湯気のせいだけではない赤みを帯びている。

「そのかわり、私の背中も拭いてくれ」

「は、はい! 喜んで!」

俺は首をブンブンと縦に振り、鼻の穴を大きくふくらませていたと思う。沙希は「あまり見るなよ」と警告してから、意を決したように上のシャツを脱いだ。


現れたのは、想像を遥かに超える光景だった。白い肌。鎖骨のライン。そして、布に包まれた豊かな乳房。俺は呼吸を忘れて見つめてしまった。

「こら、見るなって言ってるだろ!」

沙希が背を向けた。その背中は思ったより細くて、肩甲骨が綺麗なラインを描いている。俺は手ぬぐいを湯に浸し、絞ってから、恐る恐る彼女の背中を拭き始めた。


「ん…」

沙希が小さく身を捩る。あったかい、と呟く声が、いつもの強気な彼女とは別人のようだった。俺は丁寧に、傷つけないように、宝物を扱うように、彼女の背中を拭いた。


「よし、次は拓也の番だ」

俺がシャツを脱ぐと、沙希は無言で俺の背中を拭き始めた。彼女の指先が時折触れて、その度に背筋がゾクゾクした。


「…ありがとう沙希さん」

「これくらい、いいって。レベル3のご褒美だ。終わり!」

沙希はそう言うと、パッと手を離してシャツを着込んだ。

「ちょっとずつな」

彼女はボソッと呟き、俺を部屋から追い出した。廊下に出された俺は、壁にもたれて大きく息を吐いた。心臓がうるさい。沙希さん、いま「ちょっとずつ」って言ったよな。ちょっとずつ何なんだ。これから何が起こるんだ。


俺はニヤつく顔を手で隠しながら、しばらく廊下で待機した。沙希に呼ばれて部屋に戻ると、彼女はもうベッドにもぐりこんでいた。


「さっさと寝ろよ。明日は遺跡だ」

「はい。おやすみなさい、沙希さん」

「…おやすみ、拓也」


ベッドに橫になり、天井を見つめる。今日一日を振り返る。投擲と棒術がレベル3に。沙希さんの背中。遺跡のスケルトン。明日への期待と緊張で、なかなか寝付けなかった。


でも、隣から聞こえる沙希さんの寝息が、不思議と俺を落ち着かせた。この人と一緒なら、どんな敵が来ても大丈夫な気がする。


俺は静かに目を閉じた。今度こそ、越境しないように気をつけながら。


夜が明けたら、新たな冒険が始まる。遺跡のスケルトン。剣術スキル。そして、俺たちの関係もまた、少しずつ変わっていくのだろう。それが怖くもあり、何よりも楽しみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ