第6話
皇帝陛下との通信が終了すると両親が心配そうにこちらを見る。
「陛下にあんなことを言って大丈夫なの?レオン」
「大人の騎士を力でねじ伏せるなど危険ではないか?それにお金はどうする?貧乏領地は間違っていない。わが領地には多くの騎士に報酬を払うほどのお金はないんだぞ?」
「(確かにそうだよ!お金の面はどうするつもり!?)」
しかしさすがにナノさんはそこも計算に入れていたらしい。
『問題ありません。正しい交易を行えばすぐにお金は入ってくるでしょう』
「(正しい交易?)」
/////
--数ヶ月後--
「カレイド国は例年小麦が不足しています。スーリャー国は豊穣の国であるため小麦も余っているでしょう」
「スーリャー国に小麦を買い付けに行きます!」
「ベニセンブルグ公国は──戦士国ドンドウォーは──」
俺は次々と大人に指示を出す。その光景を呆然と眺めるお父さんとお母さん。
「「……」」
「(数ヶ月も経ってるのにそろそろ慣れてほしいんだけども?)」
俺がいま行っていることはお父さんに協力してもらい幾つもの銀河を支配する我が国の情報網を使用して"どこの国でなにが不足していて・どこの国でなにが余っているのか"という情報を現在から何十年何百年という昔まで遡って収集。
それを利用して余っている国で安く買い付け不足している国に高く売るという交易を行っている。もちろんこれらは俺がナノさんの操り人形的になっているだけで俺にはなにがどうとかなにも理解できてない。
「……宇宙規模での情報の収集……さらに膨大な情報を解析・理解……うちの子は天才になった……」
「いいえ違うわあなた……うちの子は天才なんかじゃない……超天才なのよ……」
「(両親の親バカに拍車がかかった。まあそっちの立場だったら同じようになってただろうから気持ちはわかる)」
さらにナノさんは交易のみで儲けようと思っておらず、交易で儲かったお金で隣の空気もなにもない無人惑星を購入。当初はこんな惑星を購入してどうするつもりかと疑問視されたがその地中深くにて希少鉱石が大量に発見されたことでさらに儲けることができるようになった。
「(マジでナノさんすげえ……俺に取り付いてくれてありがとう……)」
【これからもマスターが望むようにサポートいたします】
そんなこんなでわずか数か月で貧乏領地から脱出しつつある我がヴィンセント辺境伯領にとうとう騎士の大群がやってきた。
/////
ざわざわ……がやがや……
「……めっちゃ来た……」
車の中から外を見る。そこには廃墟となった街の近くに見渡す限りの騎士たちが集まっていた。
「約3万だそうですよ坊ちゃん」
「しかも……機嫌が悪そうな人たちが多いんだけど……」
『6名ほどは募集をかけ自ら来た者たちもいます。その中には騎士ではない者もいますが』
「それじゃあ行きましょうか。今にも暴れだしそうですし」
「……帰りたいかも……」
そんな言葉を無視してザリルは約3万人の騎士を見渡す高台に俺を誘導した。すると視線が俺に集まる。
「それでは俺は領主様たちと一緒に見守ってますんで。頑張ってください」
そう言ってザリルは少し離れたビルへと入っていく。その屋上では心配そうに俺を見る両親がいた。そして視線を前に向けると不満そうにこちらを睨む騎士たち。
『言葉はお任せください』
「(ナノさんに任せるのは怖いけど……それが最適なんだろうな~……)」
というわけで俺はマイクを手に騎士たちに向かって言葉を投げかける。
「不正を働き皇帝陛下を裏切った高位貴族だった者たちの下にいた悪逆非道な堕ちた騎士ども!貴様らの性根は俺が正してやろう!もし不満があるのなら俺が聞いてやろう!俺に勝つことができれば陛下に直訴し希望の道を開いてやろう!」
随分と上から目線でボロクソに言った。そんなことをすればこうなるのは当然で・・・
「ふざけんな!」
「ガキが!何様のつもりだ!」
「俺たちはなにもしてねえ!」
「ぶっ殺してやろうか!」
罵詈雑言の嵐が吹き荒れた。そんな中で俺に近づいてくる大男。
「……さっきの言葉は噓じゃねえだろうな。俺はガキだからって容赦はしねえぞ……」
「安心しろ。手加減してやるから死ぬことはない」
ピキッ!
「それは俺のセリフなんだよ!!」
俺を殴ろうとする大男。しかしその一撃を回避して懐に侵入。そのまま顎を全力でぶん殴った。
ガン!
「ゴァッ……!?」
ばたん
そのまま大男は立ち上がることはできなくなった。もちろん死んでないけど。
「どうした?全員でもいいんだぞ?」
というわけで始まった約3万人の騎士vs12歳の子供の俺の乱戦。
/////
「ああ……とうとう始まってしまった……息子は……レオンは大丈夫なのか……」
「ねえあなた!今からでもレオンを助けに行ったほうがいいんじゃないかしら!」
計画通りに始まった乱戦。それを心配そうに見つめるラージ・ヴィンセントとキャリー・ヴィンセントの夫婦。しかしそんな2人を安心させようとザリルが口を開く。
「大丈夫ですよ領主様。奥方様。坊ちゃんに限っては心配はないでしょう」
「どうしてそう安心できる?相手は大人の騎士があれだけいるんだぞ?子供でなくとも普通は死んでしまう!」
「普通ならそうでしょうね。俺でもあれだけ騎士に囲まれればちょっと危ないかもしれません」
「元近衛騎士長のザリルでもダメならレオンは無理でしょう!今すぐに息子を!」
「大丈夫です。お二人の前でこんな言葉は相応しくないかもしれませんが……坊ちゃんの戦闘センスは化け物ですよ……」
ザリルは少しも心配せずにレオンが1人で約3万人の騎士と戦うようすを見学している。
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