第20話
「船長、またしても失敗したそうです」
「だろうな……ハナから期待してねえ……」
ボル・ノマーノは部下からの三度目の襲撃失敗に暴れることなく冷静に思案する。
「念のため簡潔に報告させていただきます。今回の10万規模での襲撃は周囲の銀河帝国アークリアルの貴族からの援軍により数の差が消失。そのため精強なヴィンセント辺境伯軍の手によって撤退を余儀なくされました」
「……これ以上は数で攻めても意味ねえな……」
「はい。これ以上は無駄に我々の戦力を減らすことになるかもしれません。援軍の速さからおそらく事前に話が行なわれていたのでしょう。これ以上は本星からの援軍も予想されそれは銀河帝国アークリアル全体との戦争となる恐れがございます……いかがなさいますか?」
「……」
思考するボル・ノマーノ。しばらく悩んだ後に不敵な笑みを浮かべる。
「俺は……舐められるのが大っ嫌いでな……このままじゃ終わらせねえ……」
レオンたちはまだ知らない──これから"海賊災害"ボル・ノマーノの真の恐ろしさを味わうことになる──
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「クローファー子爵・メッセンジャー伯爵。先の救援に感謝します」
お父さんが画面向こうのハビル・クローファー子爵(46歳)とマルド・メッセンジャー伯爵(55歳)に頭を下げる。
『なんのなんの。同じ国の貴族同士です。助け合うのは当たり前じゃないですか』
『ハッハッハ!その通りだ!特に我々はなにかとヴィンセント辺境伯には助けられてきているのだ!その恩を返すのは当然だろう!』
この二家は我々と交易を行っているので"助けられている"とはそういうことだろう。
「(まさかこういうところで交易での効果が発揮するとは)」
『おそらく交易での得がなくとも救援要請に対して承諾が得られた可能性はありますが気持ちの入り方が違うでしょう。援軍として贈る軍の人数やその戦闘のやる気なども変わってきたかもしれません』
「(別に交易だからうちが損をしてるわけでもないんだけど、それを恩に感じてくれるのは……言い方が悪いかもしれないけどラッキー♪って感じだな)」
交易はただその場所で不足しているものを売り余っている物を買うだけじゃないのかもしれない。
『しかし面倒な相手に睨まれましたな。これで執着が消えてくれればいいんですがね?』
「そう願うばかりです。再三にわたる宇宙海賊からの襲撃で領民からも心配する声が上がってきていますし、なにより襲撃に対しての迎撃に勝利はできても無傷の勝利とはいきませんから」
今回の戦争でも勝利はしたものの何十人もの騎士たちが死んでいった。俺がいくらサポートに回っても規模が大きくなるほどに1人でカバーできる範囲外が広くなってくる。それによって救えない命もある。
『しかし!いくら戦力が多いという海賊災害であろうともこれだけの規模の戦争を頻繁には不可能だろう!しばらくはなにもないかもしれん!』
『もし次もなにかあればすぐに駆け付けます』
『そうとも!我がメッセンジャー軍の強さを思い知らせてやろう!』
「心強い言葉をありがとうございます」
そうして二家との通信は終了。そこから厳しい表情となったお父さんが俺に向き直る。
「レオンはこれで奴らはあきらめると思うか?」
「う~ん……(ナノさんどう思う?)」
『プライドが高いと噂の男がこの程度で終わることはないかと。そもそも三大宇宙海賊とは大国すらできれば戦闘を回避したい宇宙海賊たちに向けられた言葉。たかが三貴族が集まり追い払われる程度の戦力ではありません。特にいまだ戦っているのは傘下ばかり。ボル・ノマーノが出てきていません』
「(なるほど、確かに)」
というわけでそのままナノさんの言葉を自分が考えたかのように伝える。
「……宇宙海賊は舐められたら終わりと聞く……その中でもプライドが高い男が負けっぱなしで考えずらいな……」
どうやらお父さんは俺の言葉に納得したらしい。
「(じゃあ今度はボル・ノマーノが来るって感じ?100万規模の襲撃が始まるの?)」
『最終的には全戦力での襲撃となる可能性は高いですがその前になにか仕掛けてきてもおかしくありません。ボル・ノマーノという男についてプライドの高さと同じほどよく出てくるのはその残虐性です』
これから俺はナノさんの言った"ボル・ノマーノの残虐性"を痛感することになる。それによって俺はボル・ノマーノを真に敵と認識する。
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