第15話
カーネル・イェックス(43歳)
いま現在俺はカーネルさんの後に続いて歩いている。
「(まさにどうしてこうなった状態だよね)」
ちなみにリーシャ様や皇后様にアーヤさんも共に。なぜ3人も来るのかと聞いてみると、
「お父様から皇宮の案内を頼まれているので離れるわけにはいきませんし」
「面白そうなのだもの」
「私はロティー様の護衛としてお側を離れるわけにはいかないだけだ」
とのことらしい。結構ロティー様って愉快な方っぽい。
「(まあでも正直気にはなる。一応とはいえザリルに勝った俺がザリルの後任として近衛騎士長に就任した人と戦いどうなるのか)」
突然のことで戸惑いはありつつも俺はなんだかんだ楽しみな感情が強い。そうして歩くこと数分。そこは騎士たちが訓練する場所のようでそこでは今もたくさんの騎士たちが訓練している。
「なんだなんだ?」
「どうして近衛騎士長のカーネルさんがこんなところに?」
「それもそうだけどよ?もっとわからないのは皇后さまにリーシャ様までいることだろ!」
「マジでリーシャかわいいわ~。握手だけでもしてくれないかな~」
「さすがに不敬すぎるだろ」
「アーヤさんはわかるけどあの子供は誰だ?」
「何が始まるんだ?」
慌ただしくなる訓練場。その反応だけでも普段はカーネルさん事態がこの訓練場に来ることがないというのがわかる。
「(カーネルさんだけでも珍しいのにそこに皇后さまに皇女様がいればそうなるよな~)」
なにやら指導していた騎士と話すカーネルさん。その騎士の人が一瞬こっちを見て驚きの表情をした。
「(つまりあれか……ここでやるってことね。みんなに見られながら……)」
どうやら俺の予想は当たったらしい。
「お前ら!訓練は中断だ!いまより近衛騎士長カーネルがあそこの子供と模擬戦を行う!場所を開けろ!」
そう言う声が飛ぶとざわつきだす周囲の騎士たち。視線も一斉にこちらに向く。しかしなにか質問をする空気でもないと感じ取ったのか言われたとおりに散らばり訓練場の中心が開いた。
「……あの人が褒めたたえるその実力……俺に見せてみろ……」
そう言いながらすでに剣を構えてこちらを見るカーネルさん。
「(別に実力を隠してたりはしないからいいんだけど……こんなに大勢の知らない人の前で戦うのは初めてかも……)」
俺も腰に差す剣を抜いて中央へ。
「……」
「……」
両者のにらみ合い。その雰囲気に飲まれたのか周囲のざわついていた騎士たちも押し黙る。
「(あくまで見極めるつもりって感じか。だったらこっちから動かないとな)」
ドン!
先に動いたのは俺。正面へと一直線に向かい剣を横降り。
「(見極められるのがそっちだけだと思うなよ!)」
横降りと思わせて軌道を急激に変化。斜め上に向かって切りつける。
「……」
キン
しかしその動きは読まれていたのか適切に対処された。しかし一度防がれた程度で流れは止めない。
「(この身体の異常性を見せてやるよ!)」
どうやら現最強と戦えることに興奮しているらしい。俺は笑みを浮かべながらカーネルさんに次々と剣をふるう。
「……」
しかしそれをカーネルさんは余裕そうに受け止め続けるだけ。
/////
「すごい……あれがレオン様……」
リーシャがレオンとカーネルの戦闘を見て驚愕している。その横には皇后のロティーもその護衛で近衛騎士のアーネもいた。
「とても子供とは思えないわね~。映像で見ていたけど生で見たほうが驚きね……アーヤはどう思うのかしら?」
「……あれは……なんですか?人とは思えません……」
とても驚愕しているアーヤ。レオンとカーネルの戦闘は最初こそレオンが一方的に攻めてばかりだったが今ではカーネルも攻めながらの攻防が行われている。
「彼は一体……何者なのですか?」
「あら?あの子のことを知っていたから睨んでいたのでしょう?」
「あたしはザリルさんが近衛騎士長を退任しヴィンセント辺境伯家に仕えるようになったことぐらいです。当時に少し調べたためあの子の顔と名前は知っていましたが……こんなのは……」
どうやらレオンのことについてはほとんど知らなかったらしい。しかし近衛騎士であるアーヤをして人とは思えないと言わしめるほどの実力をレオンは所持しているらしい。
「賢いと聞いていたけど言葉の裏を読むとかはまだ苦手そうね。まあ子供なのだからそれが当然なのだけど……このまま野心なく育ってほしいものだわ……」
そう言って純粋にレオンとカーネルの戦闘を見て怪我の心配をしている娘リーシャを見る皇后ロティー。
/////
キンキン!キンキン!
「(いや速っや!力強っ!ザリル以上の身体能力だろこれ!にもかかわらず技術も優れてるってどういうこと!)」
俺はカーネルさんの高すぎる身体能力に受け流すこと自体が難しいと判断して回避に切り替えた。さらに攻撃は一瞬のスキをつくカウンターのみした。そうしなければ勝機はないから。
「(模擬戦で本気じゃない戦いでこれだけの強さ!やっぱり近衛騎士長はデタラメだ!面白い!)」
さらにギアを上げようとしたときに突如としてカーネルさんが止まった。
ピタッ
「……もういいだろう……これ以上はお互いが怪我をしてしまう……」
その言葉を最後にカーネルさんはどこかへと去ってしまった。
「へ?」
これからが一層楽しいところと思っていただけに俺は肩透かしを食らった気分となった。
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