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異世界転移なんてありふれている  作者: たかしゅー
ラントヴァッサ王国
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追憶の迷宮16


「………」


「うん、とりあえず『うーわ何こいつ』みたいな目を止めようか真幸くん!」


「何て言うかスミマセン?」


「全然隠せてないよ『とりあえず謝っとけば』っていう気持ち!」


 いきなりキスをされ、さらに悪霊だのフィーネの姉だのと言われれば、こういう反応になっても仕方がないと思う。

 というか頭がぼーっとして考えがうまく纏まらず、ついフィーネの唇に視線がいく。


「もしかして…」


「うわっ」


 再びフィーネが顔を近付けてきたので、変な声を上げながら座ったまま後ずさる。


「もしかして真幸くん、キスするの初めてだったのかなっ!?」


 その通りなのだが恥ずかしくて無言で後ずさる。

 それをフィーネが四つん這いになってそっと追いかけてくるのだが、四つん這いになったせいでワンピースの隙間から見えてはいけないものが見えてしまっていて、俺はさらに後ずさる。


「その反応は図星でしょ! 大丈夫だよ、フィーネたんも初めてだから………初めて同士だねっ!!」


 背中がコツンと壁に当たる。

 大丈夫って何だ、何も大丈夫じゃない。そもそもこの人は何を考えてるんだ!? 本当にカーシャさんがフィーネの姉なら超溺愛してるはずである。呼び方が「フィーネたん」ってシスコンのそれである。それならば普通は「妹に近寄る害虫め!」ってなるはずである。

 だが実際は無防備に、四つん這いでにじり寄ってくる。

 こんなことになるとは想像できず、降りた場所が悪い。後ろは壁でもう逃げられない。


「そんなに逃げなくてもいいじゃない」


 そう言いながらフィーネの顔が再び近づいてきた。

 そして―――ガツン!

 反射的に頭を後ろに倒してしまい、頭が壁を叩きつける音を聞いて俺は意識を手放した。



---



「あちゃー。真幸くん、思いっきり頭をぶつけちゃったよ」


 頭をぶつけて気を失ってしまった真幸をカーシャはそっと地面に寝かせる。

 そして真幸の額に手を当てて頷くと立ち上がり、何も言わず直立不動を貫いていたアルデバランに近づく。


「久しぶりじゃな、マユキ」


 カーシャが近づいてくるとアルデバランは跪き、伝説の勇者の名を呼ぶ。


「今はもうカーシャよアラン。カーシャ・スカーレット。可愛い可愛いフィーネたんのお姉ちゃんよっ!」


「そうじゃったの」


「まあ良いわ、それより本題よ本題。真幸くんには『創生計画』のパーツになれそうな素質があったの」


 瞬間、寝ている真幸に迫り、心臓を目掛けてアルデバランが槍を突き出す。

 それを読んでいたカーシャは突き出された槍を手で掴み、真幸の心臓が貫かれる前に止める。


「なぜ止めるんじゃ? 世界が滅べばフィーネも死ぬんじゃぞ?」


「真幸くんが死んじゃったらフィーネたん悲しみそうだから止めたのよ。最も優先すべきはフィーネたんの笑顔よ!! だからアラン、もしもの時は2人を私の世界へ転移させてね?」


「はあ、無茶を言いよる。少しは年寄りを労らんか」


 そう言いつつも槍を引いたことで、了解を得たと認識したカーシャも槍から手を離す。

 カーシャが今まさに殺されかけていた真幸をチラっと見る。

 自分が魔法で眠らせたとはいえ、ここまでの殺気を浴びながらのんきに寝ていられるのはある意味才能ではないかと思ったカーシャだが、すぐに意識を切り替える。


「真幸くんが寝てる間にやらなきゃいけないことがいっぱいだけど、まずはプレゼント作りかなっ」


 カーシャが手を前に突き出すと空間が避けて別の空間と繋がる。そしてそこから執事服を着た骸骨が1つの箱を持って出てきた。

 その箱をカーシャが受け取り礼を言うと、執事服を着た骸骨は恭しく礼をして元の場所へ帰っていく。


「あ、アランもたまにはあっちに帰る?」


「止めとこうかのお。帰ったらこちらへ戻ってきたくなくなるかもしれんぞ?」


「戻りたくないって言っても叩き出すんだけどね」


 そう言うと空間の裂け目は少しずつ閉じていった。

 閉じるのを見届けるとカーシャが骸骨に持ってこさせた箱を開けて、真幸へ渡すプレゼントを作り始める。


「カーシャよ、お主まさか神器を―――」


「あーはいはい、アランはあっち行ってて。そうだ、来るとしたら『天門』が先だと思うけど、フィーネたんや真幸くんを狙ってるのか、別の狙いがあるのか、ちゃんと見極めてねー」


 アランはもっと詳しく事情を聞きたかったようだが、カーシャに言われた「あっち行ってて」という言葉に逆らえず、部屋の中央付近で再び直立不動の姿勢で待機する。


「さて、まず何から作ろっかな」


 パチンッ、という音が響く。カーシャが指を鳴らした音だ。


「まずはフィーネたんと真幸くんの距離が近づくような道具にしよう!」


 二度目のパチンッ、という音が響く。最初はただ思い付いたと鳴らしただけであったが、二度目は魔術だ。地面を変形させてテーブルとイスを作る。

 魔術師ならば得手不得手はあろうが誰でもできる。ただしここがダンジョンでなければ、だ。普通の魔術師ならばどれだけ訓練を積もうが、どれだけ時間を掛けようがダンジョンでこの魔術は成せない。

 普通は出来ないことをいとも簡単に行う。が、もちろんそれだけではない。カーシャが今から作ろうとしている物は、人の手では作れないとされている神器。

 それを持っているだけで国家や『天門』に狙われるリスクが増すが、有っても無くても結局それらから目を付けられそうな真幸ならば一緒だ。ならば有った方がいいだろうとカーシャは判断した。

 他にも『創生計画』に巻き込まれそうだとか、幸薄そうだとか、神器を作り与えるに相応しい理由はいろいろ考えた。しかし、カーシャがどれだけ理由をこじつけようが本当の理由は別にある。


「フィーネたんが死んで、初めて心を開きそうな男の子」


 そっと呟かれた本当の理由。

 その呟きは誰にも聞かれることはなかった。


読んでくださった方に感謝。

ありがとうございます!


初めての別視点。

ユキト視点を書こうかどうか迷っている間にやっちゃいました。

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