追憶の迷宮12
城に入った時には無かった魔法陣が広間の中央に出現していた。そしてその魔法陣の中心には地下へと続く階段があった。
「この先が本当の追憶の迷宮よ、お兄さん」
思わず立ち止まり、魔法陣と階段を眺めているとフィーネに声をかけられた。
「本当のっていうことは、ルーデンドルフの街にあるダンジョンは追憶の迷宮じゃないのか?」
「追憶の迷宮と言うよりかはその入り口ね。資格のある人をこちらに送り込む。それがルーデンドルフの街にある追憶の迷宮と言われているダンジョンの役割だ、って聞いたわ」
「誰に聞いたんだ?」
「ヒ・ミ・ツ―――さ、行きましょう? アランおじいさんが早く行きたくて仕方がないってうずうずしているわ」
「お、おう」
フィーネのことやアランさんのこと、それぞれ何も知らないなと思いつつも二人に続いて階段を降りていく。
入り口からは分からなかったが螺旋階段になっており、少し降りると中央が吹き抜けになっていた。手すりなどは無く、そして何よりも下が見えない。
「えいっ」
落ちないように気を付けようと思った瞬間だった。
フィーネの「えいっ」という声と共に訪れた浮遊感。
「えっ―――うわああああああああああ!?」
押し出されたと気付いた時には既に叫ぶことしかできず、あっという間に地面が見えてきた。
そして地面に叩きつけられる瞬間、目を強く瞑った。
誰だよ高所から飛び降り自殺する人って飛び降りた恐怖で気絶してるから楽にポックリ逝けるんだぜって言ってたやつ! 全然気絶する気配無かったよ! そもそもこういう時に、咄嗟に魔術が使えれば死なずにすんだのに! など、色々思っているとフィーネの声が聞こえてきた。
「お兄さんいつまで叫んでいるのかしら?」
「ああああああああああ―――あ?」
恐る恐る目を開けると目の前が地面だった。
いつの間にかフィーネがよく使う黒い霧が体に巻き付いており、俺は地面から10センチ程の所で止まっていた。
「ただ叫ぶだけとは情けないのお」
「お兄さんは魔術に慣れていないのよ、そう言っては可哀想だわ」
「…」
突き落とされたにも関わらず、この言い方は酷いのではないだろうか。そう思いながらフィーネをじっと見つめる。
「黒霧」
「あでっ」
視線に気付いたフィーネは俺の体に巻き付いていた黒い霧を消す。しかし俺はいきなり放り出されるとは思っていなかったため、地面に叩きつけられた。
おそらく、フィーネは俺の視線を「解放してくれ」と捉えたのかもしれないが、それでも一言くらいあっても良かったのではないだろうか。
とりあえず立ち上がり、服に付いたホコリを払う。
服装を整えていると相変わらず表情は分からないが、嬉々とした様子でアランさんが近づいてきた。
「マサキよこの際じゃ、咄嗟に魔術を使えるようにしといた方がいいじゃろう」
「は? え?」
ちょっと待てこのジジイ、今なんて言った!?
「ほれ」
「ちょ!?」
あ、俺これ知ってる。エレナさんが転移をする時にできる魔法陣。と思った時には既に天井に立っていた―――一瞬だけ。
そして再び訪れる浮遊感。
「ジジイ殺してやるぅうううううううううう!!!」
そう叫びながらも今度は何とか魔術を使おうとするが、魔力のコントロールやイメージが上手くいかず、すぐに地面が近づいてきた。
「やっぱ無理だああああああああああ!! ヘルプっ」
「ほれ、もういっちょじゃ」
地面に叩きつけられそうになった瞬間、再び天井まで転移させられた。
「クソがああああああああああ!!!」
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「ほれ」
そう言って天井へ飛ばされた所でようやく魔術を発動させる。
「ウィンドウィング!!」
そう唱えると半透明の機械的な翼が俺の背中から生え、その場で留まる。ちなみにこの魔術は翼で飛んでいるのではなく、翼を起点に風を噴出して飛んでいる。
最初に天井に飛ばされてからさらに3回飛ばされたところで何とかウィンドウィングを展開できるようになった。
右へ行って、左へ行って、下へ行って、上へ行く。初めて使う魔術の感触を確かめて俺は一気に下へと加速する。
自由落下でも数十秒で地面なのだ、加速したせいですぐに地面が見えてきた。正しくは憎き怨敵クソジジイが見えてきた。
「クソジジイ死ねええええええええええ!! アイスバースト!!」
天井から加速して落ちてきた運動エネルギーを持った氷柱が凄いスピードでジジイに向かっていった。想像以上の早さで、撃った自分が氷柱見失い、気づいたらジジイの槍でいなされていた。
あまりにも威力が強すぎたのだろう氷柱は粉々で、バーストも出来そうになかった。
「仕留め損ねたか…」
「良い一撃だったぞ!」
そして受けた本人は機嫌良さそうにしているのがまたムカつく。
いつかこのジジイ成仏させてやる…。
そう心に誓って地面に降り立った。
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