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異世界転移なんてありふれている  作者: たかしゅー
ラントヴァッサ王国
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追憶の迷宮9

 ゆっくりと振り向くと階段の上に女の子が立っていた。


「女の子に声をかけられて叫ぶなんてお兄さん、とても失礼よ?」


「あ…はい、スミマセン」


 あの状況で喋りかけられれば誰でも悲鳴を上げるだろう。むしろ漏らしていない自分を誉めたい。そう思いながらも謝ると、女の子はゆっくりと階段を下りて近づいて来た。

 どうすればいいのか分からずその場で立ち竦んでいると、その女の子は俺の目の前まで来てようやく立ち止まった。

 見たときから小柄な印象を受けたがその通り、俺の肩に届かないくらいの身長だった。長く綺麗な黒髪や、身に付けている物が黒いワンピースのみで靴すら履いていないなど、色々と目につく部分が多い。しかし、何よりもこの女の子の青い目に何故か視線が惹き付けられた。


「さてお兄さん、いきなりで悪いのだけど私と一緒に来てちょうだい」


 俺だけではなく、女の子もまた俺のことをじっと見ていたが先に口を開いたのは女の子の方だった。


「ハイ?」


「嫌なら別にいいけれど」


 そう言いながら女の子が階段とは違う方向にあった通路の方を見る。それに釣られて俺も通路の方を見るが何もない。


「あっちに何か?」


「ええ、もうすぐ来るわ」


 女の子が通路の方へ歩き出したので恐る恐るついて行く。そしてある程度通路に近づいて気づいた。布か何か、軽いものを引きずる音が聞こえてきた。


「何かこっちに来てる?」


「ゴーストよ。この城は生者を否定する死者の城」


「え、は?」


 急用をお思い出したので帰っても良いですかと声を出そうとした瞬間、ゴーストと出会してしまった。

 おそらくこれがゴーストだろう。ゴーストは人の形をした黒い靄がローブを纏った魔物? だった。


「黒霧」


 そう言うと女の子の手にゴーストと同じような黒い靄が集まって剣の形を作っていく。現れたのは黒く巨大なフランベルジュだった。そして自身の身長と同じくらいのそれを片手で軽々と横薙ぎに振るう。


「…」


 一撃で何かしようとこちらへ手を伸ばしたゴーストを両断し、切断面から黒い靄がゴーストを飲み込んでいく。黒い靄が別の黒い靄に補食されていく様子に恐怖を感じて言葉が出ない。

 黒い靄が全てを飲み込み霧散するまでそう長い時間はかからなかったが、数分くらいそれを見ていたように感じた。


「で、お兄さんは私と一緒に来てくれるのかしら? 嫌ならここに放置していくのだけれど」


 女の子について行くかどうか。そんなの決まっている。


「ア、ハイ。オネガイシマス」


「それは一緒に来てくれる、ということでいいの?」


「ハイ」


 本当は女の子について行くことも、ここに取り残されることも両方避けたい。第三の選択肢にお家へ帰るという選択肢が欲しかった。が、その選択肢が無いのならばついて行くしかないだろう。


「じゃあ行くわよ」


 フランベルジュを手放して階段の方へと女の子が歩いて行く。女の子の手から離れたそれが床に叩き付けられることなく黒い靄となって消えていくところを見届け、ようやく女の子を追いかける。


「あのぉ、一緒に来てって言われてハイって言いましたけれども、どちらに向かわれるのでしょうか?」


 どう接していいのか分からず変な言葉遣いになってしまったが、聞きたいことは質問できたので答えを待つ。


「死者の国? 地獄?」


「は?」


 可愛らしく首を傾けながら答えを返す女の子。可愛い女の子の可愛らしい仕草というものは良いものだ。こういう状況で冗談に聞こえない答えではなければ。

 素で「は?」と言ってしまったのは仕方が無いことだと思う。


「冗談よ」


 真顔でそんなことを言われても信じられない。むしろこれから行く先が死者の国やら地獄にしか思えなくなってしまった。ここを「死者の城」とも言ってた…言ってた…。

 あれ、もしかして俺、選択肢間違えた?


「急用を思い出したのでやっぱり帰らせてもらいたいんですが」


「あら、そう。いいわよ。つまり出口まで一緒っていうことね」


 えぇ…地獄イコール出口ですかお嬢さん…。それって人生の出口なんじゃ…。


「終わった。俺の人生終わった…」


「何を言っているのかしら。早く行くわよ、お兄さん」


 広間にあった階段とは別の階段をまた上って行く。どんどん上へ向かっているが本当にどこへ向かっているのだろうか。

 そう思いながらふと前を見てしまった。


「ちょ、下着は!?」


 先程から無防備に階段を上がって行くものだから下着が見えそうだと思い、出来るだけ見ないようにしていた。が、精神的ダメージにより気が緩んでしまった一瞬の出来事だった。

 まさかの穿いていない!?

 これ別の意味で俺の人生終わった!?


「あっ…」


「あっ…ってナンデスカ!?」


「いいえ、穿いているわ」


 何を思ったか恥ずかしげも無くワンピースの裾をたくし上げようとする。俺はそれを何とか阻止しようとしたのだろう、気付いたら飛び付いていた。

 結果、女の子を押し倒して覆い被さる俺。前後の記憶が少し曖昧だが、頭の下に俺の腕が挟まっているので頭を打ったとかは無いと思うのだが…。


「だ、大丈夫か?」


「階段でいきなり抱き付いてくるなんて危ないわ」


 無表情でそんなことを言われてしまった。


「確かにその通りだけど…ってゴメンっ!」


 色々と言いたいことはあるが、覆い被さっている現状を思い出し慌てて離れる。


「変なお兄さん」


 何事もなかったかのように起き上がり、そう言った女の子はそのまま階段を再び上り始めた。

読んでくださった方に感謝。

ありがとうございます!

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